42 / 55
第42話登城と詰問2
しおりを挟む「我が身に宿り流れる神々の娘の血よ。軍勢の守り手として剣の時代に勝利をもたらし、人類の怨敵たる怪物の恐怖から解放せよ! 顕現せよ! それは仮初の翼、過ぎたる自由はその身焼き滅ぼす 傲慢にして勇気ある賢人にして名工よ汝仮初の肉体を持って、我に自由を与え給へ その名はガルグイユ」
その言葉に答える様にして地面から石像が出現する。その姿は山羊の角に尖った耳、蝙蝠を模した蝋のように白い翼、人の身体に獅子の爪、そして蛇の尾を持った石像の怪物それがガルグイユだ。
「おおコレが召喚魔術……」
「これがエルフの秘術か」
――――などと口々に感嘆の言葉を述べている。
「召喚魔術を用いて君が倒したのかね?」
軍務大臣と思われる男が声を上げる。
なぜ分かるかって? 腰に剣を帯剣しているからだ。
「これを使い空を飛び逃げたのです」
「では直接討伐した者はだれかね? 単独でB級モンスターを狩る事が出来るものなどA級、S級相当だぞ」
今まで外套を被っていたシャルロット先生が、外套を頭から外し答える。
「私がお答えしましょう」
「【風刃】がなぜ!?」
「【風刃】、【風刃】だと!」
「下民の魔女め! 今更何をしに来た?」
「シャルロット・オーウェン貴様! 何をしに来た」
「まさか貴様が……」
大臣や官僚達は口々に、シャルロット先生がこの場にいる事に対して疑問と驚きの言葉を口にする。
イオン・フォン・ロシルドと言う男は、今この場で元宮廷魔術師筆頭の十三人の一人であるシャルロット・オースティンと言う手札を切って見せたのだ。
「そう。止めを刺したのは私。だけどそこまで削ったのは私の弟子とそのお付きの騎士達よ。シャオン君はエルフと人間のハーフで精霊魔術を行使できる。その意味は貴方達でも理解できるでしょう……」
「この子の判断がなければ村と結界は壊滅。件の予言の御子も死んでたかもしれないわね……それで国王陛下はどのような裁定を下されますか? 新たな英雄候補に投資され公爵家と融和なされるか、勇者に首輪を着けるために公爵家と敵対なされるか二つに一つです」
「「「「……」」」」
家臣一同はジッと押し黙る。
家臣一同がなぜ黙るのかそれは、今この場でするたった一言の発言が、領主貴族と宮廷貴族と言う単純ないつもの構造から、地方貴族対王族と言う致命的な対立になりかねないからだ。
「シャルロットよ、女神の使徒である勇者に首輪を着けるなどと……勘違いする者が表れてしまうであろう……?」
玉座に座していた老年の男は声を発する。
「……であるなら、我が弟子にしてイオン様の腹違いの弟シャオンとイオン様の同腹の妹が向かう最果ての砦への援助を確約して頂けますね?」
この場合、最果ての砦への援助とは勇者の領有を認め王国が一丸となって人材や物資、金銭面で優遇をしてくれるよね? と言っているのだ。
前線都市アリテナが産出する、高純度の魔石やモンスターの素材を始めとする貴重な草や鉱石は、王国……否王家にとって重要な収入源である。
「……当然である。前線都市アリテナは、我が国とかの国の国境にありモンスター共を抑える蓋でもある……そこの臣下共は、勇者を手元に置いておきたいようだが……」
そう言ってジロリと臣下を一別する。
「……斬れる剣を豪華な倉に入れておいても意味が無い。以下に宝剣と言えど振う場所が無ければ意味が無い。剣には剣なりに使われるべき場所がある。振うべきは戦場であろう……」
明言はしていないものの、コレは勇者を王都に置いておいても意味が無く、前線都市アリテナで勇者を管理するべきだと言っているのだ。
「ありがとうございます」
兄は国王に礼を言う。
「気にするな……初めから風刃ありきの防衛力なら、あの程度の兵の数でも問題ない事は目に見えている……それにお主の大事な弟を見る事が出来た。お主シャオンと申したな」
「はっ!」
「お主を王国の一代貴族とし法衣騎士爵位を授与する」
「はっ。ありがとうございます」
「此度の臣イオンの罪状は無罪とし、またアリテナへの支援は国策とする事を約束しよう。シャオン法衣騎士爵よ、アリテナでのお主の活躍を期待している。」
こうして兄は無罪放免となったうえ、アリテナへの支援を得た。
俺は公爵家の非嫡子から、王国貴族の最底辺である法衣騎士となったのだ。
0
お気に入りに追加
606
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました
平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。
しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。
だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。
まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。
俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。
異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。
途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。
しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。
その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる