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第42話登城と詰問2

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「我が身に宿り流れる神々の娘の血よ。軍勢の守り手として剣の時代に勝利をもたらし、人類の怨敵おんてきたる怪物の恐怖から解放せよ! 顕現けんげんせよ! それは仮初の翼、過ぎたる自由はその身焼き滅ぼす 傲慢にして勇気ある賢人にして名工よ汝仮初の肉体を持って、我に自由を与え給へ その名はガルグイユ」

 その言葉に答える様にして地面から石像が出現する。その姿は山羊の角に尖った耳、蝙蝠を模した蝋のように白い翼、人の身体に獅子の爪、そして蛇の尾を持った石像の怪物それがガルグイユだ。

「おおコレが召喚魔術……」

「これがエルフの秘術か」

――――などと口々に感嘆の言葉を述べている。

「召喚魔術を用いて君が倒したのかね?」

 軍務大臣と思われる男が声を上げる。

 なぜ分かるかって? 腰に剣を帯剣しているからだ。

「これを使い空を飛び逃げたのです」

「では直接討伐した者はだれかね? 単独でB級モンスターを狩る事が出来るものなどA級、S級相当だぞ」

 今まで外套フードを被っていたシャルロット先生が、外套フードを頭から外し答える。

「私がお答えしましょう」

「【風刃】がなぜ!?」
「【風刃】、【風刃】だと!」
「下民の魔女め! 今更何をしに来た?」
「シャルロット・オーウェン貴様! 何をしに来た」
「まさか貴様が……」

 大臣や官僚達は口々に、シャルロット先生がこの場にいる事に対して疑問と驚きの言葉を口にする。
 イオン・フォン・ロシルドと言う男は、今この場で元宮廷魔術師筆頭の十三人の一人であるシャルロット・オースティンと言う手札を切って見せたのだ。

「そう。止めを刺したのは私。だけどそこまで削ったのは私の弟子とそのお付きの騎士達よ。シャオン君はエルフと人間のハーフで精霊魔術を行使できる。その意味は貴方達でも理解できるでしょう……」

「この子の判断がなければ村と結界は壊滅。くだんの予言の御子も死んでたかもしれないわね……それで国王陛下はどのような裁定を下されますか? 新たな英雄候補に投資され公爵家と融和なされるか、勇者に首輪を着けるために公爵家と敵対なされるか二つに一つです」

「「「「……」」」」

 家臣一同はジッと押し黙る。
 家臣一同がなぜ黙るのかそれは、今この場でするたった一言の発言が、領主貴族と宮廷貴族と言う単純ないつもの構造から、地方貴族対王族と言う致命的な対立になりかねないからだ。

「シャルロットよ、女神の使徒である勇者に首輪を着けるなどと……勘違いする者が表れてしまうであろう……?」

 玉座に座していた老年の男は声を発する。

「……であるなら、我が弟子にしてイオン様の腹違いの弟シャオンとイオン様の同腹の妹が向かう最果ての砦へアリテナの援助を確約して頂けますね?」

 この場合、最果ての砦アリテナへの援助とは勇者の領有を認め王国が一丸となって人材や物資、金銭面で優遇をしてくれるよね? と言っているのだ。
 前線都市アリテナが産出する、高純度の魔石やモンスターの素材を始めとする貴重な草や鉱石は、王国……否王家にとって重要な収入源である。

「……当然である。前線都市アリテナは、我が国とかの国の国境にありモンスター共を抑える蓋でもある……そこの臣下共は、勇者を手元に置いておきたいようだが……」

 そう言ってジロリと臣下を一別する。

「……斬れる剣を豪華な倉に入れておいても意味が無い。以下に宝剣と言えど振う場所が無ければ意味が無い。剣には剣なりに使われるべき場所がある。振うべきは戦場であろう……」

 明言はしていないものの、コレは勇者を王都に置いておいても意味が無く、前線都市アリテナで勇者を管理するべきだと言っているのだ。

「ありがとうございます」

 兄は国王に礼を言う。

「気にするな……初めから風刃ありきの防衛力なら、あの程度の兵の数でも問題ない事は目に見えている……それにお主の大事な弟を見る事が出来た。お主シャオンと申したな」

「はっ!」

「お主を王国の一代貴族キャリア・マーキスとし法衣騎士爵位を授与する」

「はっ。ありがとうございます」

「此度のしんイオンの罪状は無罪とし、またアリテナへの支援は国策とする事を約束しよう。シャオン法衣騎士爵よ、アリテナでのお主の活躍を期待している。」

 こうして兄は無罪放免となったうえ、アリテナへの支援を得た。
俺は公爵家の非嫡子から、王国貴族の最底辺である法衣騎士となったのだ。


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