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第9話

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「なッ!!」
「先輩」
「大丈夫だ傷一つ追っていない」
「お、お前何をした? 俺達は確かに矢を放ったハズだそれがどうして消えた? まさかあの噂は本当なのか? 政府は秘密裏に超能力者を集めているって言うのは……」
「それを聞いてどうなる?」
「ハハハハハ……俺も能力者でよぉ……自分の力を試して見たかったんだよなぁあああああッ!!」

 バニーは一瞬でその場から消えると、俺に襲い掛かる。

(不味い。強化系か俺の異能にはロクな攻撃手段は無い。だがこういう搦手は使える)

 バニーの拳が当たる刹那の間に影を広げ、攻撃を別の場所へ移動させる。異能は使うほど進化し応用できるようになるのだ。

「チッ! テメェもただの運び屋って訳じゃないんだな!」
「その通り、と言いたいところなんだが疲れるし制限も多い能力だから出来るだけ応用は使いたくないんだ。大人しくしてくれないか?」

 相手の異能は恐らくは身体能力を強化するタイプ。汎用性が高く一番多い能力系統だと聞いている。

「彩華頼めるか?」
「いいですけど……そうだ。ラーメン一杯で手を打ちましょう」
「了解」

 半身をとって腰だめに構え、警棒は胴の横に付く程密着した居合の構えを取り、最初から異能を発動させ。後の先を得意とする居合の精度を向上させている。
 理由は単純で初撃では滅法強い居合抜刀だが、一度放てばその間合いや剣速を覚えられてしまうと対処されやすい。何故なら型の最初の位置が常に一定であるので、複数の構えを持つ他の流派に比べてどうしても、手の内が限られてしまうと言う、分かりやすいデメリットが存在しているからだ。
 構える彩華の身体に凄まじい闘気が漲り、彩華は大技で勝負を決める積りでいる。
 どう転んだとしても、この一撃で勝敗は決する。
 バニーは一気に距離を詰め……変則的な動きで彩華を攪乱《かくらん》し拳を振り上げた。
 しかし女は避けようと言う意思を感じない。それどころか防ごうと言う意思すらもバニーには感じる事は出来なかった。
 そのまま吸い込まれるように彩華の身体に拳が届く寸前――――
 数十センチ手前、影が落ち届いたハズの拳は彩華の身体をすり抜けた。

「なっ………!?」

 (これは――――! 奴の転移能力! だからこの女は身動ぎ一つすることなく俺への反撃を狙っていたのか! 何という信頼関係!! ハッ! 不味い!!)

 刹那!
 しかし、一瞬生まれたその隙を、見逃す相手ではなかった。

「一閃ッ――――!!!!」
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