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第二章

第41話 魔術を習おう

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「俺も幸せに楽して生きたいだから自分だけよければ、手の届く範囲内だけでもそうなれば良いって思ってた……」

 俺の言葉に皆の食事の手が止まる。

「「「「「……」」」」」

「でも今は違う。俺が幸せに生きるために楽していきるために回りも幸せにしたいと思う。だからみんな協力して欲しい」

「「「「「「「「もちろん」」」」」」」」

 俺は自分の生活を豊かにした結果この世界を少しでも良くすることに決めた。



………

……






 ポーションの作成を終え一段落ついた俺達はみんなでお茶を楽しんでいた。

「そう言えばアイナリーゼは魔術を使っていたけどイオナは使えないのか?」

「私は素養はあると言われたのですが教えて貰っていないので……」

「そうかなら、アイナリーゼかグレテル先生に空いている時間に習うといい」

 この家も随分過ごしやすくなった。もう少しここにいることも吝かではない。
 しかしこの家から逃げ出す時のことを考えれば、戦力は多ければ多いほどいい。

「判りました」

「他のみんなはどうだ?」

「僕は【身体能力強化】ならなんとか」

「ウテナはわたしと同じね」

 とクレアが言った。

「私も!」

 ――と声を上げる。
 結局みんな欠損奴隷だっただけで魔術は使えるようだ。
 せっかくならエルフ秘伝の魔術体系を習いたいものだと考えた俺はこんな提案をした。

「せっかくならみんなで魔術を覚えよう。アイナリーゼ俺達に魔術を教えてくれるか?」

「私がナオスさまに魔術を? なんの冗談ですか?」

「冗談なんかじゃないよ剣の先生はいても魔術の先生はいないからね」

 本来は家庭教師や専門の教師が教える分野のその全てをグレテル先生が肩代わりしている状態だ。
 専門の教師に習いたい分野はあるが時間的拘束を考えるとかなり悩む部分だ。
 だったら時間的な融通が利くアイナリーゼに習うと言うのは合理的な判断と言える。

「一瞬で欠損部位を再生させるほどの回復魔術を使えるのですから、他の魔術を習っても無駄なのでは?」

 この世界の常識は魂に術式を刻む【魂刻こんこく】が一般的である以上一系統か二系統に抑えるべきとされている。

「俺は全属性に適正があって回復魔術だけが得意と言う訳ではないんだ」

「まさか!」

「それにグレテルさまとあれだけ剣を打ちあえるほどの腕まで持つなんて……まるで第十七使徒様みたいです」

 第十七使徒? ダブリス。渚カヲルかな?

「第十七使徒?」

「はいご存じの通り勇者さま方の神殿で呼び方です。神の使徒として既に御隠れになられた方で【万能者】とも呼ばれます」

「だったら【万能者】と呼べばいいじゃないか……」

「あくまでも俗世での仇名です。細かいことは神殿の方でないと判りませんが王や貴族の御名を軽々しく呼ばないのと同じではないでしょうか?」

「ああなるほど……」

 なるほど……『太陽王』ルイ14世や『論破王』などのように宣伝戦略や権威付け、平安時代のように役職名だけか役職名+名前で呼ぶのが普通の時代もある。
 俺が事実上隠遁生活を送っている間にそんな風潮になったのかもしれない。

 そう言えば前世で村に泊まった際に「今上陛下」だの「国王陛下」として呼んでいなかったな。
 アレって御名を呼ぶのが恐れ多いのもあるんだろうけど、単純に名前を知らないだけなのかもしれない。
 だったら勇者にして王になった奴は……勇者王……ガオ〇イガーかな?

「しかし勇者様と一般人は違いますからあくまでも一例として御覧ください」

「判ったよ」

 ドンペリ家は伝統的に水と風の魔術に適正を持つらしく、グレテル先生も例外ではなかった。
 そのため教えてもらったのは水と風だけで、そのほかの魔術は全て前世で見聞きしたことをそのまま実行しているだけだ。
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