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話し合いは大事
どうしよう※※暴力、無理矢理表現あり
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上半身が摩擦されて皮膚に傷が出来るのが感覚的に分かる。
「い、嫌や! 放せ! アイト!」
タイガは悲鳴に近い声を上げる。
全く聞き届けられる様子は無い。
反応も無かった。
振り返って目に映ったのは、目に欲望のみをたたえて獲物を捕食しようとする雄。
鼻持ちならない態度をとって自分を嗤う幼なじみとは別の生き物に感じた。
「やや、いややぁ……っいたいっ」
暴れれば暴れるほど、地肌に鋭い爪が食い込んでくる。諦めないせいで、鉄のような匂いが漂い始めた。
そして、そんな抵抗を嘲笑うように猛ったモノが臀部に擦り寄せられる。
衣服の上からであっても、想像したこともない嫌悪感だった。
(……っ、怖い……!)
愛しい恋人との夜のために解しておいたそこは、涙も出ないほどの恐怖で固く閉ざしてしまっている。
ラビの顔を思い浮かべると、申し訳なさが頭をもたげてくる。
この状況を作り出したのはどう考えても自分だ。
「……、ラビぃ……ごめん……」
床に額をこすりつけ、弱弱しい声が零れた。
背後でジッパーを開ける音がするのを聞き、この後のことを想像する。
もう動く気力もなくなっていた。
「放せ」
怒気を含んだ冷たい声とともに、突然体が軽くなる。
体を起こして振り返れば、アイトの肩をつかんだラビが勢いよく顔面を殴りつけている姿を目の当たりにした。
「……っ!」
「襲って良いとは言ってない」
アイトのうめき声と背中しか見えないラビの抑揚のない言葉を、タイガは座り込んだまま唖然と聞いていた。
「タイガ、大丈夫か?」
すぐにこちらへ顔を向けたラビは一瞬前とはまるで違う、温かみのある心配そうな表情と声でタイガに近づく。
ネイビーのカーディガンを脱いで、一糸まとわぬ下半身に掛けてくれた。
窮地を脱した安堵から、タイガの目から一粒の雫が零れ落ちる。
「……ラビ……!」
動けないまま名前を呼ぶと、すぐさま腕の中に包まれた。慣れ親しんだ温もりに鼻を擦りつける。
「部屋に入った瞬間、理性が飛びそうな香りがすると思ったけど……っ、タイガからだったのか……」
「ご、ごめ……! 俺……っ」
息を詰めるラビから慌てて体を離す。至近距離で見ると、ラビの顔もアイトのように赤い。
ピーヌの薬の効果は絶大だったようだ。
熱い吐息を肌で感じて、そんな場合では無いのに体温が上がる。
しかし、アイトが背後でゆらりと立ち上がるのが目に入った。
「あ、ラビ……!」
「がっ……!」
呼びかけた時には既に遅く、アイトの足がラビの背中を踏み付ける。
衝撃に目を見開いて倒れ込んだラビをタイガは支えた。
「何すんねん!!」
タイガは今だに正気を失った様子のアイトを睨み上げると、牙を剥き出して怒鳴り声と共にその巨体へと飛び掛かった。
膝に掛かっていたカーディガンが剥がれて舞う。
先程までとは逆にタイガが大きな体に馬乗りになった。
起き上がろうとする体を二の腕を押さえつけてなんとか阻止しながら後ろに声を掛ける。
「ラビ、ごめんな……! 大丈夫か? こいつ今、おかしいねん!」
「おかしいのは、見たら分かる……っ離れろタイガ、オレが」
背中の痛みに耐えて、ラビがよろよろと立ち上がる。
その手が震えているのに気がついた。
種族が違えば気質が違う。
逞しい体格で忘れがちだが、ラビは繊細で争いを好まない兎獣人。興奮して爪も牙も剥き出しの虎獣人からは逃げたい筈だ。
無理をさせていると思うと居た堪れず、タイガは自分で何とかしなければと奥歯を食いしばる。
「どうしたらええんやろ……! 俺が飲んだ薬のせいで変な発情の仕方……っぐぅ……! くそ、馬鹿力……!」
理性を乱す香りの元になっているタイガが再び近寄ることで、アイトは目の前にある肩に牙を立ててきた。
雌を大人しくさせる程度の噛み方だが、衣服が剥がれた肌には血が滲む。
体勢の有利はあれども、気を抜いたらひっくり返されそうだ。
「薬……? 発情……」
ラビは慌てて加勢しようとしていたが、タイガの言葉を拾うと、動きを止める。
ほんの僅かな時間、左下に視線を向けて思案する。それから、ハッと目を見開くと、ズボンのポケットに手を突っ込んで小瓶を出した。
そしてその中身をアイトの頭にぶち撒けた。
「……っなに、する……!」
青い液体に怯んでアイトが目を瞑る。
「い、嫌や! 放せ! アイト!」
タイガは悲鳴に近い声を上げる。
全く聞き届けられる様子は無い。
反応も無かった。
振り返って目に映ったのは、目に欲望のみをたたえて獲物を捕食しようとする雄。
鼻持ちならない態度をとって自分を嗤う幼なじみとは別の生き物に感じた。
「やや、いややぁ……っいたいっ」
暴れれば暴れるほど、地肌に鋭い爪が食い込んでくる。諦めないせいで、鉄のような匂いが漂い始めた。
そして、そんな抵抗を嘲笑うように猛ったモノが臀部に擦り寄せられる。
衣服の上からであっても、想像したこともない嫌悪感だった。
(……っ、怖い……!)
愛しい恋人との夜のために解しておいたそこは、涙も出ないほどの恐怖で固く閉ざしてしまっている。
ラビの顔を思い浮かべると、申し訳なさが頭をもたげてくる。
この状況を作り出したのはどう考えても自分だ。
「……、ラビぃ……ごめん……」
床に額をこすりつけ、弱弱しい声が零れた。
背後でジッパーを開ける音がするのを聞き、この後のことを想像する。
もう動く気力もなくなっていた。
「放せ」
怒気を含んだ冷たい声とともに、突然体が軽くなる。
体を起こして振り返れば、アイトの肩をつかんだラビが勢いよく顔面を殴りつけている姿を目の当たりにした。
「……っ!」
「襲って良いとは言ってない」
アイトのうめき声と背中しか見えないラビの抑揚のない言葉を、タイガは座り込んだまま唖然と聞いていた。
「タイガ、大丈夫か?」
すぐにこちらへ顔を向けたラビは一瞬前とはまるで違う、温かみのある心配そうな表情と声でタイガに近づく。
ネイビーのカーディガンを脱いで、一糸まとわぬ下半身に掛けてくれた。
窮地を脱した安堵から、タイガの目から一粒の雫が零れ落ちる。
「……ラビ……!」
動けないまま名前を呼ぶと、すぐさま腕の中に包まれた。慣れ親しんだ温もりに鼻を擦りつける。
「部屋に入った瞬間、理性が飛びそうな香りがすると思ったけど……っ、タイガからだったのか……」
「ご、ごめ……! 俺……っ」
息を詰めるラビから慌てて体を離す。至近距離で見ると、ラビの顔もアイトのように赤い。
ピーヌの薬の効果は絶大だったようだ。
熱い吐息を肌で感じて、そんな場合では無いのに体温が上がる。
しかし、アイトが背後でゆらりと立ち上がるのが目に入った。
「あ、ラビ……!」
「がっ……!」
呼びかけた時には既に遅く、アイトの足がラビの背中を踏み付ける。
衝撃に目を見開いて倒れ込んだラビをタイガは支えた。
「何すんねん!!」
タイガは今だに正気を失った様子のアイトを睨み上げると、牙を剥き出して怒鳴り声と共にその巨体へと飛び掛かった。
膝に掛かっていたカーディガンが剥がれて舞う。
先程までとは逆にタイガが大きな体に馬乗りになった。
起き上がろうとする体を二の腕を押さえつけてなんとか阻止しながら後ろに声を掛ける。
「ラビ、ごめんな……! 大丈夫か? こいつ今、おかしいねん!」
「おかしいのは、見たら分かる……っ離れろタイガ、オレが」
背中の痛みに耐えて、ラビがよろよろと立ち上がる。
その手が震えているのに気がついた。
種族が違えば気質が違う。
逞しい体格で忘れがちだが、ラビは繊細で争いを好まない兎獣人。興奮して爪も牙も剥き出しの虎獣人からは逃げたい筈だ。
無理をさせていると思うと居た堪れず、タイガは自分で何とかしなければと奥歯を食いしばる。
「どうしたらええんやろ……! 俺が飲んだ薬のせいで変な発情の仕方……っぐぅ……! くそ、馬鹿力……!」
理性を乱す香りの元になっているタイガが再び近寄ることで、アイトは目の前にある肩に牙を立ててきた。
雌を大人しくさせる程度の噛み方だが、衣服が剥がれた肌には血が滲む。
体勢の有利はあれども、気を抜いたらひっくり返されそうだ。
「薬……? 発情……」
ラビは慌てて加勢しようとしていたが、タイガの言葉を拾うと、動きを止める。
ほんの僅かな時間、左下に視線を向けて思案する。それから、ハッと目を見開くと、ズボンのポケットに手を突っ込んで小瓶を出した。
そしてその中身をアイトの頭にぶち撒けた。
「……っなに、する……!」
青い液体に怯んでアイトが目を瞑る。
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