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第39話決闘の後始末

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「ユーサー、私に何か話す事はないか?」

 ある晩の夕食ディナー中の事。食堂の中央を陣取った10メートルはあろうかと言う長机で、家族と一家団欒《いっかだんらん》を楽しんでいると父がそんな事を言った。

「一体何のことでしょう?」

 俺は心当たりがあり過ぎるので、取りあえずシラを切る事にした。
迂闊うかつやぶを突いいて蛇を出すつもりはないからな……

「ふむ。どうやら俺に対して隠し事が多いようだな……」

 俺はスヴェの方を見る。

「~~~~」

 俺の両親にチクった事を誤魔化すように口笛を吹いている。

「スヴェは全部話してくれたぞ? さぁ全部話せ……」

 父パウルの説得だが……本当にどれの事だろう? やらかした記憶が多すぎて本当に何のことを言っているのか分からない。

「……」

 俺が何の事だろうと思い思い出しているのを見て、話したくないから黙っていると判断したのだろう……パウルは机をバンと叩いて圧を掛ける。
 俺が黙っているのを見て業を煮やしたのかパウルは怒鳴った。

「お前は人をボロボロにして反省の一つもしないのか!」

 あぁ……その事か……

「今回自分の不注意もあり、曲がり角で3人のリーダーと衝突。
私は尻餅をつき相手はよろめく程度でしたが、私から謝罪。
謝罪したにもかかわらずいちゃもんを付けらられ、【決闘】を申し込まれ止む無く許諾し勝利。
 負けたにもかかわらず文句を言われたため【無礼打ち】に処したまでです」

 俺は淡々と事態を説明する。

「なぜ決闘を受けた?」

「決闘は王、聖職者、貴族、平民プレブスである有産市民ブルジョワジー無産市民プロレタリア、従属平民、根無し民、遊牧民、奴隷の身分の内、従属平民以上が行使できる権利であり、これを断る事は貴族階級以上では一般的に恥であると、家庭教師ガヴァネスから習いました。そのため決闘を受けたのです。
通常決闘をする前に条件を決めるものですが、特にそう言ったものがなかったので、怪我と今回の件を他言無用にする事で手打ちにしました。
今回の約定を破った以上、報復する必要があるようですが……」

 あいつらを許したせいで余計な問題が出来た。
無用な優しさなど見せずにいっその事殺しておけば良かった。

「理由は分かった。なぜ報告しなかった?」

「簡単です。私が立案した士官学校の評価に響くからです。
守るべき主君……その子供に危害を与える奴らを教育する価値などないと、選民思想に取りつかれたお爺様なそう言うでしょう。
だからボコボコにしてバレても双方手打ちで済んでいるんだから、余計な事をすると恥ずかしいようにしたまでです」

はぁ……俺は溜め息を吐くと、白磁器に入った水を飲み干した。

「貴族には自領の領民を管理する権限があり、貴族に対して暴言・暴行などを行った場合【無礼打ち】にする権利がある。
貴族の子弟も範囲は少ないですが、この権利を慣例法として有しています。
もしこれをお爺様がお使いになれば、彼らの家族ごと首が飛び、士官学校やその他の計画も露見してしまう恐れがあったので私で処理しました。
お父様の理想論は大変素敵なものですが現実を見てください? 
身分は明確に存在し、それが無くなったとしても、所属している組織や金や資産で新たな身分は産まれ差は産まれる事でしょう……」




「確かにお前の言いたい事は分かった。コレからはやったことは私に報告するように……すまなかったなお前が考えた策を無駄にしてしまって……」

 父は申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる。

「良いんです。僕もお父様もミスをして成長していくものですから……僕は気分が悪いので夕食はここまでにします」

 そう言って俺は食堂から抜け出そうとすると……

「お前には苦労をかける……明日にでも城下町で息抜きでもしてこい。
 金の心配はするなお前のやりたい事を応援する」

「ありがとうございます」

 俺はそう言って食堂を後にした。


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