上 下
3 / 124
第一章

第3話 兄弟に負け見捨てられる 06/02誤字脱字修正

しおりを挟む
 カラン、カランと音を立てて木剣が石畳の上に転がる。

「真面に剣も振れないとは! 本当に俺の子か?」

 正妻とその子供達からの虐めを止めようともしなかった父は、心底期待外れとでも言いたげにポツリと呟いた。
 金髪碧眼で長身のイケメンである父傍らに居るのは、父の夫人や子供その侍女達だ。

 まるで草花でも鑑賞する見たいに、婦人達はドレスで着飾り侍女には日傘を差させている。
 子供達は皆健康的な肌色をしており、異様なほどに白い俺とは対照的だ。
 それもそのハズ真面に屋敷から出して貰えぬ不健康な生活と、満たされぬ食事をしていた今の俺が、年上の兄弟と試合を出来る道理はなかった。

 ぜえぜえと肩で息をして硬い石畳に手を付いてた姿を見下しているのは、半分だけ血の繋がった兄だった。
 父に似て無駄に整った顔立ちも、その性悪そうな笑みで台無しになっている。


 先程まで俺を殴りつけていた木剣には結構な量の血が滲んでいるが、そんなことは「大したことではない」とでも言いたげに肩をトントンと叩いている。

「お前弱すぎだろ? 平民の血が混じると高貴な血も霞んで弱くなるのか? 魔力も無ければ武芸の才もない。お前は本当に無能だな……」

 魔術で身体能力を強化しようとも、基礎体力の低さはどうしようもない。
 むしろ体力をより多く削られる。短期決戦でカタをつけるつもりだったが、流石は騎士団長の息子、基礎が出来ている分強い。
 遠目から俺達の様子を見ている騎士にしても――

「ナオスはダメだな」
「ああ、あの女の血が不味かったのだろう」

 ――と今世の母を馬鹿にするばかり。

「父上こんな無能に期待するだけ無駄です。折角ですから俺に剣を教えて下さい」

「……そうだなこの無能にほんの一欠けらでも期待したのが間違いだった。ナオス・コッロス貴様は、今日から今は使われていない離に移り、名を改めただのナオス・スヴェーテと名乗れ、我がコッロスの家名を今後名乗ることは許さん! 連れていけ。」

 父は使用人に何かを伝えると、やって来た使用人に連れられ俺は離に連れてこられた。

「公爵様もお優しい。無能なお前を育てて下さるんだからな」

「魔力ゼロで剣才もない……本当に公爵様の種なのかも疑わしい」

「幾ら顔が良くてもしょせんは平民腹の子、もしかしてお前本当に公爵様の子供じゃないかもな!」


 ギロリと騎士を睨み付ける。

「「「……」」」
 
 騎士達は顔を見合わせると、ニタリと気持ちの悪い笑みを浮かべこう言った。

「身の程を弁えろクソ餓鬼!」

 両方から支えられていた手を離されると疲労からか足がもつれる。

「おっと……」

 すると背後から蹴りを入れられ転がってしまう。

「今日からここがお前の家だ」

 全身が痛む身体に鞭を打って顔を起こす。
 そこに建っていたのは、蔓草に覆われた石造りのゾンビでも出そうな立派な洋館だった。

「ボロくて声も出ないか? この屋敷はな先代様の威光で残してあるだけの廃墟だ。何でも勇者様御一行がこの領地を救ってくださった時にお泊りになられたらしい」

「公爵様も先代であるお父上のお言葉だから、誰にも使わせず残していたそうだが取り壊す理由が出来たとお慶びになるだろう」

「成人を迎えるまで大人しくしていれば、食いっぱぐれることだけはない。精々剣や魔術に励むんだな……まあ誰もお前に教えることはないだろうけど」

 と言うと三人でゲラゲラと馬鹿笑いをする。
 品性の無さは騎士と言うよりも、世紀末のヒャッハー共のようだ。
 そんな彼らは俺一人だけを残してこの場を後にした。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
【完結】ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

処理中です...