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第41話登城と詰問
しおりを挟む幸い礼儀作法は問題ないようで、王の御前にまで進む事が出来ていた。
「では、ロシルド公孫イオン・フォン・ロシルドよ、此度の不手際の理由を陛下の御前で申せ……」
王の周囲に立つ老齢な男の一人が兄への詰問を開始する。
「はっ、申し上げます。此度の変異種モンスター……通称【暴竜】タイラントレックスについて申し上げたい事がございます。先ずは御配りする資料をご覧下さい……」
兄はそう言って資料を近衛兵に渡す。
近衛兵は順番に羊皮紙を大臣や官僚に手渡していき、手紙が行き届いた頃一人の大臣が目を見開いている。
それを疑問に思っていると……シャルロット先生が耳打ちして教えてくれた。
「将軍ね……ワンオフでなければ騎士の装備向上につながるモノ興味深々のハズよ。それに見てあっちは技研と生物学の権威ね……みんなこんなバケモノじゃしょうがないて思ってるハズよ」
「これは?」
王の家臣の一人が疑問の言葉を口にする。
「タイラントレックスの竜燐と堅殻のデータです。
ご覧いただいた通り、打撃・斬撃・刺突全ての物理耐性が極めて高い上、騎士や魔術師が攻撃手段として良く用いる、炎の耐性が極めて高く、逆に使い手の少ない氷と水属性が弱点であったと言う結論が出ており、冒険者ギルドが提示するところ……B級冒険者の四人組で勝てるかどうかと言う判定であるため当時対応に当たった、当家の騎士では不足であったかと……」
兄は理路整然とした態度で答弁する。
「では、騎士の力不足であろと?」
「そうは申しません。当時当家の非嫡子のシャオンの狩りの練習のため、特別B級冒険者のパーティーを雇用し当家の騎士二人、従騎士2名、元騎士の御者1名でビガ・ラプファングの狩猟に向かっており、途中町から煙が上がっている所を発見し救助に向かったのです。シャオンを連れてきておりますので、街での詳しい事はシャオンに答弁させていただきます。」
「ほう……」
大臣や官僚と思われる男達が、値踏みするような視線をシャオンに向ける。
「イオン様に代わりまして、現場で起きた事の事実を語らせて頂きます。私は村に着いた際、騎士と冒険者で部隊を別け、捜索に当たらせる事にし、私と御者は現場に残り市民の逃げ場を造る事にしました。」
「それではお主の命の危険があるではないか……」
男達の一人が声を上げる。
「私が何方かについていけば、判断が迷い足手まといになります。私は嫡子ではありません。私の命にそれほど大きな価値があるとは思えないのです。それよりも価値のある者はいますから……」
ここで俺は、お前たちがどうして兄を糾弾するのか知っているぞ? 勇者の所有権を兄から奪うために仕組んでいるんだろう? 俺はお前たちは違って貴族の責務を果たしてるんだよ! と煽っているのだ。
「そうか……貴様は貴族席の人間ではないがその身体に否、その精神に貴族としての誇りがしっかりと刻まれているのだな……」
紳士な家臣の一人は俺を褒める。俺は紳士に礼を言い説明を続ける。
「ありがとうございます。主人では話を戻します。
私と御者と見習い騎士一名で、中型含む約50頭ほどのモンスターを倒し魔除けの陣を敷き、両救出部隊の到着を待ったのですが、冒険者側の帰還が無く担当区域が繁華街であったため、騎士2名・元騎士の御者・私の合計四名で救助に向かいました。
他の者には順次避難をするように強く言明し、スタンピードの時間稼ぎと原因を究明するために向かったところ、タイラントレックスと遭遇。
従騎士一名が生死の境をさまよう事になりましたが、全員の最大攻撃で脚部の竜骨が露出しましたが、数分で再生したため囮を用いた遅滞戦術に移行し、何とか討伐に成功しました。」
俺の説明を聞いて驚愕の表情を浮かべ、声を上げる者も多い。それだけタイラントレックスの脅威を上手く説明できたと思えばいいか……
事実。軍関係者は、元々騎士団の隊長級を出さねば安心できない脅威だと言う認識は持っているハズだが、権力を持っているだけの人間や数字と書類だけを見ている文官たちにとって、脅威度は低くとらえていたのだろう。
「囮は誰が勤めのたのかね?」
大臣の一人が声を上げる。
「そのように勇気と実力を持った人物が居るのであれば、是非当家……いや騎士団に迎え入れたい」
「囮を務めたのは私です」
俺の言葉に大臣達は、「馬鹿な!」「騎士ですらない子供が」「嘘を言うのも対外にせいよ!」などとヤジが飛ぶ。
「事実です。証拠をお見せしましょう……国王陛下並びに皆さま魔術の使用を許可願えますか?」
俺は淡々と返事をする。
「もしや召喚魔術が使えるのか!?」
大臣の一人が声を上げる。
「はい。その通りで御座います」
俺がそう答えると周囲が騒めく……少し珍しい程度だと思っていたが騒ぐほどの事なのだろうか?
「嘘をつくでない。この場での偽証は最低でも爵位の降格! 爵位を持たぬ貴様では即刻奴隷落ちだぞ!」
「事実を申し上げているだけです」
「証明のためガルグイユを呼びましょう。遠距離攻撃は石の弾丸しか持ち合わせていない支援用の幻想種です」
「ふむ。面白い呼べ」
玉座に座した国王は、頬杖を突いたまま面倒くさそうに返事をした。
「では国王陛下より許可を頂きましたので召喚いたします。召喚魔術は繊細なものガルグイユが呼べぬ場合は他を呼びます」
俺は召喚魔術を行使するため息を深く吸い込んだ。
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