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第三十六話
しおりを挟む「まずは段ボールを一つずつ確認してしよう」
「それは後回しだ……先ずは段ボールを廊下に運び出しスペースを開けるところらだ」
「確かにその方が効率が良さそうだな……」
「祐堂人手増やせないかな?」
「直ぐには無理だろ……まさか真面目にやるって言ったのは嘘じゃないよな?」
「……」
「おい! 何とか言えよ!」
もしかして俺達嫌われているのか? と言うセリフを飲み込んだ。
俺が憑依する前にやらかしてるんだもんな……嫌われていても仕方がない。
流石にこの量を今日、今すぐにとなると工夫が必要そうだ
「祐堂片付けは得意か?」
「家事はここ二年間でそこそこ出来るけど……」
原作通り家事万能系らしい。
人生二週目でもないのに実にハイスペックなことで……
「そうかそれは重畳。よーしママ頑張っちゃうわよ!」
「うわあ~余りの仕事量に真堂が壊れた」
ともあれ50人以上の生徒を集めて何をするかと思えば、倉庫整理にアポイントメントと大忙し。
どうやらこれから暫くの俺達の仕事は、この散らかった教室を片付けることらしい。
「失礼な! 無理にテンション上げただけだ。女の子にやらせることではないし俺で良かったよ」
「そうだな」
「この学校ってシャワー室あったけ?」
「水泳部があるから、立派かどうかは兎も角シャワー室はあると思うが……まさか……」
「汗をかいたらシャワー浴びたいよな?」
「お前馬鹿だろ!」
「でも汗と埃まるけになるし……浴びたい!」
「気持ちは理解できるが……」
前世の小中時代のプールのシャワーは、屋外の丸見えなところにあった。
水着どというものを持っていない俺達はパンイチor全裸でシャワーを浴びる必要がある。
「シャワー云々の話は一旦やめにしよう」
「そうだな……取り合えず手を付けて少しずつでも片付けて行かないと、何も話が出来そうもないか……」
「……」
俺達は問題を先送りして、埃に塗れながら片付けを始めた。
………
……
…
「ふぅ……結構早く終わったな……」
俺は額に浮かんだ汗をハンカチで拭いながら今日の成果を見る。
大量の紙束の山を眺める。
教室内を蛍光灯が明るく照らしていて、窓から見える風景は暗く時計を見ればもう直ぐ最終下校時刻になろうとしていた。
どうりで腰が痛い訳だ。
俺は伸びをする。
祐堂の方を見ると彼も伸びをしている。
背中を貸して欲しい。
どうせなら二人で効率的に体を解したい。
「真堂が来てから倍以上の速度で整理が終わったよ。何て言うか凄く慣れてる気がするんだけど、バイトとかやってたのか?」
「……読書する割に元の本棚に戻すのが面倒くさくて、纏めて整理するんだよ。本の冊数も多いし新刊が出る度に整理してただけだよ」
とそれっぽい話をする。
実際前世では、小学生時代から集めたラノベの数は1000冊に迫り本棚を圧迫していた。
それだけ本があると買って読んで本棚に仕舞うのが面倒で、半年か一年に一度のペースで本を大移動させていた。
書類の整理整頓の速さは、学生時代のバイトなどの経験を元にしたものだ。
「それにしてもスゲーな」
「本当は全部電子化したいところだけど、時間がないから今年度で分けてる紙を月ごとに纏めたい」
「確かにそのほうがバックナンバーを探す時に便利だな。先輩達には終わったって伝えて来るよ」
そう言って部屋を出ようとする祐堂の手首を摑んで引き留める。
「待った。先輩たちはいつまでに終わらせろって言ったんだ?」
「……今週中だからあと三日はあるな」
「ふむ……」
俺は少し悩んだフリをする。
「よし、じゃぁ明日からは月毎に仕分け作業をしてから仕事が終わったと報告しよう」
「早く終わったなら終わったと報告するべきだと思うけど……」
「祐堂君の考えは正しい。だけど俺見たいな人間は少しでも楽がしたいだからあと三日だけまってくれ」
「……二日だそれ以上は待てない」
「ありがとう。それだけあれば少し優秀どまりですむ」
「真堂……」
「俺には他にやることがあるんだ。その為には時間は少しでも欲しいただそれだけだよ」
「理由があるなら言ってくれれば融通したんだが……」
「祐堂、お前はやっぱり優しいな」
「俺は優しくなんかないよ。ただ俺は優しくあろうとしているだけだ」
優しくあろうとしているだけか……昔読んだ作品でもそんな言葉があった事を思い出した。
「そのスタンス。俺も使っていいか?」
「いいけど……急にどうしたんだ?」
「変わりたいって思ったんだ。自分が変れば世界が変わるって言うだろ? いきなり優しい人間は俺には無理だだから、今日の自分よりも明日の自分の方が優しい人間でありたいなって……そう思ったんだ」
「……やっぱりお前はいい奴だよ。逃げたり現実を直視しない選択しもある。だけど真堂は立ち向かうことにした。これは称賛されるべきことだと思う」
聖人見たいな主人公にそう言われると悪い気はしない。
「ありがとな……あとの整理と報告は俺がやって置くから祐堂は早くあがりなよ」
「だけどまだ……」
祐堂は、一瞬口ごもる。
「いや何でもない。甘えさせてもらうよ」
そう言って鞄を持つと「お疲れ」と言って部屋を後にした。
「さて、片付けしますか……」
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