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第7話

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 彩華は足をハの字にして前後に開くと、半身をとって腰だめに構え、警棒は胴の横に付く程密着している。
 彩華は居合抜刀術を基本とした。総合格闘術を習得した近接戦闘の専門家だ。
 それを見て俺もグレの集団を相手にするためバッグの中から取り出した特殊警棒で応戦する。

「こ、この野郎がァぁぁぁ!」

 俺は、刃物で斬りかかってきた半グレの一人を相手にする。
叫びながら刃物で斬りかかってきた。相手が持っていたのは、鉈だった。
 俺は細い警棒で無理に鉈を受け止めようとすれば、コチラが切られてしまう可能性がある。
 そう、受け止めれば――。

「遅い!」

 警棒で鉈を持っている手の甲へ目掛けて、警棒を振り抜いて相手の手の甲の骨をヘシ折る。その痛みで相手の体勢を崩すと、そのまま相手の腹に廻し蹴りを入れた。
 俺の様な政府と契約を結んだ外野の能力者は、彩華達……【犬】とは異なり殺しを許可されていないから、常人に比べタフな異能者無力化することが大変難しい。
 能力者同士の戦闘は命の危機が常に伴うが、殺しを許されないというハンデを背負ったうえで、一定の仕事ができる強い能力者のみが、僅かな自由を手に入れられる。それが彩華と俺の大きな差であった。

 そのまま特殊警棒を使った。振り抜きでチンピラを蹴散らしていく。

「先輩! 後です」

 彩華の忠告を受けて背後に注意を払う。
 彩華の忠告通り。金属バッドを持った男が、忍び寄って来ていたので一度距離を取る。

(能力で反らすのは疲れるから勘弁して貰いたいな……ここは彩華に任せよう……)

「彩華!」
「任されました!!」

 相手が踏み込み金属バットが振るわれる。

「死ねやぁぁぁぁぁああああ――――ッ!!」

ブン! カン! ブン!

 雷光の如き一閃――――
 視認が不可能なレベルで繰り出された一刀目で、金属バットを難なく弾き。相手に息をつかせぬほどの刹那の間に、流れるように返す二刀目が、暴漢の腕に直撃する。

「うぐッ!!」

 暴漢は骨が折れた痛みから地面に倒れ悶え苦しんでいる。
 命中を確認して、彩華は軽く地面を蹴って後方へ飛び再び間合いを保つ。振り抜いたハズの警棒も、いつの間にか最初の居合の体制に戻っている。
 これが彩華の能力【直感未来視《ストライクヴィジョン》】だ。数秒先の未来を見ることができる未来視の異能で、この強力な能力のため学生でありながら、特別公務員として従事している。彼女の未来視と武術が合わさる事で、飛び道具以外であれば完封することも難しくない。
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