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第9話恐怖を飼いならす

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 そんな事があったが、期限はまだまだあるという事で俺は訓練をする事にした。
 武芸に優れなければジャスコやドンキにたむろしている田舎のヤンキーや、外国人の原種みたいな血気盛んな中世の男どもを御せる訳がない。
 ――――という訳で、高卒程度の学力でもこの時代の理数系ならば問題なく理解し回答する事ができるので、授業を終わらせて、礼節やマナー、手紙の書き方に交渉術と言った裏方の業務を覚えながら武芸に励んだ。

 何故か俺は馬車に揺られている。
普段は魔術の訓練でしか外には出ないのに、今日はなぜか武装した冒険者まで随伴しておりどこか物々しい雰囲気だ。

「先生。俺はなぜ馬車に乗っているのでしょう?」

「シャオン様。そろそろモンスターを狩りに行きましょう」

 中年に差しかかった前世の俺よりも、年上の武術師範の騎士にそう提案された。
 しかし、「遅くない? 提案するにしても馬車に乗る前にしてよ! もう断れないじゃなん!!」と心の中で思うもそれを口にする事は憚《はばか》られる。

「ラプファングにすらビビっている俺が、モンスターを狩れるでしょうか?」

 騎士は苦笑いを浮かべる。

「ハハハハハっ慎重なのはいい事だと思いますよ。自分を含めて戦う人間は臆病なぐらいがちょうどいいと思っています。もちろん上司が部下の前でビビりまくっているのは良くない事ですが、リスクを考えて不安材料を少なくして挑む方が良いに決まっています。それこそが人の上に立つ人間のするべき事だと俺は思っています」

 確かに彼の言う通りだ。

「不安や未知……そう言った恐怖につながるモノは良く実像よりも過剰に大きく認識してしまっている事が多いのです。試験や訓練と同じで場数を踏めば、その感情に馴れてその恐怖心は薄まりますが、私としては出来れば恐怖を飼いならして欲しいですね」

 恐怖を飼いならす?

「過剰に恐れず適度に恐れる事です。まぁ難しいですよね……先ずは場数を踏むためにラプファングなどの多数狩猟を行いましょう。あまりにも数が多ければ、こちらの冒険者が処理しますので安心してください」

 冒険者達四人は目礼した。

 装備は上位金属ハイ・メタル系の装備の前衛? が一人に、鱗鎧スケイメイルの部分鎧の軽装が二人、革鎧レザーアーマーの遠距離か高速アタッカーが一人。魔術師なしだと妥当な編成だな。

「よろしく頼む」

 社会人のクセですぐに目下の者に対しても、良く礼や挨拶をしてしまい。マナーの教師に怒られてしまう。
 
 冒険者達はビクッとしたが、一瞬で顔を伏せて短く「「「「はっ」」」」っとだけ返事をした。
 騎士を見ると苦笑いを浮かべていたので顔を反らした。

………

……



 目的地について冒険者達が周囲の偵察にでる。
 事前にエサをまいておいたので、撒き餌に掛かっているラプファング等の小型モンスターを狩りに行くためだ。カブトムシなどを取りに行った学生時代の夏を思い出す。
 昔は純粋に楽しめたが、年齢が上がるにつれて、一匹幾らと地域の夏祭りやバザーに出品する商品としか認識できなくなっていた。
 一夏でゲームカセット1~3本分以上は、余裕で稼げたのでバイトができなかった当時は大変助かった。

「居ましたよ。東に30分の地点にラプファングが約10頭」

「他はどうだ?」

 騎士が訪ねる。

「こっちもほぼ同じですね」

「右に同じく」

「こっちはエサすら無かったです」

「騎士様どこへ行きましょうか?」

「……では、一番報告が早かった東へ向かう従騎士と騎士の3人は馬を守ってくれ俺と冒険者で若を守る」

「「「了解」です」しました」

 こうして俺の公式デビュー戦はスタートした。


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