上 下
11 / 20

第11話

しおりを挟む
 多くの転生もののように魔力を鍛えたりする方法は判らなかった。
 今日の今日まで自分から能動的に積み重ねて来たと言えるものは何一つない。
 今日までは全て与えられたものを、ただ口を開けて食んでいただけだ。

 結果は判っている。
 
原作で知っているから?

否、俺は地獄で超越者から力を授かったからだ。

恐らく只人を超越した者。
半神とか精霊とか、神の子そう言う超常の存在に近いのだと思う。

それが判明することを初めて怖いと思った。

両親と周囲の大人を一別する。


化け物と言われたらどうしようか?


 そんなことを考えると風が吹いた。
 サラサラと砂のように手から零れ落ちる髪の毛は空を舞って護摩に自らくべられるように
 そして、父親がその髪を火に焚くべた瞬間それは起こった。

 太陽が落ちた。
 より正確に言えば二つ目の太陽が現れた。
 「光あれ」唯一神が仰られたと言う言葉を想起させる光は全てを飲み込まんと輝いた。
 そんな陳腐な独白が脳裏を過った。

 咄嗟に手で頭を覆いながら回転し地に伏せる。
 身を投げるように、五体投地とでも言うのだろうか? 

 数泊遅れて轟音が轟いた。
 つまり大爆発が起きた。

 しかし、一定以上の爆風に伴った熱風は来なかった。
 炎は全て火柱となって上へ上へ吹き抜けまるで天を焦がすようだ。


「安全装置が発動しやがった!」

「第一から第八結界が焼失《・・》残るは四枚のみです」

「対妖魔用と目くらましを除けば残り二枚か……」

「このまま燃え上がれば、結界を焼き切れば羽田空港にも影響が出かねません」

「第特別位階、国際規格SS級相当で呪力出力の超一級……天呪《てんじゅ》なんてこの子には必要ない天然の特異点産まれながらの強者

「時代が動くぞ……」


 誰かがポツリと呟いた。
 
 正直そんな期待をされても困る。
 超越者から力を貰いはしたが俺はただの人間だ。


हुंウン!!」


 突如現れた男の呪力は風船のように爆発的に膨らむ。
 たった一言で見上げれば首が痛くなるような炎は霧散した。
 昔教育テレビで見た爆風消火を呪力で行ったようにも見えた。


「不動明王火界咒《ふどうみょうおうかかいしゅ》もかくやと言う業火だ」


 そこに居たのは疲れたオジサンとしか言いようのない中年だった。


「改めまして安倍一門40代目当主安倍晴明あべのせいめいだ」

「せんねんまえの?」

「世襲と言って昔の人に肖ってる……有名な方が威厳あるでしょ?」

「なるほど……」


 確か御三家の内、土御門と倉橋は安倍《・・》晴明の子孫。
 そして目の前にいる中年は安倍一門・・40代目当主と名乗ったそして世襲名であるとも……

もしかして最強クラスの降魔師だったりする?


「理解が早くて助かるよ」

「さて……吉田の次男。なんで早く止めなかった?」

「……こうなるかもしれないとはうすうす思っていた。今日初めて俺は式神術と呪力操作を教えたのにもかかわらず、勇樹《ユウキ》は数時間で使いこなした」

「……天賦の才だな」

「呪力量だけなら仙人や神使《しんし》を超えている。問答無用で第特別位階、国際規格SS級だ。吉田の家格には見合わない不世出の天才だな」

「産まれて間もない頃に吉田の秘祭を行っておりますので、そのせいかと……」

「確か……百年以上前に廃れた……」

「通称『赤子殺し』……」

「勇樹《ユウキ》はその秘術を受け、生還した」

「吉田テメェ!」


 倉橋父は父さんの襟を摑み絞り上げる。


「……」

「仮にも自分の子だろ! 一般人の感覚に比べれば女子供の命なんて軽いだけどよぉ! 俺は気に食わねぇ」

「――俺もそう思う」

「だったら何故『赤子殺しの秘祭』を行った?」

「兄と妻曰くあのままでは死んでいたらしい」

「今はその説明で納得しておいてやる」

「折角生き延びた逸材だ無駄死にさせるんじゃないぞ?」

「誰にモノを言っている俺の息子だぞ?」

「……そりゃそうだな……キツイ言い方して悪かった。同年代の子供を持った親同士としてこれからは仲良くしような」

「……勝手なことを言う」

「手始めに上層階にあるバーに呑みにいかない?」

「懇親会があるだろう?」

「一杯引掛けるぐらい問題ないだろう?」

「吉田諦めろ。コイツはそう言う奴なんだ」


 勘解由小路《かでのこうじ》父が何か諦めたように呟く。

「娘居るし、俺にも参加権あるな」と安倍晴明までも参加を表明する吞みに、妻達は否定出来ずに送り出すしかなかったようで、帰りの廊下やエレベーターでは不満大会が始まった。


 愚痴もある程度言い終わった頃、倉橋夫人が話題を変える。


「そう言えば、吉田さんのところは『許嫁』は決めているのかしら?」

「いえ、まだ決めていません」

「第特別位階の男児が産まれたとあれば、協会の御老人達は浮足立つことでしょう。特に公家……陰陽道系の降魔師こうましは霊器《れいき》や神器《じんぎ》など、ただ用いるだけで効力の増す道具を武家の下法と毛嫌いしていますし……」

「……」

「産まれた子は弱くても第三~四位階相当。全世界的に霊力が低下傾向にある現代では、正に種馬として世界に吉田の血が世界に羽ばたくことになります。まるでサンデー〇イレンスやディープ〇ンパクトのように……」

「つまり、そうなりたくなければ自分達に組みしろと?」

「旦那達もそう言う話をしていると思うわよ?」


ここで黙っていた。和装の勘解由小路《かでのこうじ》夫人も参戦する。


「土御門、倉橋、勘解由小路《かでのこうじ》と二大宗家の有力者は揃っているじゃない。居ないのは幸徳井かでいと新興の鳥羽とば家だけよ」

「どうするつもりですか?」

「多分だけど吉田家への要求は土御門、倉橋、勘解由小路《かでのこうじ》の三家から嫁を取り、吉田勇樹《よしだゆうき》を家長にすることかしら? まあ幸徳井かでい鳥羽とば他の家からも介入はあると思うけど……」

「許嫁にしてくれればそこら辺の面倒ごとは皆さまが対応してくださると?」

「簡単に言えばそう言うことよねえ?」

「私達の娘にもメリットのあるお話ですから……」

「理由をお話いただけますか?」

「何人もの著名な預言者や星読みが予言されたのよ。曰く『運命を背負った童あり。そして大いなる災いを払うであろう。ただし力ある同士と協力せねば成し遂げる事叶わず。より大きな災いが日の本を襲うであろう』と……」

「そして土御門、倉橋、勘解由小路《かでのこうじ》の娘は全員が高位の『生成り』利害の一致と言う奴です」


ん? 原作でそんな話あったっけ? まあ今名前の挙がった家の殆どは登場しないんだけど……


「……今は折れるしかないようですね」

「悪い様にはしませんよ差し当たって長期休みには四家合わせて子供を遊ばせ仲を深めさせようではありませんか?」

「春は花見、夏は海と山で、冬はスキーと子供も楽しめるレジャーは多いですから男尊女卑の降魔師の妻として息抜きも必要でしょう」


 コレが俺達三人が初めて出会った日の出来事だ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏公務の神様事件簿 ─神様のバディはじめました─

只深
ファンタジー
20xx年、日本は謎の天変地異に悩まされていた。 相次ぐ河川の氾濫、季節を無視した気温の変化、突然大地が隆起し、建物は倒壊。 全ての基礎が壊れ、人々の生活は自給自足の時代──まるで、時代が巻き戻ってしまったかのような貧困生活を余儀なくされていた。 クビにならないと言われていた公務員をクビになり、謎の力に目覚めた主人公はある日突然神様に出会う。 「そなたといたら、何か面白いことがあるのか?」 自分への問いかけと思わず適当に答えたが、それよって依代に選ばれ、見たことも聞いたこともない陰陽師…現代の陰陽寮、秘匿された存在の【裏公務員】として仕事をする事になった。 「恋してちゅーすると言ったのは嘘か」 「勘弁してくれ」 そんな二人のバディが織りなす和風ファンタジー、陰陽師の世直し事件簿が始まる。 優しさと悲しさと、切なさと暖かさ…そして心の中に大切な何かが生まれる物語。 ※BLに見える表現がありますがBLではありません。 ※現在一話から改稿中。毎日近況ノートにご報告しておりますので是非また一話からご覧ください♪

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

処理中です...