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第五十一話

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「悪い。調味料切らしてて買いたいんだけどいいか?」

「いいですよ。あ、どうしてお菓子コーナーの近くにカップとか調味料があるんですかね?」

「保存期間が長いからじゃないか? しらんけど」

「で何を切らしてるんですか?」

「酒、みりん、しょうゆだな」

「だいたい全部じゃないですか!」

「そうともいう」

 料理をする習慣がないのか家には殆ど調味料がない。
 原作ではあまり深堀されてなかったけど、真堂恭介しんどうきょうすけの家は何かがおかしい。

「みりんと醤油、あとお酒は……」

「ちょっと……」

 そう言うと俺の静止も訊かずに調味料コーナーに向かっていく。

「みりんと醤油にお酒ですと言ってカゴにいれようとする」

「俺達は未成年だからみりんとお酒は買えないの」

「お酒って料理酒でもだめなんですか?」

「塩が入っててそのまま飲むのに適してないのなら買える。あとみりんも同じだ」

「みりんってお酒だったんだ……」

「江戸時代ごろは甘いお酒扱いで飲まれていたんだけど、料理に甘みを出す目的で使われ、次第に飲まれなくなっていったんだ」

「せんぱいったら博識ですね」

「……まあな」

 大学生時代に飲みの席で身に着けた小話だ。

「それにみりん風のほうが安い場合もあるから、安価が売りの二郎系だとみりん風が使われているらしい」

「へーバターとマーガリンみたいなものですかね」

「よくしらないけど多分そうだ」

「せんぱい。大特価おひとり様一本限りですって……」

「なあ葛城かつらぎ……」

「判りました買えばいいんですよね結構重い……」

「大丈夫か?」

 ボトル抱える葛城かつらぎの背後に回りこんで後ろからハグをするような姿勢で支え、ボトルをカゴの中に入れる。

「あたしにけっこう奢ってくれるのに節約志向なんですね」

「養ってもらってる立場だし、それに奢るためにも節約は必要だ」

 実際自炊の理由の3割ぐらいは葛城《かつらぎ》に奢る金を作る為だ。
 清算を済ませ店を出ると俺達の両手には、パンパンのビニール袋が下げられていた。

「助かったよ」

「せんぱいあたしがいるからって買い込み過ぎですよ……」

「ごめんごめん。買い物なんて週末にしかできないし、今日はおひとり様一つなんてものもあって調子に乗ってかってしまた」 

「まー普段いろいろ奢ってもらってますし、不満はないですけど……」

 そんな不満たらたらなセリフを吐きつつも、その手には確りと二つのビニール袋が下げられている。

 他愛ない話をしている間に俺の家に着いたのだが……
何故か葛城かつらぎは『真堂しんどう』と書かれた表札をじっと見つめながら立ち止まった。
 不思議に思いながらも開錠し振り向いたのだが、未だに門の前で脚を止めている。

 訝し気に自分を見つめている視線に気が付いたのか、止まっていた彼女は動き出す。

「あぁーっ、えーっと、なんていうか……ちょっと、言葉が見つからないんですけど、せんぱいって育ちいいんあだなって、改めて実感した。といいますか……」

「確かに両親は立派な仕事はしてるけどそんあ畏まることじゃないよ。葛城かつらぎだっていいとこ住んでるって訊いたけど……」

「そ、そうなんですけど……中学にあがってから男子の家上がったことないですし……」

「安心しろ俺も女子の家に上がった事はない!」

 女の子を家に上げたことはあるけど……

 他愛ない話をしている間に俺の家に着いたのだが……
何故か葛城かつらぎは『真堂しんどう』と書かれた表札をじっと見つめながら立ち止まった。
 不思議に思いながらも開錠し振り向いたのだが、未だに門の前で脚を止めている。

 訝し気に自分を見つめている視線に気が付いたのか、止まっていた彼女は動き出す。

「あぁーっ、えーっと、なんていうか……ちょっと、言葉が見つからないんですけど、せんぱいって育ちいいんあだなって、改めて実感した。といいますか……」

「確かに両親は立派な仕事はしてるけどそんあ畏まることじゃないよ。葛城かつらぎだっていいとこ住んでるって訊いたけど……」

「そ、そうなんですけど……中学にあがってから男子の家上がったことないですし……」

「安心しろ俺も女子の家に上がった事はない!」

女の子を家に上げたことはあるけど……

 俺の場合はまだ転生して二週間程度しかたっていないから、帰る場所、拠点ではあるものの住み慣れた家と言う感覚はない。

「ドヤ顔でそんなこと言われても困りますって……か、彼女とか居ないんですか?」

「いたら土日なんてデートしてるだろ?」

「まあそうですけど……」

「昼飯つくってやるから早く中に入れよ」

 俺は買い物袋をタイルの上に置いて鍵を開ける。
 ドアを大きく開けるとロックが掛ってドアは開いたままになる。

「……お、お邪魔します」

 親の事を嫌っている割に躾はきちんとされているのか、葛城かつらぎは脱いだ靴を揃えため振り返って直している。

「……」

 俺の視線に気が付いたのか葛城かつらぎは俺の方を見るとこう言った。

「なんですか?」

「いや礼儀正しいんだなーと」

「失礼じゃないですか。なんですか私のこと礼儀知らずとでも思っていたんですか?」

「いやそんなことはないよ。誰も見ていないような場面でもマナーとか礼儀を守れる人って凄いなって思っただけ」

「洗面所はどこですか?」

 案外潔癖なのか手洗いうがいがしたいようだ。
 俺なんかトイレ行った後か料理でも作らない限り面倒で手洗いなんてしないのに……

「先に案内するよ」


………
……




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