田舎道場の四代目、剣術学校の講師として帝都に召喚される~帝都騎士団副団長さまに才覚を見出され、邸宅に居候したら美人な娘がグイグイ来る。「上司
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
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第4話
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先ずは都へ行こうと言われた俺は、旅行鞄なんて便利なものは持っていないので剣と財布、それに着替えを入れた袋を持ってこの田舎には不釣り合いなほど立派な二頭立ての馬車の前に立っていた。
「偉い立派な馬車やなぁ……」
「お貴族様でいらっしゃったのでしょうか?」
などと村人は口に噂をしている。
こんな田舎に商人が使う荷馬車以外が居たら普通に目立つ。
馬も軍馬とは言わないまでも、農民が普段目にする荷馬車用の馬や農耕用の馬とは、体格からして違うのを見れば貴族やその家臣が村に来たのは一目瞭然と言う訳だ。
しかし、貴族や商人、寺院の坊主でもなければ馬車に刻まれた家紋を見ても誰の者かは判別が付かない。何故なら村人にとっては貴族かそれ以外かでしかないからだ。
毛足の立った絨毯のような織物が昇降台に設置されている。恐らく車内を泥で汚さないための工夫ののだが……踏んでしまっていいのか不安になる。
「ステップは踏んでもいいんですよね?」
俺は思わず確認を取る。
「大丈夫ですよ。泥除けですから……それに貴人用の馬車でもありませんので……」
「は、はぁ……では……」
おっかなびっくりと言った様子で、ステップを踏み泥を落とすと車内に乗り込む。
革張りの対面シートに腰を降ろすと、程よい反発で尻と腰を押し返してくれる。
(これだけ良い馬車が貴人用ではないとは……都は金も物もあると聞いたことがるが……いやはや末恐ろしい)
「出発してくれ」
フェルディナンド様の合図で馬車は走り始める。
暫くの無言の車内に、カラカラ回転する車輪の音とパカパカと蹄を鳴らす馬の足音だけが聞こえる。思いのほかガタガタと揺れないものの慣れない車内のせいか車酔いしてきた。
車窓に顔を近づけて外を覗く、見える景色に変わりはない。
水平線まで続く一面の麦畑。遠方には低い山が連なっておりこの辺り一帯を取り囲んでいるようにも見える。
この低い山々は隣村との境になっていて、俺も昔は水利権を巡って木剣片手に若者を引き連れて喧嘩に明け暮れたものだ。生まれ育った村を離れ都に上京するためか、少し思い出に浸ってしまった。
「右を向いても麦畑、左を向いても麦畑。ここは良い穀倉地帯ですね」
フェルディナンドさんが車窓に顔を向けながら話しかけてくる。
「都の騎士様からすればド田舎なだけでは? 都には稀に出て行きますが、こことは違い道路には石田畳が引かれ建物だってこの田舎違って立派なものが多いですし……」
「都はそうだね、でもここだっていい村だよ。私の故郷は北国なんだけど、冬は大雪で道が埋まって村同士町同士が寸断されるような田舎だが、麦の出来だけはいいんだ。
私は三男で故郷では騎士になれなかったから都に出来た。田舎者で成り上がり者なんだ。そんな私からすれば、ここは故郷を思い出させてくれるいい場所だよ」
「それは良かったです」
「アーノルドくんは田舎が嫌いかな?」
「好きだからこそ嫌いですね……変化しないモノなんてないのに変化を嫌う……そういう部分が好ましくないです」
「あははは……確かにそうかね。でもねそれは都だってそうだよ……天測流を招聘するのだって頭の固いお歴々は反対した。でも頭の柔らかい若者や話の分かるお歴々は、招聘に賛成したそれだけさ……」
判っていた。判っていたつもりだった。誰からも、少なくとも招く側からは諸手を上げて賛成されている。とは思っていないつもりだった。けれど、目の前でその事実を口にされると心に来るものがある。
俺は泥の沈んだ池に投げ込まれる石なんだ。
石を投げることでどのような変化が産まれるか? 良い変化であれば良し、悪い変化であれば俺は切りすれてられる。そういう存在。
フェルディナンドさんが酷い人なのではない。素直な裏表のない人間なのだ。フェルディナンドさんからすれば俺に本当の事を離すメリットは多くない。にもかかわらず俺に真実を教えてくれた。
きっとフェルディナンドさんは、田舎から出て来たばかりの昔の自分と大人の都合で、田舎から出される今の俺を重ねているのだろう……ならばフェルディナンド様の期待に応えるのがいいだろう。
「ご期待添えるかは分かりませんが、一所懸命に私の事……いいえ、天測流を推薦していただいた方々のご期待に応えられるように励みたいと思います」
「いい心がけだ。しかし、君はまだ若い汚い政治の世界に深く踏み入れる必要はないと思うが……」
俺の答えに満足したのかフェルディナンド様は、俺の言葉を肯定するものの、政治的な話をするのを躊躇われる。
全てを知りたいのではない。俺がどう立ち振る舞えばいいのかを知りたいだけだ。
「フェルディナンド様を始めとする方々のご命令に従っているだけではただの雑兵に過ぎません。私が知りたいのは、コレからお役目を頂く『講武場』にて何をすれば、推薦していただいた方の面目を保てるのかということだけです」
「野心はないが、一兵では終わりたくないという訳か……それならば簡単だ。先ずは講武場の剣術指南役になってくれ……話はそれからだ」
え? まって……指南役として招聘されたのに絶対に指南役に成れるわけじゃないの?
「偉い立派な馬車やなぁ……」
「お貴族様でいらっしゃったのでしょうか?」
などと村人は口に噂をしている。
こんな田舎に商人が使う荷馬車以外が居たら普通に目立つ。
馬も軍馬とは言わないまでも、農民が普段目にする荷馬車用の馬や農耕用の馬とは、体格からして違うのを見れば貴族やその家臣が村に来たのは一目瞭然と言う訳だ。
しかし、貴族や商人、寺院の坊主でもなければ馬車に刻まれた家紋を見ても誰の者かは判別が付かない。何故なら村人にとっては貴族かそれ以外かでしかないからだ。
毛足の立った絨毯のような織物が昇降台に設置されている。恐らく車内を泥で汚さないための工夫ののだが……踏んでしまっていいのか不安になる。
「ステップは踏んでもいいんですよね?」
俺は思わず確認を取る。
「大丈夫ですよ。泥除けですから……それに貴人用の馬車でもありませんので……」
「は、はぁ……では……」
おっかなびっくりと言った様子で、ステップを踏み泥を落とすと車内に乗り込む。
革張りの対面シートに腰を降ろすと、程よい反発で尻と腰を押し返してくれる。
(これだけ良い馬車が貴人用ではないとは……都は金も物もあると聞いたことがるが……いやはや末恐ろしい)
「出発してくれ」
フェルディナンド様の合図で馬車は走り始める。
暫くの無言の車内に、カラカラ回転する車輪の音とパカパカと蹄を鳴らす馬の足音だけが聞こえる。思いのほかガタガタと揺れないものの慣れない車内のせいか車酔いしてきた。
車窓に顔を近づけて外を覗く、見える景色に変わりはない。
水平線まで続く一面の麦畑。遠方には低い山が連なっておりこの辺り一帯を取り囲んでいるようにも見える。
この低い山々は隣村との境になっていて、俺も昔は水利権を巡って木剣片手に若者を引き連れて喧嘩に明け暮れたものだ。生まれ育った村を離れ都に上京するためか、少し思い出に浸ってしまった。
「右を向いても麦畑、左を向いても麦畑。ここは良い穀倉地帯ですね」
フェルディナンドさんが車窓に顔を向けながら話しかけてくる。
「都の騎士様からすればド田舎なだけでは? 都には稀に出て行きますが、こことは違い道路には石田畳が引かれ建物だってこの田舎違って立派なものが多いですし……」
「都はそうだね、でもここだっていい村だよ。私の故郷は北国なんだけど、冬は大雪で道が埋まって村同士町同士が寸断されるような田舎だが、麦の出来だけはいいんだ。
私は三男で故郷では騎士になれなかったから都に出来た。田舎者で成り上がり者なんだ。そんな私からすれば、ここは故郷を思い出させてくれるいい場所だよ」
「それは良かったです」
「アーノルドくんは田舎が嫌いかな?」
「好きだからこそ嫌いですね……変化しないモノなんてないのに変化を嫌う……そういう部分が好ましくないです」
「あははは……確かにそうかね。でもねそれは都だってそうだよ……天測流を招聘するのだって頭の固いお歴々は反対した。でも頭の柔らかい若者や話の分かるお歴々は、招聘に賛成したそれだけさ……」
判っていた。判っていたつもりだった。誰からも、少なくとも招く側からは諸手を上げて賛成されている。とは思っていないつもりだった。けれど、目の前でその事実を口にされると心に来るものがある。
俺は泥の沈んだ池に投げ込まれる石なんだ。
石を投げることでどのような変化が産まれるか? 良い変化であれば良し、悪い変化であれば俺は切りすれてられる。そういう存在。
フェルディナンドさんが酷い人なのではない。素直な裏表のない人間なのだ。フェルディナンドさんからすれば俺に本当の事を離すメリットは多くない。にもかかわらず俺に真実を教えてくれた。
きっとフェルディナンドさんは、田舎から出て来たばかりの昔の自分と大人の都合で、田舎から出される今の俺を重ねているのだろう……ならばフェルディナンド様の期待に応えるのがいいだろう。
「ご期待添えるかは分かりませんが、一所懸命に私の事……いいえ、天測流を推薦していただいた方々のご期待に応えられるように励みたいと思います」
「いい心がけだ。しかし、君はまだ若い汚い政治の世界に深く踏み入れる必要はないと思うが……」
俺の答えに満足したのかフェルディナンド様は、俺の言葉を肯定するものの、政治的な話をするのを躊躇われる。
全てを知りたいのではない。俺がどう立ち振る舞えばいいのかを知りたいだけだ。
「フェルディナンド様を始めとする方々のご命令に従っているだけではただの雑兵に過ぎません。私が知りたいのは、コレからお役目を頂く『講武場』にて何をすれば、推薦していただいた方の面目を保てるのかということだけです」
「野心はないが、一兵では終わりたくないという訳か……それならば簡単だ。先ずは講武場の剣術指南役になってくれ……話はそれからだ」
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