勇者を庇って死ぬモブに転生したので、死亡フラグを回避する為に槍と魔術で最強になりました。新天地で領主として楽しく暮らしたい

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第34話兄の実力その一端3

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バン! バン! ビュン!

 【薙ぎ払い】からその派生技の更に派生技である。
 【残響撃リヴォーブ・ドライ】の動作《モーション》を再現する。
 弧から円を描く【薙ぎ払い】とは違い二度円を描くように回転しながら前進し斬りつけ、最後に槍を大きく振りかぶって叩き付ける。
 【残響撃リヴォーブ・ドライ】は、一回転目より二回転目の方が威力が高く最後の叩き付けは、攻撃スキル【叩き落し】とは違い溜め時間はほぼ必要なく敵単体にかなりの間、防御力が低下する異常状態『破硬1』や行動が遅くなる『混乱1』を付与する事がある効果を持つ、【薙ぎ払い】派生技の三段階目である事からも、スキルの威力の高さと難易度が伺えるだろう。

 しかし、このスキルを持ってしてもまだ、イオンの防御を崩すほどの威力はないようだ。

まだまだッ!

「やぁぁぁぁッ!」

バン! ビュン! バン!

「――――ふんッ!」 

 スキルを使った。斬り上げ、斬り払い、突きの三連撃を全て木剣で軽々と防がれる。

化け物かよ……

「はぁ………はぁ……はぁ……」

 試験開始から数分立って息が切れて来た。攻めてばかりでスタミナのコントロールが甘かった。
 イオン兄さまに攻められた終わりだと言う考えの元、攻めに攻めいつもと違う戦闘方法バトルスタイルのせいで息が切れ始める、だが集中力も頭もまだ冴えわたっている。
 間違いなくノっている。雰囲気、波、テンション、運と言ってもいいそう言う精神的なモノのお陰で疲れは余り感じていない。
 けれど、勝負が始まってから、俺は一度たりともイオン兄さまに有効打を与えられていない。
 経験と技術、とそして何よりあの瞳によって、俺の攻撃が全て見切られ軽々といなされてしまう……しかし魔術が使えない今イオン兄さまの目を潰す手段は限られてしまう。

「確かにこのレベルの腕があるのなら、何れ単独で中型の竜を屠る事も出来るだろう……」

「まだです!」

 俺は構えた槍を振う。斬り上げ、斬り払い、斬り上げ。

バン! バン! バン!

「――――ぬっっっッ!!」

 イオンは呻き声を上げるものの、俺の攻撃を盾と剣で防ぐ。

 自分でも予想外な腕力で槍が振るわれ、今までより威力、速度共に間違いなく上昇している。
 全身が心臓であるかのように、ドクドクと鼓動するように膨らんで萎んでいるような感覚に襲われる。耳元に心臓があるぐらい大きな鼓動がし胸に痛みが走る。

ドーン! と言う轟音と共に稲光が起きる。

「落ちましたね」

「近そうですね……」

 騎士やメイド達は危ないから、早く終わって欲しいと思い始めていた。

「ふんッ!」

 ついにイオン兄さまが剣を構え攻撃を放つ。それは単純な突きの予備動作だった。
 構えるために剣を振った風圧が、俺の髪を巻き上げる。

 受けたらやられる……

 ゴーン! と言う轟音を立てて兄が天に掲げた木剣に雷が命中する。

 俺は全力で後方へ飛んだ。
 しかし、兄の突きはそんな生優しいものではなかった。

 あのタイラントレックス戦で見た【ヴォーパル・トラスト】に似ていたからだ。
 
 木剣の刀身が、マグマのような赤葡萄酒色ワインレッドに染まり、刀身からはまるで粉雪や蝶の鱗粉のような魔力光ライトエフェクトが舞い散る。
 刀身に風が集まり、ヒューッと言う風の音に次第にキィーンという金属音のような高い高音が混じったかと思えば、あっという間にゴウゴウと唸るような暴風の風音に変る。
 バチバチと雷による閃光が迸り、刀身を囲むように渦巻く。

 剣術指南役の騎士ですら、時発動に十数秒程度はかかってるのに、イオン兄さまは数秒でチャージが完了しその剣戟を放つ……

 ――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!




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