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第38話士官学校の問題2
しおりを挟む「それは誠かね?」
今まで黙っていた騎士が声を上げる。
「俺が何を言っても信じないでしょう? そこに本人が居るんだ聞いてみればいい」
不味い。不味い。不味い……キラーパス過ぎるでしょ!
「本当なのですか?」
恐る恐る騎士は尋ねる。
「本当だ。ただ向こうも子供、俺の攻撃で全員骨折以上の怪我を負っている大事にするつもりはない」
俺の発言を聞いて教師役の騎士たちの顔が青ざめている。
「し、しかし……」
「くどい……」
俺の一喝で騎士達は黙る。
「それでデニス、今更その件を持ち出してどうしようと言うのだ?」
「騎士道……国家と公爵に尽くす事を教える心の教育をするべきかと……」
愛国教育と言う奴か……別に反対はしない。
「許可しよう。正し読み書きの授業に混ぜる。
書き写したり読む本の内容を騎士道物語と、名作文学や巷で流行っているモノに変えろ内容は君に任せる」
そう言って国学者を見る。
「はっ。承知しました。若。私からも良いでしょうか?」
国学者は発言の許可を求める。
「なんだ?」
「士官教育の一部を民に施す事はお考えでしょうか?」
国学とは言っても江戸時代中期に勃興した学問と類似しており、は国語学、国文学、詩、歴史学、地理学、神学に及ぶ点は同じである。
「無礼な!」
騎士の一人が剣に手を掛ける。
「天にまします我らの神々は、我々に天命を与えていると言う。
その天命を見つける御助力を賜りたいのです」
「ふむ……」
「簡単な事で良いのです。簡単な読み書き計算が出来れば商人や民は賢くなりより国は発展するでしょう……」
彼は何一つ嘘は言っていない。教養が高ければ国は発展する……だが貴族社会は崩壊へ進んでいく。それは世界史を見ていれば当然のように理解できる事柄だ。
明治維新を支えた薩摩・長州・水戸は教育によって優れた人材を輩出した。特に徳川御三家でありながら幕府と天皇で問題があれば、天皇に付くと言った問題児水戸徳川家が作り上げた水戸学(天保学)が産み出した。
尊王攘夷思想(王を尊び、夷を攘う。この場合。天皇を尊び異国を払うそのためには幕府が邪魔と言う考え方)のような不都合な思想が形成される可能性もあるので、出来るだけ天下万民への教育は避けたい。
なによりそこまで金がない!
「俺は民全員が学がある必要はないと思っている。ただ親の仕事が天職であるとは思っていない。農地を継げない次男三男は多いからな……しかし現実的な問題として民に教育を施すほどの金はない。民が勉学に生を出せる程生活にゆとりがないのだ。だからまずは治安を安定させる。
そのために兵を率いる士官を育成しているのだ。
分かってくれマルクス……」
「はっ! このマルクス、若様の御意思を全て理解したつもりです!
士官学校で実績を作り、民が職の技能を学べる学校を作るつもりなのですね!」
「あ、……うん」
ここまで勘違いされるのか……俺は少しいたたまれない気持ちになった。
「俺からも一ついいだろうか? 三人を倒した時に俺は一人を体術で倒した。だから怪我をしないためにも体の動かし方を覚えるべきだと思っている。しかし時間がない事も事実だそこで試験的に魔術の授業の裏でやろうと思っているのだが……どうだろうか?」
「私も行うべきかと……騎士は武器を落とした時に弱いと言われていますからそこは、兵と共に改善するべきかと……」
デニスの一言で反論は無いようだ。
「では教師を見繕うとしよう……他家の者でも冒険者でもだれでも構わん良い教師が居れば遠慮なく推薦してくれ……」
俺の一言でざわざわと相談し始める。
「……あの~」
若い騎士が声をだした。
「若が教えるのでは駄目なんでしょうか?」
恐る恐ると言った様子で声を上げた。
「俺も人に教えられるほど上手くはない……そうだ! 一人だけ居たぞ! 適任者が名をマリーネ・マグヴァレッジと言って俺の子守女中《ナースメイド》をしている。剣と槍がダメで騎士は諦めたが格闘技に優れている。本人と父上に確認を取らねばならないが……それまでは各自で素手の格闘を教えてやってくれ……あと教師も探してくれ! 本日は以上とする」
――――こうして士官学校の問題はまた一つ。解決されることになった。
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