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第三章
私の優秀な
しおりを挟むしかし問答か。
国に対する思いを語れとか言われたら私は、
「え? 良い国だと思うよ皇族は美形だしご飯は美味しいし」
とかしか答えられないけど大丈夫かな。自然と居なくなるまで行かない方がマシか?
魔術で防御バチバチにしてネルスも連れて行って、問答中は隣でニコニコしてるか?
などと考えていると、
「つまり、あのドラゴンに近づくなりなんなりして会話をしたらいいのか」
「近づいただけで攻撃されたりはしない?」
なんの気配もなく近くまできていたらしいバレットとエラルドが急に会話に参加してきた。
びっくりして飛び上がりそうなのをなんとか堪える。
更には。
「行ってみないことには分かるまい。行くぞ」
「殿下!?」
当然のような顔をして、一番安全圏に居なければならない人間が長い髪を靡かせて立っていた。
行くぞ、じゃないわ。
ネルスが文字通り飛び上がったわ。
「なんでお前たちここにいるんだ。特にアレハンドロ」
皇太子殿下がこんな最前線までやってきたら、騎士の方々が避難誘導に集中できないだろ。
今は一応、私の魔術が発動してるけども。
私の質問に対して、アレハンドロは口の片端を上げて腕を組む。すごいドヤ顔。
「私がドラゴンと話をつけにいくと言ってきた。大丈夫だ」
「なんでそれで来させてもらえたんだ?」
全然大丈夫な気がしない。納得もいかない。
ネルスは額を抑えて唸り出した。
「た、確かにドラゴンと対峙するならその場で最も身分の高い方が代表になるものですが! お隠れになって代わりにシンに……いや、気付かれたら機嫌を損ねるかも……」
ぶつぶつ言いながら今とれる最善の策について考えているようだ。
ドラゴンって身分が高い人が対応しないといけないのか。初耳だ。神聖な生き物だから失礼の無い様に、ということなのだろうたぶん。
というか、当然のように私に行かせようとしてたなネルス。行く気ではいたけども。
「と、言うわけだ」
仕方ないだろ、と言わんばかりだがなんだかとても楽しそうだ。
さてはこの子もドラゴンが好きだな?
ドラゴンから剣が貰いたいやつだな?
私もそういうの大好きだよ!
気持ちは分かるが言葉は冷静に淡々と、と心の中で唱えながら口を開く。
「せめて護衛連れてこいよ」
ドラゴンに近づいて会話をするつもりなら、尚更だった。私なら張り付くけどな。護衛対象がそんな危ないことしようとしてるなら。
しかしアレハンドロは、堂々たる姿でこう言った。
「連れてきているだろう。私の優秀な剣と盾だ」
アレハンドロを挟む様に立つバレットとエラルドがこちらに目線をくれる。
漫画なら絶対大ゴマね。ここね。
いつも通りの無表情といつも通りの微笑みを浮かべているだけなのに、アレハンドロのせいで超ドヤ顔してるように見える。
3人とも、わざわざ上着も着て来ちゃってまぁ。
さっきまで普通に上半身裸だったくせに。
よく見たら、水着なのに剣を佩くためのベルトもしている。
でもそれでも水着なんだよな。
ドラゴンと交渉に行くのにバカンス用の水着。
笑いそう。
ずっと観客の様に黙って聞いていたラナージュが私の隣でボソリと呟く。
「どうやらこのノリで何故か騎士の方々が納得なさったようですわね」
「中ニ病患者しかいないのか?」
なんかあったらどうすんだよ。
ワクワクしちゃった気持ちは分かるけども。
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