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第5話公爵家の御落胤
しおりを挟むどうやら屋敷で俺は、煙たがられているようだった。
どうやら俺の父親は公爵家の長男らしい……
おっと羨ましいとか勝ち組と思ったやつがいるのなら相手になろう。俺は妾であるメイドの母と公子である父との間に生まれただけで継承権は持っていない。日本風に言えばご落胤とか、隠し子、妾の子とのなるのだろうか?
まぁ、聞き耳を立てていた数日で耳にした範囲内でも、それだけの情報が入手できたので、もう少し念入りに情報収集をしていれば、細かい情報が手に入って居たのかもしれないが、生憎と俺にはそんな余力はなかった。
俺は婚外子(非嫡出子とも言う)であるため、この国では国法ではなく慣例や慣習によって、正式には継承権がないないとされている。俺だが古代から中近世まで脈々と続く、そう言った要らない子の使い道は決まっている。
政略結婚や断絶した他家に養子として入って家を乗っ取ると言う……日本では主に徳川将軍家が好んで用いた手段だ。
まぁ要するに他家に出しても恥ずかしくないように、高等教育が施されている。剣を始めとする武芸に魔術、馬術に歴史や芸術、音楽、宗教学、政治までありとあらゆる分野の物事を指導されている。
それは将来、公爵となるでらろう腹違いの兄にとって、優秀な駒を育成しようとする教育の一環だろう。
全く、ゲームで冒険者をしていたシャオンにとっては、こんな座学よりも武芸に秀でた方が良いと言うのに……と言うかなぜシャオンは冒険者をしていたのだろうか? それが判らない。
――――と言うかどうして、この中世ヨーロッパ風の世界でも、有数の教育を受けているハズのシャオンが、冒険者をしていたのだろう……
俺がそんな事を夢想していると……
「何をしている……」
その声音には興味や関心と言ったコチラへのプラスの感情はなく、ただ己が血肉を分けた兄弟がいれば、そういう質問をするであろうと言う一般論で動いている。機械のような冷たくも高圧的な声音だった。
俺はまさか本邸でもないこの屋敷に、腹違いの兄であるこのイオンが居るとは思わなかった。俺の記憶がある中でも数少ない邂逅である。
「お兄様いらしていたのですね。事前に先触を遣わして頂ければ、お出迎えも出来ましたのに……」
すると、夜空のように黒い男にしては長めの長髪を靡かせてこう言った。
「フン。この屋敷の所有者でもない貴様に許諾を得る必要はないし、貴様に出迎えてもらう必要もない……それと貴様は俺の質問にも答えられないのか?」
確かに彼の質問には答えられていなかった。確かにそれは俺の落ち度だ。
「申し訳ございません。お兄様、今ちょうど花壇の花を見て物思いに耽っていた所です……」
誤魔化しても仕方がないが、本当の事を言っても気が狂っていると思われかねないので、誤魔化す事にした。
「貴様程度の人生で物思いに耽るとは……軟弱者め! それでも公爵家の血が流れた男子か……」
ハリポタのスネ〇プ先生を若くイケメンにしたような顔が、怒りに染まる。
「申し訳ありません」
「謝罪は出来て当たり前の事だ。重要なのはその過ちを二度と起こさない事にある。今夜の食事の時にでも時間があれば話を聞いてやる……大方モンスターと戦う術の事だろう」
なぜ、次期公爵と目されるような人物がモンスターとの戦闘について詳しいんだ? 俺は兄のアドバイスよりも座学を減らしてほしかったので、意見をしようと口を開いた。
「ですが……」
俺の言葉遮るようにして、兄はこう言った。
「俺よりも優秀な冒険者は、そう多く居ない事は貴様とて知っていよう……何故なら俺は、Sランク冒険者なんだからな……」
Sランク冒険者!? ゲームにおいて名前を含めても示唆された人数は僅か数人の最強NPCと同等格と言うのか……
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