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第EX1バイト先ざまぁ 上
しおりを挟む8時30分。
青年と言って差し支えない年齢の店長は、愛車の黒いマツダロードスターRFを店の後にある。責任者用の駐車場に止め、カードキーを使い警備会社のシステムを解除してから、店の施錠を物理鍵で解除する。
近所に迷惑になるぐらい大きな解除音を立て、警備システムが解除されたことを青いランプが回り知らせる。
「ちっ! 朝っぱらかうるせぇなっ……」
二日酔いのせいで大きな音が鳴ると頭がガンガンして痛く、その痛みと二日酔いの不快感が彼の苛立ちを助長する。
店長は悪態をつきながら丸いドアノブを回し、金属のドアを引いて店内の事務所に入室する。
丁寧に閉めなかったお陰で、ガンと思い音を立ててドアは閉まり、新聞受けがその衝撃で開き店長のアキレス腱を直撃する。
「痛っっっ――――てっぇぇぇぇえええっ!」
店長は痛みに悶《もだ》えながらも椅子に座る。
荷物……とは言っても鞄一つを安い金属製の椅子に乗せ、台所のある方へ歩いて行く……
「あ゛あ゛あ゛あ゛だりぃぃいいいっ~~熱いコーヒーでも飲んで気持ち切り替えますか……最悪寝ればいっか……今日のシフトは……店内2、タイヤ1、ピット3……ギリギリじゃなねぇか……どうしよっかなぁ~~~」
インスタントコーヒーの粉を、マグカップに淹れ湯を注ぎスプーンでかき混ぜながら、店長はアルコールで鈍くなった脳を働かせた。
「あ、そう言えば昨日、エリアマネージャーと店の女の子達と飲みに行く前に、あの高卒フリーターに仕事押し付けたんだった。アイツが今日働けば俺楽できるじゃん!」
店長は、名案を閃いたと思っているようだが……昨 日では「鍵はいつも通り預けておくから、明日は早番……昼あがりでいいからいつも通り朝一番に来てね~ それじゃぁよろしくぅ~~」と言っている。
鍵が開いていなかった時点で、事態の不自然さに気が付くべきだったのだが、アルコールで酔った頭脳では正常な判断は下せなかったようだ。
まぁどちらにせよ。店長の条件通りでも『昼』には上がってしまうので、店長が休めるのは後3時間程度なのだが……
「あー思い出したらムカムカしてきた。アイツ、鍵を開けて置けって言ったのに、鍵開いてねぇし、店内と事務所の掃除も出来てねぇってどういう事だよ!」
店長は木製のドアを開け、まだ電気の付いていない店内を歩いて行く……
「あのドアホどこにいるんだ? メシでも買いにコンビニいったのか? それともトイレか?」
どうやら店長には、一人でやれば一晩中かかる程度の仕事を押し付けた自覚はあるようで、家に帰っているとはつゆほども想像はしていないようだ。
コンビに行ったとしても10、20分もすれば戻るだろ……と考えて先ずはマグカップに入ったインスタントコーヒーを飲み、高卒フリーターが戻って来るのを待った。
しばらく待っても、あの高卒フリーターが戻ってくることはなく、代わりに売り上げが悪く『副店長』に降格処分された。
辛いラーメンの上に乗っているネギ……白髪ネギのようなツンツンとした頭髪の鏑木《かぶらぎ》と言う中年男が、建付けの悪い団地に付いているようなドアを開け入って来た。
「おはようございます。店長」
口調こそは丁寧だが、年下の店長を敬っている雰囲気は微塵《みじん》も感じない。
「おはよう副店長……」
店長もオトナだ。多少イラっとしても社員には正しい態度で接する。そうしないと、訴えられられて面倒ごとになると実体験で知っているからだ。
荷物をロッカー(とは言っても二人中に入ればパンパンになる程度の広さで、店に来てから仕事着に着替えるなんてことは難しい)に入り、上着と荷物をロッカーに突っ込んで、仕事道具のノートパソコン(自前)を平社員に比べれば広い。学校の教師が使っているような机の上に置いた。
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