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第37話士官学校の問題1

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 俺は教師役の騎士と一般教養の教師として雇っている。領内の国学者を集め職員会議を開いていた。

「皆の者集まって貰ってありがとう。
今回会議の議題は、約一カ月経過し生徒である、小姓ペイジ従騎士エスクワイアに指導するにあたって、生じた問題やその解決方法を共有し、より早くより優秀な騎士や士官を育成する事に繋げたいからだ。
報告の後に議論をし結論を出す。この場で出なければまた来月の議論に回す。公爵家で雇っている秘書官が議事録を取っているから安心して発言してくれ」

 俺は白紙の羊皮紙を配り、疑問に思った事や自分に有益だと思った事をメモするように促した。

「では私、レイモンドから報告させていただきます」

 レイモンドと名乗った騎士の方へ視線が集まる。

小姓ペイジの中でも年齢や技量の差があり、とても一塊に指導する事は出来ません。そのためある程度能力の均一な小姓ペイジ同士を指導させて頂けないでしょうか?」

 現実世界でも新兵や生徒として、十把一絡げに指導していても飛びぬけてくる奴は要る。そう言う奴は飛び級していく事が多いので海外では問題にならないが……日本ではそう言う訳には行かなかったが……ここは異世界。やっても問題ないか……

「皆はどう思う?」

 俺が意見を述べれば、他の者は意見を言いづらくなってしまう。俺が発言した事でそう言う良い意見を黙殺する事になるのは非常にもったいない。

「そうですな……今までも実力主義を貫いてきたのです。
年齢で班を決めるのではなく実力で分けるのは如何でしょう?」

 発言をしたのはマイクと言う白髪の老騎士で、若い頃は戦場を人馬一体の様相で駆け抜け戦場を荒らした老兵であり、引退していた所に声を掛けた。基本的に小姓ペイジはこう言った引退騎士が発掘してくる。マイクは孫娘を溺愛していたので説得には苦労したが、金銭で殴って黙らせた。

「マイクおう。しかし実力と言っても何を基準にする? 
剣は得意でも勉学が苦手なモノも居る……それでは、集団教育を実施しただけに留まり、若様の発案した士官学校の理念には遠く及ばない……その点はどう解決する?」

 暗い赤髪の青年騎士フェルディナントが声を上げる。彼は子爵家の三男で勉学にも優れ騎士を目指した若き才覚者で、貪欲に学ぶ意思を示し、盗賊退治でも率先して先陣を切る様から若獅子ウンジューネリオンと仇名されている。

「若き獅子よ。若様は今すぐ結論を出す必要ないと申されている。
直ぐに対策を行っても失敗する可能性があるからだ。それが分からぬお主じゃなかろうて……」

「ではこうされるのは如何でしょう? 小姓ペイジにも従騎士エスクワイアの垣根を取り払い完全能力主義にするのです。
剣、槍、弓、馬の武の四科目。読み書き、計算、戦略の文三科目に魔法の一科目を入れた八科目で評価をし、全ての授業を1~5段階の能力別に振り分け、一定以上の能力で合格したら上の授業へ昇格していくシステムはどうでしょう? こうすれば能力の不均衡化は緩和され、剣がだめでも勉強はできる奴など一目両全となります。こうすれば部隊長を任せる事が出来る将かも直ぐに分かる事でしょう……」

 発言したのは、細身のイケメン騎士で確か弓が上手いとの事で引き抜いて来た男で名前は……そう! エルヴィンだ。

「確かにそれならば、従来の能力主義をそのままにしている」
「得て不得手が主観ではなく客観的に分かるのは良い事だ」

 ――――と皆肯定的である。

「お恥ずかしながら私は、剣術が不得手で弓術と馬術で何とか騎士の末席を汚させて頂いている身……私の様に苦手なまま騎士となられた方も多い事でしょう……しかしコレからの騎士にはある程度何でもできる事が求めらえるでしょう……だから後輩たちにはそう言う思いはしてほしくないんです」

「騎士エルヴィン。貴殿の思いは分かった。恥ずかしながら私も勉強は苦手でね……昇進するたびに本を借り友や先輩に教えを乞うた者だ」

 ――――と剣狼騎士団団長のジョルジュ・セオドア・タイロン・ラシア=カフクス二重騎士爵も理解を示す。

「待ってくれ……」

 この議題が終わりかけたところで声を上げたのは、アイスマンと仇名さる大騎士。デニス・ベルカンプだった。

「俺は二つ科目を追加した方が良いと思っている。先日士官学校の生徒が若様に手を出した」

 ちょっとおおおおおおおおおおおおおおお! 何余計な事言ってくれてんのぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!



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