7 / 56
第5話魔法の師匠はロリ系美少女
しおりを挟む今日はいよいよ魔法教師が来る日だ。
この世界に生まれ3年、初めて言った我儘が叶う時が来た! (と言っても真面に話せるようになったのはつい最近だがw)
魔法習得は特に初めの一回が重要との事らしく、失敗したり未熟な知識で魔法を発動させると変なクセがつき、その後にもクセの矯正が必要になったりして、プラスな事はないらしい。
だから、魔法が使える父と母も家の魔法使いにも教えさせず、指導のプロを招聘したのだ。一流の選手が一流の指導者である事は、非常に稀だと言う事は現実世界のスポーツを見ても明らかだ。
さて、どんな人物が来るのか非常に楽しみだ。
子守女中達の予想は、引退した冒険者との事だ。
「騎士や子爵などの下級貴族でない公爵家が、卑しいだけの冒険者を跡取りの教師に据えるのはありえない」と、子守女中の長である保母女中のババアが言っていた。
まぁそれはそうだろう。
幾ら給金が良いとはいえ、身分がしっかりした、人物ではないといけないと言う問題があるので、俺の予想は政争で負けた元宮廷魔術師か、両親が冒険者をやっていた頃の知り合いやそのツテと言うのが妥当な線ではないだろうか?
客間女中に呼ばれて、表にある応接間に行く。
予想を裏切ってそこにいたのは、旅装束と思われる茶色い外套を着た、小柄な少女がソファーに腰かけている。
外見の年齢は前世で言えば中学生程度、贔屓目で大人に見ても高校生程度でしかない。
処女雪のような透明感のある白金色の腰まで伸びた長髪は、ネコのような癖っ毛のようでフワフワとウエーブがかかって、毛先はクルリとカーブして跳ねている。
顔立ちは卵型で綺麗系なのだが、その雰囲気のせいかカワイイ系の印象を受ける。
青みがかかった灰色の大きく、クリクリとした瞳が何とも可愛らしい。
手荷物は、小さな旅行カバン一つと、身の丈程の大きさの錫杖(仏教の傘を被り各地を修行している。遊行僧が持っている。一つの大きな円環に小さな円環が四つ~十二個程度着いた杖の事)のような大きな杖だけだ。
見た目で判断するのはよくない。この世界には魔法も異種族も存在する。元の世界のように人類は一種だけではないのだ。
「申し訳ありませんが、先にお茶を頂いています」
「長旅でお疲れでしょうどうぞ休憩ください」
「言葉が達者なのね。人族の子供って皆賢いのかしら?」
そう言って、ソーサーの上に乗ったティーカップを数本の指で、摘まむように掴むと口を湿らす程度飲んだようだ。
「いい茶葉を使っているのね、美味しいわ」
「貴女が魔法を教えてくれる先生ですか?」
俺はドアの前に立ったまま少女に質問する。
「えぇ。私がアナタのお父様……パウルから依頼された魔術師よ」
この世界では魔法とは、権力の象徴であり、歴史の本を読んだ感想から言っても宗教と密接に結び付いている。
この世界は伝統的に魔力を持つものを重用し、高位の貴族ほど強い血を掛け合わせて強い子を作る。
多くの場合、魔力の強さは家柄に比例する。
例え時には近親相姦になったとしてもだ。
だから魔術師はほぼ例外なく、魔術師の両親の間からしか生まれない。この国で魔法を使える血統は貴族か騎士、聖職者のなどの庶子など貴族に連なるものぐらいだ。
人間種以外の人類種は、魔法が使える事が多い。だが、彼女の容姿を見る限り異種族らしさを感じない。
無論本物を見た訳ではなく、書物で見た伝聞なので俺には判断する事は出来ないのだが……
「そうでしたか。申し遅れました私は、ノーフォーク公爵家長男パウルの長子。ユーサー・フォン・ハワードと申します。……先生今日からご指導ご鞭撻のほどを、よろしくお願いいたします」
そう言って教えて貰う側としての礼節を言葉で表す。
「パウル! それにシルヴィー! この子面白いね。
それで私が教える生徒はどこ?」
背後の開いていたドアからこの館の主であるパウルと、その夫人であるシルヴィアつまりは今世の父母が、従者を伴って客間に入室する。
「スヴェータそれはね。この子よ!」
そう言ってシルヴィアは俺を手に抱える。
「シルヴィーこの子……ユーサー君の挨拶は完璧だと思うけど……魔法の理論が理解できる知性がある年齢じゃないでしょ? 公爵公子夫人にいう事じゃないけど、私まだ現役だから高いわよ? レディズ・コンパニオンが欲しいって訳でもないんでしょ?」
後で保母女中に聞いたところ、レディズ・コンパニオンとは、宮廷の女官のような仕事で、雇い主と一緒に時間を過ごし、話し相手となり、雇い主が客をもてなすのを助けたり、時には社交行事に同行する事でお手当を貰う……困窮した貴族の妻子を救済する数少ない仕事の一つだという事だ。
他だと家庭教師、女学校の経営者や教師、文筆家、子供がいれば、乳母などの仕事があると言う。
「もちろん。家格が低いとは言え私も貴族の娘、スヴェータに心配されなくても友人ぐらいは居るわよ。それにこの子が言った初めてのワガママだもの。例え無駄になったとしても良い経験じゃないかしら?」
――――と母は豊かな胸を張って言い切る。
スヴェータもシルヴィーも確か愛称だったハズ……スヴェータは東ヨーロッパに広く分布する。スラヴ系民族の名前のスヴェトラーナの愛称だったハズ。どうやらこの世界でもポール、ピエール、ピエトロのような言語による。同名の発音変化があり、愛称や仇名で全く違う名前になるのだろう……全く面倒くさい世界だ。
「パウルはそれでいいの? 基礎が使えるようになるだけでも、結構時間かかると思うけど……」
スヴェータは心配そうな表情でパウルを見る。
「何心配するな、愛しい我が子のためなら金など惜しくはない。
遊ぶ金とは違い技術は身になり盗まれる事は無い財産になる……それにスヴェが居れば、シルヴィーも喜ぶしな……ッと!」
バン!
スヴェータは、ソファーから立ち上がり、白金色の長髪を靡かせて、パウルに向かって抱き着いた。
俺はチラリと母の顔を見る。
ゴゴゴゴゴ――――。
画風と言うか作風……と言うか表現媒体体まで違いそうな擬音が、母親の背後に見えた気がする。
母親は目が座って、瞳孔が開いている。
いわゆるヤンデレと言う奴なのだろう。きっと冒険者時代にイロイロあったのだろう……父さんイケメンだからなぁ。
だが母さんも本気で怒っている訳ではないようだ。
「パウル! ありがとう! 私精一杯頑張るね……」
スヴェータの身長差も相まって、大人と子供と言った身長差だ。何せ父親であるパウルは目算ではあるが、180㎝を超える高身長のイケメンだからな。
「改めまして、スヴェトラーナ・アレクサンドロヴナ・ポクロンスカヤと言いいます。前にパウルとシルヴィー……君の両親とはパーティーを組んでいた事があって、その縁でキミの魔法の教師をする事になりました。難しい事もあると思うでも一緒に頑張って行こう!」
やっぱりロシア系の名前なんだ。名前。父名の女性系。家名の順になっている。髪色からしても北国出身なのかな?
スヴェータ改め。スヴェトラーナは、そう言って俺に手を差し出す。
「はい。スヴェトラーニャ」
俺は幼い子供のカラダのせいか、舌が上手く回らず名前を噛んでしまう。見る見る顔が熱くなるのを感じる。
きっと羞恥心で顔は真赤に染まっているのだろう……
「あはははは」
スヴェトラーナは、俺が噛んだのが可笑しいのか、ゲラゲラと腹を抱えて爆笑している。
両親もクスリと笑い。可愛いモノを見る目を向けてくる。
「笑うのはひどいと思います」
「ごめんごめん。私の名前難しかったね。スヴェでもスヴェータでもラナでも、何でも言いやすい言い方でいいからね」
そう言ってワシャワシャと俺の金髪を撫でると、抱っこして一回転する。香水か分からないが甘い匂いがする。そしてそこまで大きくはないが、フニャリと胸の柔らかさを頬に感じる。
空中ブランコのように足が浮いて、浮遊感を味わえて少し楽しい。遊園地なんて数年行ってないからな……
「はい、おしまい。楽しかった?」
スヴェータは俺を床に下ろす。
「うん!」
「はっ!」子供の感覚に引っ張られていた?
中学生程度の背丈とは言え、三歳児の子供を抱っこするなんてスヴェータは見た目に似合わず結構力あるんだな……
42
お気に入りに追加
1,742
あなたにおすすめの小説
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる