ラブコメの悪役に転生した俺は痴漢からモブ美少女を助けた結果、好感度爆上がり知らないうちにヒロイン達に囲まれたんだが……

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗

文字の大きさ
上 下
47 / 58

第四十七話

しおりを挟む


 無視されてキレた井川いかわは捨て台詞を吐き捨てる。

「そうならそうって最初に言えよ」

 ギロリと睨まれる。
 正直全く怖くない。
 バイト時代の客のヤクザの組長の方が怖い。

 理不尽なクレームや罵声、叱咤なんてなげかわしいことに、社会だと珍しくもなんともない。
 逆に俺は井川いかわの全身を舐め回すように見つめる。

 判り易く井川いかわの顔が引きつった。
 別に見ただけで何もしていない。
 憑依・転生して前からも後にも超能力なんて使えない。
 見られたことを不快に思うような後ろめたいことがあるから感じるだけだ。

井川いかわに何か用事でもあったのか?」

「いかわくん? ああ、私は特に用はないんだけど――」

 そこであからさまに面倒くさそうな顔をせず。適度に不快そうなそぶりを見せてくれるので刺激しすぎなくて都合がいい。
 俺と目が合っていたのに途中で、井川いかわのほうに視線を向けるところなんか、演技として高得点だ。

 ……ただ。この井川いかわ、原作でもヒロインの一人に、手を出そうとしていていたから油断できない。

 俺に文句が言えないからか、成嶋なるしまさんの方に意味心な視線を送る。
 逆恨みだろそれは……

「手、痛くないか?」

「乱暴に摑まれたのは痛かったわ。それに女の子の身体に無断で、それも無遠慮にあまり知らない男性に触られるのはあまり気分が良くないわ」

「ちっ……」

 謝罪の言葉一つなく舌打ちをすると走り去る。
 最後まで俺を睨み付けていたのは、小さなプライドだろうか?
 内心ほっと一息をついた。

 殴り合いの喧嘩になって負けはしないが、せっかく上げたカルマ値や信頼を無駄にしかねないことはしたくない。
 握られた手首を胸元抑えながら、困ったようなにへらとした穏やかな笑みをたたえる成嶋なるしまさんには、庇護欲を掻き立てられる。

「ありがとう」

 駅までの道中成嶋なるしまさんは短くお礼の言葉を告げる。

「悪かったな。出しゃばっちゃって……」

「そんなことはないわ。ホントに助かった……はぁ……」

 井川いかわのことを思い出したのか、心底面倒そうに溜め息を吐く。

「変な誤解をさせたまま返してしまった。俺なんかとじゃ噂されると成嶋なるしまさんのイメージがマイナスになるし……」

「別にいまさらいいわよ。井川いかわくん? しつこかったし、正直、真堂しんどうくんが来てなかったら何をされていたか……」

「……」

「そんなマジにならないでよ」

「ごめん」

「今回も真堂しんどうくんが助けてくれたからね」

 無駄話をしているといつの間にか駅に付いていた。
 改札口を通り丁度停車していた電車に乗り込むと不思議なことに電車はガラガラだった。
 時間も時間だしこういうこともあるか……。

 今日の出来事がよほど堪えたのか、かなり疲れた様子でドア付近の座席に座り背もたれに体を預ける。
 普段ならもう少し姿勢がいいのだが、自身のトラウマを想起させる感情を剥き出しで晒されれば、その心労は計り知れない。

「疲れた甘い物食べたいし飲みたいなー」

「駅にスタパあったよね? 買って来ればよかったでしょ?」

「欲しいけど買いに行く気力がなかったの」

「さいですか、言ってくれれば買って来たのに……」

「もー最悪!」

「まあまあ、フラペチーノじゃないけど甘い物ならあるぞ?」

 そういって鞄を探すとクッキーを見つけた。

「あ、クッキーだ」

「どうぞ」

「ありがとー」

 食べている姿はリスのようだ。

「……告白断りなれてるみたいだけどモテるんだな……」

「まあね。まあ全然嬉しくないけど……」

 ハッキリと言うあたり流石は成嶋なるしまさんだ。

「そういうものか……」

 モテた試しがない俺には全然理解できない感情だ。

「特に女の子は面倒なのよ。『〇〇ちゃんが好きな△△先輩を誑かすなんて』って言い掛かり付けられるなんて日常茶飯事なのよ。自分に魅力がないだけでしょ?」

「まあ確かに……」

「女の子のことをステータスみたいに扱う男もいるけど、女はトロフィーじゃないっての!」

「男女ともに、そう言う感情はある程度理解できない訳ではないけど……相手には失礼だよな」

「そうなのよ。なんでロクに知らない女性ひとに告白するんだろう?」

「幻想を抱いているからかもな」

「幻想?」

「アイドルとか芸能人とかを好きになる見たいな?」

「顔と身体が目的ってこと?」

「否定はしない」

「最っ低……」

「あとは自分以外との会話とかが輝いて見えたんじゃないかな?」

 そんな言葉がふと口をついた。
 これは学生時代に好きだった女の子には、彼氏が絶えなかったと言う思い出が脳裏を過ったからだ。

「恋してる子は可愛いみたいな?」

「大雑把に言えばそんな感じ、あとは高嶺の花のあの子を落すために頑張る自分に酔うみたいな?」

「恋に恋するって感じね。それにしてもなんで見込みのない告白をするんだろう?」

「そりゃ告白の事を、成功と失敗の一撃必殺だと思ってるからじゃないのか?」

「ええぇ……告白って最後の一押しと言うか、二人の間に敢えて名前を付けるそんな関係だと思うんだけど……」

「俺もそうお思う。まあ、あれだ自分を認識して欲しいとか自分の気持ちを抑えきれなかったとかそう言う奴かも」

「認識して欲しいとか、抑えきれないで被害をおう私はどうすれば……」

 両手で顔を覆う。

「世間一般の人間はモテない側の人間だからモテる側の気持ちが判らないんだろう。俺も判らないし……」

 むすっと不満げな表情を隠そうともしない成嶋なるしまさんをフォローするために言葉を取り繕う。

「まあ、あれだ。好きになるのは構わないと思うだけど、それを自分本位に相手に押し付けるのはダメだ」

 顔にせよ、身体にせよ、性格にせよ。
 魅力的だと思われたからモテるのだ。
 好きだからが、相手に迷惑を掛けて言い免罪符にはならない。

「まあ好かれるだけなら悪い気はしないわよ。実際、可愛いから有名なんだし……それにもし強引に何かされそうになっても、全力で股間を蹴り上げるか殴るつもりだったし……」

「いや、イラっとして手出しそうになってたよな?」

「ぐっ……」

「だから割って入ったんだよ――」

 やはり手を出す腹積もりだったようだ。

「――まあ、暴漢相手にはそれぐらいでいいと思うけどなだけど、相手が引かない程度で股間を蹴るのはやめような?」

真堂しんどうくんにはそんなことしないけど……」

「別にされるようなことしてないだろ!」

 強姦紛いの事をすればどれだけの悪行として認識されることやら……まあ、それ以前に人間としてどうなんだろうとは思うけど。

「してないわよ? むしろ紳士的とさえ言えるわ紳士の前に漢字二文字が付くけど……」

「うわー変態かな?」

「英国かもしれないわよ?」

「俺に渡英暦はなかったハズなので変態ぐらいしかあてはありませんね」

「あははははは」

「まあ、綺麗でいたいのは私が望んだ形だから副作用としてモテるのは仕方がないけど、だからと言って幻想を押し付けられるのはたまったものではないわね。断るのにも神経使うのよ? 無駄に気付けて逆上されたくないし……」

「優しいな」

「誰かさん見たいに優しくあろうとしているだけよ?」

「……」

 俺は赤く染まった頬を見れれないように顔を背けるのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

ほとりちゃん
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...