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第10話 女神様と映画

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 春姫の見たい映画と言うのは、少女漫画原作の恋愛映画だった。売り出し中の若手タレントが出ているらしく若い女性の間で話題になっているようだ。

「会話とはどれだけ共通の出来事を話題にできるかが大切なのよ、特に受験開けの私達見たいな人種にとっては一年振りの自由よ? みんな娯楽に飢えてるハズなのよ……」

「リア充は大変だな……」

「男子だってゲームや漫画、スポーツと話題を合わせるために見たりしてるもの多いわよね?」

「ああなるほど……高度な知性と高い社会性を持った生き物のさがみたいなものか……」

「……そんな高尚そうな言い回しで、卑屈な言い方しないでよ」

 中学二年の折、特典目当てで同じ映画を10回以上鑑賞した僕にとって、チケットの買い方や売店での買い物は約一年振りとは言え慣れたもので十分エスコートできたと思う。
 映画を観終えた僕達は、映画館ビルの階下のファミレスで談笑していた。

「面白かったわね」

 推しのイケメン俳優が出演しているせいか、春姫の評価は異様に高い。
 プラスチック製の不透明なコップに入ったオレンジジュース片手に、『ムフゥ』と鼻息を荒げ満足げな笑みを浮かべている。

満足そうでなによりだ。

 CGのような予算がモロに反映される部分は、流石日本邦画といえるような、お察しのクオリティだったことは割愛するにしても、脚本、メインの演技が本当にダメ。褒められるは美術とベテランの演技、カメラさんぐらいだった。

 邦画なら五〇点と言ったところだろうか? 事前に春姫から借りて読んだ原作は面白かったんんだけど……映画系レビュアーに今年ワーストとは言わないまでも酷評されるのは目に見えている。
 レビュー動画が上がるのが楽しみだ。こういうところが楽しみ方が歪んでいるんだろうな。

「イケメン俳優と美人女優の絡みは視力が上がるかと思った……」

(推し〇子でも見たけど『イケメン俳優や美人を見ると視力が上がる』って表現は流行ってるのか?)

「あははは………でもサービスシーンって必要だったのか?」
 
「何を言ってるの必要よ! イケメンの裸体が嫌いな女なんていないから」

「ああ、だから食い気味にスクリーン観てたのか……」

 僕の指摘に春姫は茹蛸のように顔を赤らめる。

「――――~~~~ッ!」

――――と声にならない声を漏らす。

「そ、そはいうけど勇気くんだって女の子のサービスシーン食い入るように見てたじゃない! 白状すると、ああいうシーンでどういう反応をするのかな? って思ってみてたんだけど……」

「ああ、なんか視線感じるなって思ったけど、そういうことか……」

 気まずくて視線を逸らしただけかと思っていたけど、別に異性愛者なら同性の裸を見てもそこまで気まずい思いはしないか……

「なんというかサービスシーンなんだから、男の子は喜んで鼻の下伸ばしてるんだろうなーって思ってたら、鼻の下を伸ばした直後に『何の意味が?』って顔してて、正直面白かったわ。これが賢者タイムかって思った」

「いや、サービスされるのは嬉しいんだけど、あまりにも脈略がなかったから……冷静になると疑問が出てきちゃって……」

「まあ言いたいことはわかるけど……」

 ミステリー映画とは言っても、ホラー要素が強めの作品だったので様式美としてお色気シーンがあるだろうとは思っていたのだが、まさか主演二人がそれぞれ尺を割かれているのは意外だった。

 映画の感想で盛り上がっていると、注文した料理が届き始める。
 
「模擬デートなのにファミレスでいいのか?」

「できるならいいお店の方が良いと思うけれど、高校生のお小遣いの平均はネットによると約五六〇〇円。そのなかで趣味やお洒落にお金を使うとなると仮定すると……お高いお店は現実的に無理でしょ?」

「……否定できないな」

 究極的には親がどこまで出してくれるか? つまり仮想の自由に使えるお金によるところは大きいだろうけど、毎月五六〇〇円となればデートに使えるお金は少ない。
 バイト推奨の高校でもなければ、毎月数万円を自由に出来る高校生は少ないと思う。

「でもエスコートはあるていど出来てるのよね……」

 僕の頼んだハンバーグステーキをナイフで切り分けると自分のお皿に乗せ、代わりに自分の頼んだパスタを僕のお皿に乗せる。

「エスコートって大袈裟な……」

「例えば歩幅を合わせてくれたり、荷物持ってくれたり、メニューを先に見せてくれたり、いまだって私が悩んでるメニューを選んで半分こしてくれたり……十分すぎるぐらいよ」

「それぐらい当然だよ」

「『女は言葉にしなくても察してくれることが好きのよ』例えば髪やネイル、香水やアクセサリーの変化に気が付いて欲しい生き物なの、それは自分達がそれを出来るから相手にも求める……勇気君がどうしてそんなに察することが出来るのか? 不思議なぐらいだわ」

「それは……実母の影響かな」

「お母様の?」

「母は母と言うよりはずっと一人の女だったんだよ。子供を優先せずに自分最優先なまるで子供……少女みたいな人だった。時々気が向いた時に良い母親みたいなことをするだけで、それ以外は放置。結局僕らを捨てて新しい男を作って出て行ったけどね」

 僕は謝罪の言葉を口にしようとした春姫に被せて説明を続ける。

「……ご「謝る必要はないよ。僕は母のことを恨んでいないから、結局他人の面倒を見ることが出来ない人間だった。それだけなんだよ」」

「…………」
「……」
「…」

(ああ、僕のせいで空気が悪くなってしまった)

「気にしないでもう終わったことだから……このハンバーグ美味しいね。トマトソース酸味とチーズのコクを受け止められるだけのジュシーなハンバーグが良く合う……最近は蕎麦ばかりだから洋食が凄く嬉しいよ」

 最近は糖質制限のせいで真面に炭水化物を摂取出来ていないので、ハンバーグなど腹に溜まるものは凄く嬉しい。
 ご飯だと110g大体茶碗約3分の2程度。
 5枚切りの食パン1枚。
 しかし蕎麦ならなんと1.5玉食べられるのだ。

 なので最近は量を求めてお蕎麦ばかり。
 蕎麦は嫌いではないむしろ好きなのだが、腹を満たすために好きなザルではなく、嫌いな掛け蕎麦を毎食のように食べている。
 幸いカロリー制限はされていないのだが糖質を取れないのは少し苦しい。

「そ、そうね……もう少し緩やかなダイエットプランでもよかったんだけど……高校デビューに間に合わせるためには四の五の言ってる時間はないもの……デートはここまで洋服を見に行くわよ」

 彼女の言う通り、高校デビューまでの時間は少ない。
 元来僕は尻に火が付いて炎上するまで動くことが出来ない怠け者の性質だけど、一緒になって隣で頑張ってくれる女の子がいるのだがこれで頑張れなければ男ではない。

 母親のせいで洋服やに近づくだけでも発汗するぐらい苦手だが、背に腹は代えられない。
 僕は腹を括った。
 
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