48 / 55
第48話シャオン婚約を申し込まれる
しおりを挟む今まで滅多に現れる事の無かった伯爵家の美姫を一目見ようと、老若男女構わず伯爵の元に人が集まり始めたところで、俺もイオンお兄さまも席を外す。
「パーティーが終わったら詳しく話せ 良いな?」
イオンお兄さまは俺の耳元でそう囁くと、パーティー会場から席を外す。立食形式のパーティーであり挨拶をされる側のイオンお兄さまは、グラスワイン以外まともなモノを口にしていない。恐らくは御手洗いに行ったのであろう。
………
……
…
カラカラと音を立てて馬車の車輪が回転する、馬車の隅にはランタンが置いてあり夜道での明かりの確保と、車で言う車幅灯、前照灯の役割を持っており、どれぐらいの幅があるのかを御者に知らせているのだ。
「パーティーの後帰っていく順番待ちの時間は少し退屈ですね……」
俺の言葉にイオンお兄さまが同意する。
「確かに何の生産性もないからな。
しかし今回は主賓だからな見送らねばならんのだ。」
兄は咳払いをすると、少し様子を伺うようにこんな事を言って来た。
「リハヴァイン卿の娘を連れだすなど、俺は聞いていないぞ?」
兄としては俺が勝手に動いたことに対して、いささか不満があるようだ。
「リハヴァイン卿から頼まれました。「娘もそろそろ良い年だ。社交の世界に出ないのは、外聞も悪いし結婚相手も見つかりにくい。娘が外見の事を気にして、表舞台に出てこない事は知っている。年も近い君になら娘も心を開いてくれるのではないか?」――――と」
ここで俺は善意からの行動ですので、イオンお兄さまにはご報告しなかっただけです。と言い訳をした
「貴様は善人の気質があるが、今回はそれだけではあるまい?」
海千山千の相手をしているイオンお兄さまには、流石に通用はしないか……
「リハヴァイン卿は、私個人への支援を約束してくださいました。イオンお兄さま経由で、頼む程重要度が高くない事を直接頼もうと思いまして……」
「リハヴァイン卿にそこまで力はない。リハヴァイン家は没落への道を歩いている真っ最中だぞ?」
「それでもやらないよりはマシです。
これが噂になれば俺は人格者としてより名が売れるでしょう……リハヴァイン卿ももしもの時は助けてね? と言う軽い約束で済む。
私は善人として名前が売れる……ウィンウィンでは?」
「確かにそうだな……貴様にも手足となる部下が必要な頃か……」
「では、シャルロット先生を前線都市に派遣してください。
前線都市はかなり大きな城塞都市と聞いています。
戦力としても将としても欲しい人材です」
ゲームのイベントで龍種と戦う時に、時間制限で敵を倒すイベントがあったその時は大砲や連弩、魔術と陸上戦力で相手をしたがシャルロット先生が居れば戦力が格段に上がる。
「シャルロットは俺の家臣ではない。
好きにしろ……奴が付いていくと言うのなら止めはしない」
「ありがとうございます。
精一杯シャルロット先生を勧誘させていただきます……」
これでどうどうと引き抜きをかける事が出来る。
主人公が解決してくれるとはわかっていても、備えて置いて損はないからな……今のうちに向こうの資料を取り寄せて置こうかな?
ドア越しに足音が近づいてくる。
「そろそろ我々の順番ですね」
暫くするとドアが開き執事がドアを大きく開ける。
「どうやらそのようだな」
すると白銀の髪を靡かせて、ルナ嬢が部屋に入って来る。
「シャオン様今日はありがとうございました。私は自分の容姿をコンプレックスに思っておりましたが、貴方の言葉に救われました!! よろしければ私と婚約してくれませんか?」
「えっえええええぇぇぇぇぇぇっぇぇぇえっぇえっぇぇっぇぇぇえええッ!!」
俺は思わず絶叫を上げる。
う、嘘だろ? こんなにカワイイ女の子が俺にけ、結婚を申し込んで来るなんて……
「ルナ嬢。それは貴方のお父上リハヴァイン伯爵に許可を得ての事かね?」
兄は冷静な声音で諭すように、ルナ嬢に語り掛ける。
「まだ相談していませが……父上ならきっと理解してくれます」
どうやら初恋の熱に身を焦がされているようだ。
「酒と初恋でおかしくなっているようだ……今日の所はお引き取り願う。連れて帰ってもらえるかな?」
兄がそう言うと執事たちは嫌がり抵抗するルナ嬢を、罠にかかった動物を運ぶかのように抱えて運び去っていく……
「いやぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁっぁぁぁッ!! シャオンさあまぁぁぁぁあああああああああああっ!!」
ルナ嬢は絶叫しながら運ばれていった。
「見てくれは綺麗だし才能があると聞いていたが……まさか男で身を崩すタイプだったとは……人は見かけによらないと言うが本当の事らしい。それでお前はアイツと婚約したいのか?」
「まだ彼女とは出逢ったばかりです。お綺麗だとは思いますがアレを見てしまうと……」
俺は言葉にしづらい少女の言動のを見て少し……否、正直に言ってかなり引いていた。見た目の美醜って絶対マイナスにはならないと思っていたけど、奇行と言っていい行動をされると冷めるんだな。と案外冷静だった。
0
お気に入りに追加
606
あなたにおすすめの小説


爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる