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第37話飛竜の運ぶ籠

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 眼前に居るのはいわゆる飛竜、ワイヴァーンが居た。ワニの頭に前足は無くコウモリの翼、一対の猛禽類の脚、蛇ような尾に、その先端には矢尻のようなトゲを具えたと表現される、ファンタジーの代名詞的な存在【飛竜ワイバーン】だ。それも四頭いる。
 だが全てが伝承通りと言う訳ではない。頭部はワニと言うよりはトカゲや恐竜だし、前足は被膜が貼り指が変化した哺乳類的な特徴はなく、どちらかと言えば翼竜に近く四つ足で立っている。体表は鱗と言うよりは滑らかな革に近く、触ってみればベスベしている。体温は低くない事から変温動物ではなく恒温動物なのだろう……

 広げた翼は15mを優に超えているものの、物や人を運べるとは思えない。史上最大級の翼竜ケツアルコアトルスで翼間が10~12m。骨質歯鳥類のペラゴルニス・サンデルシでも翼間が5m~7mであり、どの様に理屈をこねくり回しても、ジュラシック〇ークやワ〇ルドで翼間7~9mの翼竜プテラノドンらしき個体が、人間を持ち上げるのは不可能である。
 恐らく魔術を用いているのだろう。それでも重武装の人間と籠を運べる運搬力を持つがゆえに家畜化された竜種なのだ。

「イオン様、出立の準備は出来ております」

 飛竜を撫でていた騎士風の男が兄に声をかける。

「うむ。皆の者長旅になるが頼んだぞ」

「「「「はっ」」」」

 皆敬礼し兄の言葉に力強く答える。

「兄上彼らは……」

飛竜騎士ワイバーンナイトだ。体格と竜に好かれるか好かれないかでなれる才能の世界を勝ち抜いた者。その中でも魔術を使える精鋭だ」

 ゲームの設定にすら出てこないのが早くも来たよ……体格って……現実の競馬見たいに小さいほうがいいとかあるのかな……
 もし辺境や王都の情勢が安定しているのなら、こう言った家畜を用いて賭博をし上前を撥ねるのもいいかもしれない。確か古代ローマでは戦車競馬があったはずだ。近世の競馬や、競艇が受け入れられない訳がない!!

「公爵家の人間はみな自分の飛竜車を持っている。閣下に認められればお前も頂けるだろう……」

 俺の視線に気が付いたのか兄はそう言って励ましてくれる……

「まさか飛竜車に乗れるとは……超が付く高級品ですよね?」

 俺はそう言って兄を見る。

 前世で何度か北海道と沖縄に行った事があったが高度と言う現実感が圧倒的に違う。ジェット機は高度が高すぎるし窓が小さいので、あまり景色を楽しむ余裕が無かった。しかし、飛竜車は高度がジェット機に比べて低いので、麦畑や農村の田園風景を楽しむことが出来き、まるでフライトシュミレーター系のゲーム映像を見ているようで楽しい。

「確かに飛竜は何かとコストのかかる乗り物だ。だが圧倒的に時間を短縮できる。「時間は金では買えない」と言う言葉があるが現実はこうだ」

 【飛竜車ひりゅうしゃ】。それは馬車や牛車、ソリのように生物に車をけん引させる移動方法の一種であり、この世界では数少ない空の移動手段であり維持費はかなり高く、飛竜一頭で馬数匹分と言われる程の維持費がかかる。
 そのため【飛竜車《ひりゅうしゃ》】を持っているのは、金と権力を持っている上級貴族や大商人が、精々数頭から数十頭持っている程度だ。

 例えるなら馬車を高級車、飛竜車をプロペラ機と考えればその価格差を実感しやすいのではないだろうか……

「ただ。馬車より広くしてあるから飛竜が四頭必要で。オマケに飛竜の食事を積んでいるから、これ以上人間は載せられないのが難点だな」

 広めの室内だが、6人もいると少し狭く感じる。

「飛竜車でも王都まではそこそこ日数がかかる。精々勉学に励むんだな……」

 兄はそう言って自室に戻って行った。

「じゃぁ勉強しましょうか……」

 シャーロット先生の言葉で、俺は移動中車内では座学に励む事になった。

 旅の最中、飛竜の休息や食事トイレのため何度か着陸する事があった。その度に兄やシャーロット先生に実技を強請り、ボロボロになるまで鍛錬に励んだ。


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