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第1話

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「待った?」
「うん?今来たとこだよ」

映画のワンシーンのような会話をしている、気合の入った洋服を着たカップルを見ていると、胃の奥の方からナニカ込み上げてくるものがある。

「もげろ………」

 俺は小さな声で男の不幸を祈った。
 季節は秋と言うには寒く、冬と言うには暖かい、そんな中途半端な師走前半。世間ではいわゆる、クリスマス商戦と呼ばれるシーズンの事であった。
 俺は軽くため息を吐くと息が白い。カバンの中に手を突っ込むと中から魔法瓶を取り出して、暖かいコーヒーで暖を取る。

「ふーっ暖かい」

 皆が思い描く青春とは、どのような物であろうか? 
 一昔前の学園モノの作品と言えば、釘宮病を発症させるようなツンデレ貧乳暴力系ヒロインが乱立していたり、はたまた花沢病、「能登可愛いよ能登」などと言った亜種も存在する。そんなヒロイン達と共に日常と非日常が入り混じったそんなセカイを冒険する……そんな日常に恋焦がれていた一人……が俺、白井《しらい》雄介《ユウスケ》だった。
 魔法瓶に入ったコーヒー片手に、目的地である駅の銅像前へ足を運んだ。
 するとそこには、一足先に長い頭髪をブリーチした綺麗と言うよりは、可愛い感じの少女が銅像を背にして、スマホを弄りながら俺を待っていた。

「ユースケ先輩遅いですよ……大学生にもなって遅刻癖は、流石に不味くないですか?」

 俺が声をかける前に気が付くと、不機嫌そうな表情で開口一番。可愛くない正論を投げかけてきた。

「はいはいゴメンね……今度去年の試験の過去問題あげるから許してよ……って言うか急に呼びつけたのは、彩華《イロハ》だよね? 俺今日は授業無いから寝てたってのに……は! って言うかなんで俺、謝ってるんだろ……怖ッ、馴れッて怖ッ!」

 いつの間にか小慣れたやり取りに俺は戦慄した。

「はぁ……もういいですよ。因みにユースケ先輩ととは、教授が違うので過去問はあまり役に立たないと思いますが、折角のご厚意です……受け取ってあげましょう。まぁ先輩は約束通りに、足《・》を持ってきてくれたようですし許しましょう……」
「はいはい。そうですか……」
「そうだユースケ先輩、先輩に依頼があるんですが……ぶっちゃけキナ臭いです」
「依頼、依頼ねぇ……」
「えぇ御上《・・》からのモノですので、拒否しない方がいいかと……先輩にとっては、お使い程度のお仕事でお金と自由が約束されますから、やった方がいいと思いますよ?」

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