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第4話攻撃スキルの実験

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 俺はこの満身創痍のモンスター、ラプファングを使って実験をする事にした。

 先ずはゲームで設定されていたのコンボ以外の動きが取れるかだ。

 ラプファングの噛みつき攻撃を、右方向に回避行動ステップで避けながら俺は槍で【薙ぎ払い】を行う。

 ザシュ!

 見事。 ラプファングの胴の皮を切り裂いて怯ませる事に成功した。
 ラプファングは、小型モンスターに分類されるものの成長すれば中型種のメガ・ラプファングに等級が上昇するため、舐めて相手出来るモンスターではない。

 このコンボは本来、ランスには存在しないコンボであり、右方向に回避行動ステップを取る太刀の基本アクション【移動ステップ斬り】を真似しただけだ。
 どうやらこの世界は現実世界と同じく、コンボで攻撃パターンが縛られている訳ではないようだ。

 コレは朗報であり、また同時に悲報でもある。
 ゲームではAIが決められた行動を、優先順位に従って行動していただけなのでいわゆるメタやハメ技、敵の攻撃パターンを覚える事で対策を取る事が出来ていたが、相手は野生動物? 野生モンスターだ。そう言った決まりは存在しないので、現実世界と同じく運動神経や、武芸のセンスというものが重要になって来る。

 幸い、弱兵と呼ばれる尾張の戦国武将、織田信長も他の兵達よりも長い長槍を持たせることで戦力を増強させた、だから才覚が無くてもある程度戦って行けると言う点で、母親が買い与えてくれた武器が槍と言うのは、運が良かったと言えるのかもしれない。

 まぁ、ゲーム序盤で死ぬ時も同じ鋼の槍を装備していたので、俺……シャオンが槍をメイン武器として使う事は、決定されていた未来と言えなくもないので結果オーライと言うのが事実だが……

 そう言う知識が無ければゲーム時代と同様に、太刀やボウガンを使っていたと思うからな。

 ゲーム表記ではスキルと表記されていた【疾風突き】を、今度は試してみる事にした。
 ゲームのフレーバーテキストによれば、

『目にも止まらぬ素早い動きで、先制して敵を貫くが素早さの分威力が低下する』

 ――――との事で、要約すれば攻撃速度+1されて、攻撃発生フレームがかなり短くなるが、デメリットとしてダメージが0.8倍になると言う効果があるスキルだ。

 フレーバーテキストによれば、目にも止まらぬ素早い動きとあるので脚に魔力を込めるイメージをして、高速で突き攻撃を放つ。

グサッ!

 槍の穂先が緑光に発光しているので、どうやらスキルは正常に発動したようだ。

 どうやら出血のせいで意識が朦朧としているのか、ラプファングの動きが鈍くフラフラとし始めた。

「そろそろ潮時か……」

 ゲームでは武器によって殴る回数は変わるが、十撃未満で死にかけているモンスターを見ると、野生生物としてはかなり脆弱に感じる。恐らくは、スキルを使っているのでゲーム的に言えば攻撃力が高いと言う事だろう。

 ラプファングは地に伏せる様に倒れる。

 倒した……のか……

──『レベルアップ』。

 どっと疲れが込み上げてくる。初めて明確な殺意をを持って大きな生き物を殺した。当然、蟻や蚊、ゴキブリ程度なら遊び半分や、うっとおしい気持ちが悪いと言う理由で殺したことはある。なんなら鳩や猫に石を投げた事もある。

「『ステータスオープン』!」



====================

名前 シャオン 

種族 ハーフエルフ 

ジョブ 槍使い Lv6 ←【レベルUP】

次のレベルまでの必要経験値xxx 

スキル 

【槍術】 Lv2 ←【レベルUP】

 →槍や棒状の武器を使用する際にステータス補正

・【疾風突き】 Lv2 ←【レベルUP】

 →目にも止まらぬ素早い動きで、先制して敵を貫くが素早さの分威力が低下する。※スキル熟練度で効果が向上する。 魔術属性『風』物理属性『刺突・斬撃』

・【突進突きチャージランス】 

 →槍を構えてスタミナの続く限り速度を上げ当て突撃する。移動能力が上昇する代わりに、視野と旋回性能が低下し距離が開いているほど威力が上昇する。※スキル熟練度で効果が向上する。魔術属性『風』物理属性『刺突』


【剣術】Lv1

【盾術】Lv3

【鑑定】Lv1

【魔術】 Lv3 
 
【召喚魔術】Lv2

====================



「随分苦戦していたみたいだけど、無事仕留められたのね……」

 女給服にマントを羽織った姿の母が、俺の近くに駆け寄って来た。

「見ていたなら助けてよ……」

「嫌よ。血で汚れるしエルフは魔術が得意なのよ? それじゃぁあなたのためにならないじゃない」

 確かにハーフとはいえヒューマン種である俺と、純血種と思われるエルフとでは基本的な適性も戦闘スタイルも変わってくる。
 だから魔術戦闘主体のエルフの戦闘を見ても、参考に出来ないと言いたいのだろう……ハーフ種がゲームで人気だった最大の理由を、この世界の人間は知らないようだ。まぁまるきり同じ訳ではないので、ゲーム通りだったら儲けものと言うとこか。

「さ、捌くわよ……」

 母は、サバイバルナイフのような刃物を持ちだした。

「捌くってコイツを?」

「そうよ。売れる部位は調べてあるから、さっさと剥ぎ取りの練習をしましょう。このまま持って帰ってもいいけど、血肉の匂いでどんなモンスターが寄って来るか分かったものじゃないしね。出来るだけ血肉の匂いをさせないようにしないと」

 この世界はゲームではない訳で……狩猟後の解体も全てやらなければならない。
 詳しくは言いたくないが、今晩メシを食う事は出来なかったとだけ言っておく。


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