上 下
7 / 10

第7話

しおりを挟む
 彩華は足をハの字にして前後に開くと、半身をとって腰だめに構え、警棒は胴の横に付く程密着している。
 彩華は居合抜刀術を基本とした。総合格闘術を習得した近接戦闘の専門家だ。
 それを見て俺もグレの集団を相手にするためバッグの中から取り出した特殊警棒で応戦する。

「こ、この野郎がァぁぁぁ!」

 俺は、刃物で斬りかかってきた半グレの一人を相手にする。
叫びながら刃物で斬りかかってきた。相手が持っていたのは、鉈だった。
 俺は細い警棒で無理に鉈を受け止めようとすれば、コチラが切られてしまう可能性がある。
 そう、受け止めれば――。

「遅い!」

 警棒で鉈を持っている手の甲へ目掛けて、警棒を振り抜いて相手の手の甲の骨をヘシ折る。その痛みで相手の体勢を崩すと、そのまま相手の腹に廻し蹴りを入れた。
 俺の様な政府と契約を結んだ外野の能力者は、彩華達……【犬】とは異なり殺しを許可されていないから、常人に比べタフな異能者無力化することが大変難しい。
 能力者同士の戦闘は命の危機が常に伴うが、殺しを許されないというハンデを背負ったうえで、一定の仕事ができる強い能力者のみが、僅かな自由を手に入れられる。それが彩華と俺の大きな差であった。

 そのまま特殊警棒を使った。振り抜きでチンピラを蹴散らしていく。

「先輩! 後です」

 彩華の忠告を受けて背後に注意を払う。
 彩華の忠告通り。金属バッドを持った男が、忍び寄って来ていたので一度距離を取る。

(能力で反らすのは疲れるから勘弁して貰いたいな……ここは彩華に任せよう……)

「彩華!」
「任されました!!」

 相手が踏み込み金属バットが振るわれる。

「死ねやぁぁぁぁぁああああ――――ッ!!」

ブン! カン! ブン!

 雷光の如き一閃――――
 視認が不可能なレベルで繰り出された一刀目で、金属バットを難なく弾き。相手に息をつかせぬほどの刹那の間に、流れるように返す二刀目が、暴漢の腕に直撃する。

「うぐッ!!」

 暴漢は骨が折れた痛みから地面に倒れ悶え苦しんでいる。
 命中を確認して、彩華は軽く地面を蹴って後方へ飛び再び間合いを保つ。振り抜いたハズの警棒も、いつの間にか最初の居合の体制に戻っている。
 これが彩華の能力【直感未来視《ストライクヴィジョン》】だ。数秒先の未来を見ることができる未来視の異能で、この強力な能力のため学生でありながら、特別公務員として従事している。彼女の未来視と武術が合わさる事で、飛び道具以外であれば完封することも難しくない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

最弱引き出しの逆襲 ― クラス転移したのはいいけど裏切られたけど実は最強だった件

ワールド
ファンタジー
俺、晴人は普通の高校生。だけど、ある日突然、クラス全員と一緒に異世界に飛ばされた。 そこで、みんなは凄い能力を手に入れた。炎を操ったり、風を呼んだり。でも、俺だけが"引き出し"なんていう、見た目にも無様な能力を授かった。戦いになんの役にも立たない。当然、俺はクラスの笑い者になった。 だけど、この"引き出し"、実はただの引き出しではなかった。この中に物を入れると、時間が経つにつれて、その物が成長する。最初は、その可能性に気づかなかった。 でも、いつしか、この能力がどれほどの力を秘めているのかを知ることになる。 クラスメイトたちからは裏切られ、孤立無援。でも、俺の"引き出し"が、みんなが見落としていた大きな脅威に立ち向かう唯一の鍵だったんだ。知恵と工夫で困難を乗り越えて、俺は最弱から最強へと変貌する。 工夫次第で幾らでも強くなれる引き出し能力で俺は成りあがっていこう。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...