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EX話 とある少年の見た景色《セカイ》
しおりを挟むボク達は息を潜め、押し殺し建物の中に籠っている。
もうあのバケモノ共が押し寄せて来て数時間。
町の中も俺達が立て籠もっている建物の中も、血と何かが燃える煤の匂いが充満している。
命の危険を肌で感じると言う。人生の中で一度も経験した事の無い。極度の緊張によってピンと張り詰めた。緊張の糸はもう切れてしまう寸前で、三つ編みのように織り込まれた糸は、所々切れてしまっておりもういつ誰が発狂してもおかしくはない程には、体力は限界を超えている。
「クソっ!」
誰かがポツリと呟いた。
僕は「誰か」と言ったがそれはもしかしたら、無意識に僕が吐いた言葉かもしれない。
怒り、苦しみ、戸惑いそう言った。負の感情が籠っているように感じる。
その言葉を咎めるような。勇気ある者はもうここには居ない。
そう言う奴は皆食われた。
ここに逃げるまでの間に、親や兄弟があのバケモノに食われた者は少なくない。中には手や足を食われた者も居る。
皆ここに来るまでの短い間に、胃の中のモノは粗方吐き切っただろう……どうして分かるのかって? 俺がそうだからだ。
僕は今年五つになる。まだ幼い妹目の前で食い殺された。
あの小型のラプファングとかいうバケモノが、妹の柔肌にナイフの様に鋭い牙を突き立ててクビを噛み切って殺された。
その光景を俺はただただ。呆然として見ている事しか出来なかった。奴が妹の肉を貪っている間に僕は、逃げ出しそしてゲロを吐いた。
そして現在に至ると言う訳だ。
ドンドンドンドン! ドンドンドンドン!
――――と激しく何かが壁に打ち付けられる音がする。皆その音に声を押し殺して、「ひぃ」とも「きゃぁ」とも付かないそんな声を押し殺したような奇妙な悲鳴をあげる。
暫くは激しく何かを打ち付けるような音がするが、音の主はドアを突破する事を諦めたのか、暫く音は鳴らなくなる。音がやむと皆安心したのかため息が漏れる。
刹那――――。
ドアの木枠が歪み土煙を立てて大男が中に入って来る。
領主さまの手勢だろうか? しかしソレにしては少し早すぎる。
そんな事を考えていると男は、粗暴ながらもゆっくりとした口調で話し始めた。
「大丈夫か? おっと安心しろ俺は敵じゃない」
そう言って男は金属製のプレートを見せる。
俺達はその紋様に見覚えがあった。冒険者ギルドの紋章だ。
「俺達はロシルド公爵閣下の公孫であるイオン様の依頼で、弟君《おとうとぎみ》の警護についていた特別B級《ランク》冒険者パーティー【白銀の狼牙】の前衛のマルコだ。弟君のご命令で君たちの救助に来た。救助本体ももうすぐ来るだろう……」
マルコと名乗った冒険者の言葉に、ここにいる皆が希望を見出しているようだ。
マルコさんの指示の元俺達8名は、村の南側にある広場に向かう事になった。
俺達は命からがら逃げきる事には成功したものの。特別B級冒険者パーティー【白銀の狼牙】メンバー5名の内四名が死亡したことが、後に救援に来た領主軍の看護兵からベッドの上で聞かされた。
唯一生き残ったのは、仲間に庇われたものの、四肢を食われ欠損した女性冒険者だと言う。
俺はその晩夜を徹して泣いて誓った。モンスターの被害に遭う人が一人でも居なくなるそんな世界を作りたいと……
こうして名もない少年の物語の物語が始まった。
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