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第13話肉を卸す
しおりを挟む「2日で11匹と一戦闘か……明日にでも手入れしないといけないかな……さて冒険ギルドへの嫌がらせに、昨日の肉やにでも紺鎧熊と大瘤猪を持ち込みますか……断られたら仕方ないから持っていくか……」
俺は紺鎧熊を解体すると、大瘤猪を半冷凍状態にまで解凍し、紺鎧熊も半冷凍し、身体強化と風魔術を用いて何とか台車を押し町へ戻った。
第9話ギルドへの帰還とは違い帰って来たのは、夕暮れ時ではなく、昼の鐘(午後12時)が鳴った少し後なのでそこまで混雑する事無く、疎らな列に並ぶだけだ。
「名前とあれば、身分証を見せてくれ!」
髭面の兵士は少し傲慢に聞こえる声音でそう言った。
まぁ魔力は扱えないものの戦闘技能だけはある奴が多いと聞いている。
その分高給取りだろうから、やや傲慢な口調にも納得は出来る。
前世の軍人や警察官と考えれば苛立ちも幾分か収まる。それにコイツらは学もないしな……
俺は冒険者ギルドで受け取った身分証明書を衛兵に見せる。
「見分させてもらうぞ……」
衛兵の一人がそう言って台車の上に乗る。
「最下級の冒険者が大瘤猪と、紺鎧熊を倒してここに持ってこれる訳ねぇだろ! 一体何キロあると思ってんだ!」
何キロってそんなの知るかよ……重い。
今の俺にはそれ以上でもそれ以下でもない。
「はぁ……」
正直言って面倒くさい。こういう自分の知っている常識だけが正しい。それ以外は認めないと言う考え方を理解出来ない訳ではないが、少し料簡が狭いと感じてしまう。
「じゃぁコレで……」
俺は前回求められた入市税を払い都市に入ろうとする。
「待て!」
衛兵は腰に下げた剣に手を置いて俺を威圧する。この世界の剣士は基本的に濶剣を用いた剣術には構造上。抜刀術は存在しない。俺が刀の柄に手を掛けて抜いたとしても殆ど同速。急ぐ必要はない。
「何ですか?」
「貴様のような妖しい奴を通すわけにはいかない!」
使命感は持ってるのか……ダメな衛兵かと思ったけど優秀な奴じゃないか……
「俺は妖しい奴なんかじゃない。俺がコイツらを倒せるのは……」
俺が動いた瞬間、柄に掛けた手が強張るのが見えるが気にしない。
そう言って首にかけているネックレスを見せる。
「それは!」
「そう! 貴族の家紋。それもクローリー家の紋章だ!
俺はクローリー家に連なる者。これ以上の身分の証明があるか?」
「いえ、何も!」
某特撮番組で生まれた 空耳言語の様な言葉が聞こえたがどうでもいい。
俺はえっこらえっこら台車を引き、昨晩立ち寄った肉屋に着いた。
確りとした造りの木戸を開け声を出す。
「店主はいるか?」
俺が声を掛けた女性給仕はあたふたしている。
「えぇいますよ」
すると昨日の女性給仕が騒ぎを聞きつけてやって来たようだ。
暫くすると店長が汗を浮かべたまま走って来る。
「昨日ぶりだな……」
「まさかこんなに早くいらっしゃるモノだとは思いませんで……」
「攻めている訳ではない。約束の品だ」
そう言ってクローリー家の庇護を示す銀細工を持ってきた。銀と言う物は酸素と反応し直ぐにくすんでしまう。だがそれは磨く事を怠るからだ。
クローリー家の庇護を示す銀細工の管理をしていないという事は、クローリー家を軽んじている事になる。
そう言う事で当家では銀細工を渡す事になっている。
「ありがとうございます」
「そしてこれは俺からだ」
そう言って飾り気のない短刀を渡す。
「この短刀の切れ味は凄まじく、対して力を籠めずとも意図もたやすく骨を断つ事が出来る。銘を今剣と言う良ければ受け取ってくれ」
今剣とは、源義経が所有したとされる短刀で、この短刀を作刀している時にふと牛若丸、牛短刀と言う単語が脳裏を過ったため牛若丸にちなんだ名前にしたかったのだ。
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
「あぁ存分に解体するのに使ってくれ。それと肉を買い取る気はないか? 大瘤猪と紺鎧熊毛皮以外丸まる一頭だ」
「買います! では冒険ギルドよりも高いこちらで……」
そう言って金の入ったズタ袋を差し出された。
「いいのか? こんなに……」
「いいんです。冒険ギルドに依頼するのと同額ですから……」
なるほど冒険ギルドが相当中抜きしているか、それを買いつけここの店主が買うまでに抜かれているのだろう……
「ではありがたく貰っておく」
こうして俺は肉屋を後にした。
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