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第三章

第103話

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「それが何か? 回りくどい言い回しでこれ以上規律を乱すようでしたら……」

「そう焦るな早い男は嫌われるぞ?」

「――ッ!?」

 ビンセントは額に血管を浮き上がらせ肩を怒らせる。
 その姿を見て護衛の騎士と兵士は腰の槍を向けたり腰の獲物に手をかける。

「待て!」

 右手の平を仲間側に向け静止のポーズを取る。

「しかし……」

 言い淀み槍を向ける騎士に対してこう言った。

「全員死にたいのかッ!?」

「「「「「――ッ!?」」」」」

「このナオス様はヤると言ったらヤる人間だ。それは今のを見て理解しただろう? 一人で帰るだけならナオス様一人で帰ることが出来る……」

「しかし! 私刑を許しては軍規が乱れます!?」

「貴族籍を剥奪されたとはいえど、主君の血統を受け継いだ男児! それも聖人級の回復魔術を使え、創薬にも優れる時代の浮雲児だ!! 我々は軍規に目を瞑るしかないのだ!!」

「熱くなっているところ悪いんだが、再び詳しく説明しよう。騎士シッヌは先日のサラマンダー事件の時、騎士でありながら軽度の損傷で自らは後方へと後退し、過剰とも言える治療を老魔術師から受けていた。そのでいで助かる命が幾つも失われただろう……」

「――っ!」

 俺を睨んでいた視線がダンゴムシのように丸まっているシッヌに集まった。

「……騎士シッヌがあなたの言う通りサラマンダー事件に参加し、負傷していたことは事実であると知っています……シッヌが騎士道精神に欠けた不忠義者だったとしてもそこまでの人物であるとは思えません……一度調査させて――」

「――「待ってください!」」

 俺の言葉を遮ってローブを纏った女が声を上げた。
 女に視線が集まる。
 暗闇で見え辛いがコッロス公爵家の紋章が見えた。

「誰だ? 今の君に発言権があるとは――」

 ビンセント配下の騎士が女の発言を遮った。
 しかし女は発言を止めずこういった。

「私はコッロス公爵所属の回復魔術師ゲンカ・イ・カンゴと申します。サラマンダー事件の際にも回復術師として参加していました!」

「「「――!?」」」

 周囲を取り巻く公爵配下、冒険者&傭兵、神殿の三勢力に同様が走る。
 若い回復術師の一挙手一投足に注目が集まる。

(誰だっけ? この娘……まあでも俺の証言が正しいと証明してくれるなら誰でもいいか……)

 シッヌとか言う騎士の従者やコッロス公爵家の信奉者に俺や彼女が害されないようにしておこう。今は……

 先ほど見えた数人に魔力でマーキングをし、暗殺者の襲撃を発見して見せた【魔力探知】を前回よりも薄く広げる。
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