上 下
41 / 55

第41話登城と詰問

しおりを挟む



 幸い礼儀作法は問題ないようで、王の御前にまで進む事が出来ていた。

「では、ロシルド公孫イオン・フォン・ロシルドよ、此度の不手際の理由を陛下の御前で申せ……」

 王の周囲に立つ老齢な男の一人が兄への詰問を開始する。

「はっ、申し上げます。此度の変異種ミュータントモンスター……通称【暴竜】タイラントレックスについて申し上げたい事がございます。先ずは御配りする資料をご覧下さい……」

 兄はそう言って資料を近衛兵に渡す。
 近衛兵は順番に羊皮紙を大臣や官僚に手渡していき、手紙が行き届いた頃一人の大臣が目を見開いている。
 それを疑問に思っていると……シャルロット先生が耳打ちして教えてくれた。

「将軍ね……ワンオフでなければ騎士の装備向上につながるモノ興味深々のハズよ。それに見てあっちは技研と生物学の権威ね……みんなこんなバケモノじゃしょうがないて思ってるハズよ」

「これは?」

 王の家臣の一人が疑問の言葉を口にする。

「タイラントレックスの竜燐りゅうりんと堅殻のデータです。
 ご覧いただいた通り、打撃・斬撃・刺突全ての物理耐性が極めて高い上、騎士や魔術師が攻撃手段として良く用いる、炎の耐性が極めて高く、逆に使い手の少ない氷と水属性が弱点であったと言う結論が出ており、冒険者ギルドが提示するところ……B級プラチナランク冒険者の四人組パーティーで勝てるかどうかと言う判定であるため当時対応に当たった、当家の騎士では不足であったかと……」

 兄は理路整然とした態度で答弁する。

「では、騎士の力不足であろと?」

「そうは申しません。当時当家の非嫡子のシャオンの狩りの練習のため、特別B級冒険者のパーティーを雇用し当家の騎士二人、従騎士2名、元騎士の御者1名でビガ・ラプファングの狩猟に向かっており、途中町から煙が上がっている所を発見し救助に向かったのです。シャオンを連れてきておりますので、街での詳しい事はシャオンに答弁させていただきます。」

「ほう……」

 大臣や官僚と思われる男達が、値踏みするような視線をシャオンに向ける。

「イオン様に代わりまして、現場で起きた事の事実を語らせて頂きます。私は村に着いた際、騎士と冒険者で部隊を別け、捜索に当たらせる事にし、私と御者は現場に残り市民の逃げ場を造る事にしました。」

「それではお主の命の危険があるではないか……」

 男達の一人が声を上げる。

「私が何方かについていけば、判断が迷い足手まといになります。私は嫡子ではありません。私の命にそれほど大きな価値があるとは思えないのです。それよりも価値のある者はいますから……」

ここで俺は、お前たちがどうして兄を糾弾するのか知っているぞ? 勇者の所有権を兄から奪うために仕組んでいるんだろう? 俺はお前たちは違って貴族の責務を果たしてるんだよ! と煽っているのだ。

「そうか……貴様は貴族席の人間ではないがその身体に否、その精神に貴族としての誇りがしっかりと刻まれているのだな……」
 
 紳士な家臣の一人は俺を褒める。俺は紳士に礼を言い説明を続ける。

「ありがとうございます。主人サーでは話を戻します。
私と御者と見習い騎士一名で、中型含む約50頭ほどのモンスターを倒し魔除けの陣を敷き、両救出部隊の到着を待ったのですが、冒険者側の帰還が無く担当区域が繁華街であったため、騎士2名・元騎士の御者・私の合計四名で救助に向かいました。
 他の者には順次避難をするように強く言明し、スタンピードの時間稼ぎと原因を究明するために向かったところ、タイラントレックスと遭遇。
 従騎士一名が生死の境をさまよう事になりましたが、全員の最大攻撃で脚部の竜骨が露出しましたが、数分で再生したため囮を用いた遅滞戦術に移行し、何とか討伐に成功しました。」

 俺の説明を聞いて驚愕の表情を浮かべ、声を上げる者も多い。それだけタイラントレックスの脅威を上手く説明できたと思えばいいか……
 事実。軍関係者は、元々騎士団の隊長級を出さねば安心できない脅威だと言う認識は持っているハズだが、権力を持っているだけの人間や数字と書類だけを見ている文官たちにとって、脅威度は低くとらえていたのだろう。

「囮は誰が勤めのたのかね?」

 大臣の一人が声を上げる。

「そのように勇気と実力を持った人物が居るのであれば、是非当家……いや騎士団に迎え入れたい」

「囮を務めたのは私です」

 俺の言葉に大臣達は、「馬鹿な!」「騎士ですらない子供が」「嘘を言うのも対外にせいよ!」などとヤジが飛ぶ。

「事実です。証拠をお見せしましょう……国王陛下並びに皆さま魔術の使用を許可願えますか?」

 俺は淡々と返事をする。

「もしや召喚魔術が使えるのか!?」

 大臣の一人が声を上げる。

「はい。その通りで御座います」

 俺がそう答えると周囲が騒めく……少し珍しい程度だと思っていたが騒ぐほどの事なのだろうか?

「嘘をつくでない。この場での偽証は最低でも爵位の降格! 爵位を持たぬ貴様では即刻奴隷落ちだぞ!」

「事実を申し上げているだけです」

「証明のためガルグイユを呼びましょう。遠距離攻撃は石の弾丸しか持ち合わせていない支援用の幻想種です」

「ふむ。面白い呼べ」

 玉座に座した国王は、頬杖を突いたまま面倒くさそうに返事をした。

「では国王陛下より許可を頂きましたので召喚いたします。召喚魔術は繊細なものガルグイユが呼べぬ場合は他を呼びます」

 俺は召喚魔術を行使するため息を深く吸い込んだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう
ファンタジー
【ちびっ子育成冒険ファンタジー! 未来の勇者兄妹はとってもかわいい!】 就活生の朱鳥翔斗(ショート)は、幼子をかばってトラックにひかれ半死半生の状態になる。 ショートが蘇生する条件は、異世界で未来の勇者を育てあげること。 異世界に転移し、奴隷商人から未来の勇者兄妹を助け出すショート。 だが、未来の勇者アレルとフロルはまだ5歳の幼児だった!! とってもかわいい双子のちびっ子兄妹を育成しながら、異世界で冒険者として活動を始めるショート。 はたして、彼は無事双子を勇者に育て上げることができるのか!? ちびっ子育成冒険ファンタジー小説開幕!!  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 1話2000~3000文字前後になるように意識して執筆しています(例外あり)  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ カクヨムとノベリズムにも投稿しています

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

処理中です...