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第11話二日目

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 腹いっぱい肉をみ、使用人によって清潔に整えられたお日様の匂いのする、フカフカの寝台ベッドでぐっすりと寝た翌日の事。
 ヨーロッパでは菓子パンヴィエノワズリーとされるクロワッサンと、林檎ジュースにヨーグルトといった軽めの朝食を取って、愛刀を三振り腰と背中に帯刀し屋敷を後にした。
 屋敷とは言ってもそこまで大きなものではなく、最低限の維持が出来る程度の人間しかいない。所詮は別邸の一つでしかないからだ。

 服装は昨日と同じ学園の制服。『目立つから控えた方が良い』と言われたばかりだが、他の服でマシなモノがないのだ。   
 仕方ない。平民が来ているような服数着とローブを古着を売っているような店舗や露店で買うか……人件費・・・が安い世界とは言え、服衣服は高いとWEB小説や歴史モノで読んだことがある。
現代で言えばオーダーメイド品なのだ、安い訳がない。

「さてどうしたものか……」

 分からない事は知っている人に聞くのが一番。
そう考えて、先日お世話になったばかりの茶髪で笑顔の素敵な受付嬢の元を訪れた。
 冒険ギルド内は昨日の喧騒とは打って変わって静かなモノだった。
朝一発目と昼そして夕暮れがピークの時間のようだ。

「おはようございます」 

 受付嬢へ声を掛けが、書類仕事に夢中で此方を見ていない。

「エドワード君おはようございます。昨日の恒常依頼フリークエストは成功されましたか?」

 学生服のまま依頼クエストを受けに来る生徒は珍しいようで、覚えてくれていたようだ。

「えぇ、伺ったお話の通り薬草が群生してくれていたお陰で、結構早く見つける事が出来ました」

「それは良かったです。秋から冬にかけてあの森で、キノコや薬草探しをしようとするのは大変ですから……今日も依頼クエストを受けて行かれますか?」

「その事なんですが……実は先日、依頼クエストを受けていないモンスターをやむを得ず倒してしまいまして……肉を置いて来てしまったんです。それで台車リアカーを借りる事は出来ないかなと思いまして……」

 ほんの少し肉を運ぶだけで台車リアカーを買うなんて馬鹿らしい。レンタルできればその方が良い。
 冒険者組合ギルドと名乗っているのだ。相互扶助のための仕組みとして道具のレンタルをやっていても不思議はない。

「分かりました。では台車リアカーを御貸しします。
それで……レンタル料金なんですが……冒険者として最低ランクのエドワード君だと台車リアカーの保証金が全額なんです」

 そんなアホな事があるか! と口から思わず声が漏れかけたがここは異世界。警察機構が構築されておらず。相互扶助組織で治安を維持しているのだ。何の信頼も得られていない俺がモノを借りられるだけ御の字と言ったところか……

「分かりました。台車リアカーの保証金って幾らですか?」

「6万ゼニーです。問題がなければ全額ご返金しますので!」

 昨日の稼ぎほぼ全額じゃないか……効率的に稼ごうとすればより金がかかる……これが資本主義か。

「……分かりました。台車リアカーを借りるにあたって注意事項はありますか?」

「普通に使っていただく分には特に問題ありません。それと出来れば、返却の際には台車リアカーを掃除して頂けると助かります。受け取りと返却は買い取りカウンターの方へお願いします」

 俺は注意深く契約内容を確認する。

「分かりました。それと……制服は目立つ見たいなのでローブと服を買いたいのですがどこへ行けばいいですか?」

「それでしたら……」

 説明を受けると礼を言い冒険者ギルドの別館にあたる、買い取りカウンターの方へ足を足を進めた。

依頼クエストの受注書と冒険者ギルドの登録証、そして納品物をご提示ください」

 昨日と変わらず無表情な女性職員は、淡々としたした声で定型文を述べる。目線は帳場カウンター内の書類に釘付けだ。

「昨日ぶりです。台車リアカーを借りに来たんですが……」

 声を掛けると顔を上げて嘗め回すように、上から下までじっくり観察される。

「制服のローブを上から着ていらっしゃるんですね。当座はそれで問題はないとは思いますが……できれば着替えて頂いた方が良いかと……
 台車リアカーのレンタルですね。保証金をお預かりしていて料金は6万ゼニーで、損傷がなければ満額お返しいたします。
冒険者ギルドの登録証をご提示ください」

 6万ゼニーと冒険者ギルドの登録証を帳場カウンターの上に置く。
 無表情な女性職員は金と登録証を受け取ると、書類を書きながらこう言った。

「昨日牙だけ納品された大瘤猪ハンプボアーのお肉を回収に行かれるのですか?」

「えぇ」

「そのまま放置されているのなら回収は無理だと思います。
土豚狸鼠ノーモ・カピーヴィヤ鎧狼アーマーウルフなどのモンスターが生息していますから、大瘤猪ハンプボアーが丸まる一頭あれば骨も残っていない可能性が高いです」

「あはは。多分大丈夫です。氷漬けにしてありますから……」

「それなら可能性は高いかも……返却の際にはこちらの証書をお持ちください」

「分かりました」

 俺が帳場カウンターを去ろうとした時だった。

「独り言に近いアドバイスですが……」

 唐突に無表情な女性職員はこう言った。

「ギルドから報酬の高い依頼を回されるにはギルド……職員からの信頼を得ればいいんです。賄賂そでのしたでも挨拶、仕事ぶりでも……私はあなたを応援しています」

「ありがとうございます?」

 俺はなぜ唐突に金の稼ぎ方を教えられたのか。脳内に疑問が浮かぶが正直言ってどうでもいい。
 さて大瘤猪ハンプボアーの肉を回収したら納品して、昨日案内してもらった若い男女の冒険者と飯でも食べよう……




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