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第三章

第86話 イノベーションは巻き起こる

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「それにこの技術を俺は公開するつもりもない。だからこの他の薬師ギルドや神殿を駆逐するか、敵に回しかねないほど圧倒的ポーションは末端に流すにしても、割高で売ることで差別化することができる。まあ当分はコッロス公爵家にしか販売しないがな」

「民がどうなんてもいいのですか!?」

 再び声を荒げる。
 船旅の場合途中でポーションが腐ったり使い物にならないなんてことは良くある。
 俺も前世で経験があった。

 海の貴族であるコッロス公爵家にとって、喉から手が出るほど欲しいものだろう。
 それに今回の遠征でデモンストレーションを行えば、さらに料金を吹っ掛けることが出来る。
 公爵家や冒険者ギルド、傭兵ギルドだけではなく、神殿を始めとする薬草ギルドや錬金術ギルド、商業ギルドなどへのアピールにもなる。

 この世界に来てから戦争とは次の時代のための儀式ではないか? とより一層考えるようになってきた。
 イメージとしては戦争で死んだ人間を贄に、文明を発展させると言ったまさにゲームのような不謹慎な発想だ。
 しかし地球ではここ二〇〇年ほどの間、戦場は次の兵器や技術の実験場として使われることが多く後に民間用に転用されたものも多い。
 『必要は発明の母』であるが故のタイミングだとは判っている。だから人前では絶対に言えないことだと理解している。

 神話や歴史にもあるように『破壊と再生スクラップ・アンド・ビルド』は表裏一体なのだ。
 今回犠牲者になる顔も名前も知らない誰かに感謝して、俺は俺を売り込むとしてよう。

「俺は聖人君主じゃないからな知らない人間や嫌いな人間が何人死のうがどうでもいい。それにグレテル先生なら体験していると思うが上に立つものは、下の人間を数字で判断するそれが政治ってものだと思いますけど」

「それはそうだけど……」

 正論を言えば語気が弱くなる分だけ怒鳴りつけ、お気持ちだけで会話をする人間よりも御しやすい。

「先生は一般販売することで、遠征の危険度を高めベネチアンの街の治安を悪化させるとともに、神殿を始めとする薬草ギルドや錬金術ギルド、商業ギルドを敵に回せというのですか?」

「そこまでは言ってないわ!」

「……ならば今はまだ俺の意見の方に理があるということですね。大丈夫ですよ魔王が倒されて四十四年、平和に慣れた人々は次のステップを踏み出す頃合いですからイノベーションが起こるのはこれからですよ」

「イノベーションを起こす側が言うと説得力があるわね」

「イノベーションを起こすのは俺以外ですよ」

 前世では大往生とは言えないまでもそれなりに長く生きた。そんな人間よりも無鉄砲で根拠ない自身だけで突き進める若人のほうが、よほど面白いことが出来ると思う。
 今回のこともパズルのピースを組みわせるように、既存のものを応用しただけでなんの目新しさもないからだ。

「私より若いのにじじ臭いこというのね」

「……それはそうですけど……」

 危なかった。
 思わず前世も含めた感覚で喋ってしまっていた。
 するとキルケーは何かに気付いた様子でこう言った。
 
「あれ? ご主人様『ポーションタブレット』って血で溶かしたり出来ますよね?」

「確かに粘度を調節すれば患部に押し付けるだけで溶けてポーションの効果を発揮させられるが……」



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【ご報告】
機能の投稿分のインセンティブが100円を切りましたが、出来る限り引き続き投稿していくつもりです。
よろしくお願いします。
土日に纏めて読むでもいいので作者にお小遣いを恵んで頂けると嬉しいです。
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