上 下
37 / 55

第37話飛竜の運ぶ籠

しおりを挟む



 眼前に居るのはいわゆる飛竜、ワイヴァーンが居た。ワニの頭に前足は無くコウモリの翼、一対の猛禽類の脚、蛇ような尾に、その先端には矢尻のようなトゲを具えたと表現される、ファンタジーの代名詞的な存在【飛竜ワイバーン】だ。それも四頭いる。
 だが全てが伝承通りと言う訳ではない。頭部はワニと言うよりはトカゲや恐竜だし、前足は被膜が貼り指が変化した哺乳類的な特徴はなく、どちらかと言えば翼竜に近く四つ足で立っている。体表は鱗と言うよりは滑らかな革に近く、触ってみればベスベしている。体温は低くない事から変温動物ではなく恒温動物なのだろう……

 広げた翼は15mを優に超えているものの、物や人を運べるとは思えない。史上最大級の翼竜ケツアルコアトルスで翼間が10~12m。骨質歯鳥類のペラゴルニス・サンデルシでも翼間が5m~7mであり、どの様に理屈をこねくり回しても、ジュラシック〇ークやワ〇ルドで翼間7~9mの翼竜プテラノドンらしき個体が、人間を持ち上げるのは不可能である。
 恐らく魔術を用いているのだろう。それでも重武装の人間と籠を運べる運搬力を持つがゆえに家畜化された竜種なのだ。

「イオン様、出立の準備は出来ております」

 飛竜を撫でていた騎士風の男が兄に声をかける。

「うむ。皆の者長旅になるが頼んだぞ」

「「「「はっ」」」」

 皆敬礼し兄の言葉に力強く答える。

「兄上彼らは……」

飛竜騎士ワイバーンナイトだ。体格と竜に好かれるか好かれないかでなれる才能の世界を勝ち抜いた者。その中でも魔術を使える精鋭だ」

 ゲームの設定にすら出てこないのが早くも来たよ……体格って……現実の競馬見たいに小さいほうがいいとかあるのかな……
 もし辺境や王都の情勢が安定しているのなら、こう言った家畜を用いて賭博をし上前を撥ねるのもいいかもしれない。確か古代ローマでは戦車競馬があったはずだ。近世の競馬や、競艇が受け入れられない訳がない!!

「公爵家の人間はみな自分の飛竜車を持っている。閣下に認められればお前も頂けるだろう……」

 俺の視線に気が付いたのか兄はそう言って励ましてくれる……

「まさか飛竜車に乗れるとは……超が付く高級品ですよね?」

 俺はそう言って兄を見る。

 前世で何度か北海道と沖縄に行った事があったが高度と言う現実感が圧倒的に違う。ジェット機は高度が高すぎるし窓が小さいので、あまり景色を楽しむ余裕が無かった。しかし、飛竜車は高度がジェット機に比べて低いので、麦畑や農村の田園風景を楽しむことが出来き、まるでフライトシュミレーター系のゲーム映像を見ているようで楽しい。

「確かに飛竜は何かとコストのかかる乗り物だ。だが圧倒的に時間を短縮できる。「時間は金では買えない」と言う言葉があるが現実はこうだ」

 【飛竜車ひりゅうしゃ】。それは馬車や牛車、ソリのように生物に車をけん引させる移動方法の一種であり、この世界では数少ない空の移動手段であり維持費はかなり高く、飛竜一頭で馬数匹分と言われる程の維持費がかかる。
 そのため【飛竜車《ひりゅうしゃ》】を持っているのは、金と権力を持っている上級貴族や大商人が、精々数頭から数十頭持っている程度だ。

 例えるなら馬車を高級車、飛竜車をプロペラ機と考えればその価格差を実感しやすいのではないだろうか……

「ただ。馬車より広くしてあるから飛竜が四頭必要で。オマケに飛竜の食事を積んでいるから、これ以上人間は載せられないのが難点だな」

 広めの室内だが、6人もいると少し狭く感じる。

「飛竜車でも王都まではそこそこ日数がかかる。精々勉学に励むんだな……」

 兄はそう言って自室に戻って行った。

「じゃぁ勉強しましょうか……」

 シャーロット先生の言葉で、俺は移動中車内では座学に励む事になった。

 旅の最中、飛竜の休息や食事トイレのため何度か着陸する事があった。その度に兄やシャーロット先生に実技を強請り、ボロボロになるまで鍛錬に励んだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...