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出会ってびっくり
スタンピング
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突如、背後から大きな音がしてタイガもロンも振り返る。
しかし、特に何か落ちた様子などはなく。カフェ中の視線を集めるそこには、小型獣人とは思えない長身の兎獣人が、ただ静かな表情で立っていた。
「仲良いな」
「あれ、ラビじゃないか。なんでこんなところに?」
「午後は休講になったから遊びにきた」
ラビは何事もなかったかのように答えながら、タイガの肩に回っているロンの腕を外す。
そして、タイガの背に体重を掛けながら金髪に鼻をすり寄せた。
「……っ」
タイガは人知れず息を飲み、落ち着かなげに足を組み替える。
ラビは同じ学校なのだが、学部の兼ね合いで学舎が違う。目立つ存在にも関わらず、タイガがラビを知らなかったのはそのためだった。
シャトルバスで自由に行き来は出来るので、今日はやってきたらしい。
「講義以外はここに居ることが多いって言ってたから来てみたけど……勉強中だったか」
テーブルに置かれたファイルを眺めて呟くラビに、ロンが小さく吹き出した。
「え、これ勉強だったの……イッ」
要らないことを言いそうだった友人の足をテーブルの下で踏み付けて、タイガは必要以上に明るいトーンの声を出しながら笑う。
「い、いい今、ちょーどキリええとこまでいったとこやー! タイミング完璧やなラビ!! 俺ももう今日は講義無いし! せっかくやから3人でどっか行こか!!」
「3人……」
話がまとまる前にタイガがリュックを掴みながら立ち上がっても、ラビは背中から離れようとしない。それどころか、分かりやすく不満げな表情で腕にギュッと力を込める。
ラビの顔がよく見えているロンは、自然な様子で肩をすくめた。
「残念だけど、私はこれから講義なんだ。ラビ、タイガのアパートに行ったことある? ここから近いんだ」
「はあ? お前なに」
「行ってみたい」
「……ロン、その本、次のレポートの参考になったで。そっちのファイルに他の資料も入っとる」
目を輝かせて食い気味に言ってくるラビを、タイガは断ることが出来なかった。
何かの拍子で本がラビの目に触れると気まずいと判断したタイガは、目隠しにしたファイルごと友人に押しつけることにした。
「へー、ありがとう。じゃあ明日返すよ」
察しの良いロンは、優美に微笑んでふたりに手を振った。
自分が引き合わせた友人たちを見送ったあと、ロンはファイルの下で開きっぱなしになっているページに目を落とす。
そして紙を捲り、タイガの読んでいた次のページへと進んだ。
「雄の兎獣人、発情期の行動。甘えて擦り寄る、マウンティング、スタンピングかぁ……足を踏み鳴らすって、嫉妬の時もするんだっけ?」
タイガに触れていた手を退けられた時の、射殺すような赤い瞳を思い出してロンは口元を緩める。
「さっきの、どっちだろうね?」
謎の大きな音がした時に兎獣人の友人が立っていた場所へと、ひとり目線を向けた。
しかし、特に何か落ちた様子などはなく。カフェ中の視線を集めるそこには、小型獣人とは思えない長身の兎獣人が、ただ静かな表情で立っていた。
「仲良いな」
「あれ、ラビじゃないか。なんでこんなところに?」
「午後は休講になったから遊びにきた」
ラビは何事もなかったかのように答えながら、タイガの肩に回っているロンの腕を外す。
そして、タイガの背に体重を掛けながら金髪に鼻をすり寄せた。
「……っ」
タイガは人知れず息を飲み、落ち着かなげに足を組み替える。
ラビは同じ学校なのだが、学部の兼ね合いで学舎が違う。目立つ存在にも関わらず、タイガがラビを知らなかったのはそのためだった。
シャトルバスで自由に行き来は出来るので、今日はやってきたらしい。
「講義以外はここに居ることが多いって言ってたから来てみたけど……勉強中だったか」
テーブルに置かれたファイルを眺めて呟くラビに、ロンが小さく吹き出した。
「え、これ勉強だったの……イッ」
要らないことを言いそうだった友人の足をテーブルの下で踏み付けて、タイガは必要以上に明るいトーンの声を出しながら笑う。
「い、いい今、ちょーどキリええとこまでいったとこやー! タイミング完璧やなラビ!! 俺ももう今日は講義無いし! せっかくやから3人でどっか行こか!!」
「3人……」
話がまとまる前にタイガがリュックを掴みながら立ち上がっても、ラビは背中から離れようとしない。それどころか、分かりやすく不満げな表情で腕にギュッと力を込める。
ラビの顔がよく見えているロンは、自然な様子で肩をすくめた。
「残念だけど、私はこれから講義なんだ。ラビ、タイガのアパートに行ったことある? ここから近いんだ」
「はあ? お前なに」
「行ってみたい」
「……ロン、その本、次のレポートの参考になったで。そっちのファイルに他の資料も入っとる」
目を輝かせて食い気味に言ってくるラビを、タイガは断ることが出来なかった。
何かの拍子で本がラビの目に触れると気まずいと判断したタイガは、目隠しにしたファイルごと友人に押しつけることにした。
「へー、ありがとう。じゃあ明日返すよ」
察しの良いロンは、優美に微笑んでふたりに手を振った。
自分が引き合わせた友人たちを見送ったあと、ロンはファイルの下で開きっぱなしになっているページに目を落とす。
そして紙を捲り、タイガの読んでいた次のページへと進んだ。
「雄の兎獣人、発情期の行動。甘えて擦り寄る、マウンティング、スタンピングかぁ……足を踏み鳴らすって、嫉妬の時もするんだっけ?」
タイガに触れていた手を退けられた時の、射殺すような赤い瞳を思い出してロンは口元を緩める。
「さっきの、どっちだろうね?」
謎の大きな音がした時に兎獣人の友人が立っていた場所へと、ひとり目線を向けた。
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