53 / 134
第一章
よし、分かった
しおりを挟む
「よし、分かった」
「今ので何が分かったんだ?」
こういう時でもすかさず返事をしてくれるネルス、愛してる。
不安そうな顔をしているアンネと目が合ったのでにっこり笑った。
「怒らないと言ったが私は怒ることにした!この場で火炙りにしてしまおう!」
我ながら棒読み。怒ることにしたって何。
しかし待合い室がドヨッとなったどよどよと。
あれだけ怒っていた3人ですら目を見開いて私を見ている。
「ひ、火炙り!?お前、いったいどうしたんだ!何を言われたんだ!」
大混乱のネルスが一番信じられないものを見る顔で私にしがみついて来た。
それと同時に、跪いていた内の1人が叫び声を上げて立ち上がり、逃げ出した。
「逃げられると思うのか?」
私が笑みを浮かべたまま指差して小さい声で詠唱すると、その生徒を赤い炎が包んだ。
もがいている人影が見えるが、声は何も聞こえない。
Aくんが悲鳴をあげるのが聞こえた。
私は表情はそのままで、出来る限り冷たく聞こえるような声を出す。
「エラルドから私に伝わったところで、どうせ笑って済まされると思ったんだろう。舐めすぎなんだ。そもそも、エラルドのことも怒らない男だと思ってたんじゃないか?計算が甘い」
「……!?」
もう1人の生徒は可哀想なくらい怯えて動けない。言葉も出てこないようだ。
見ている生徒たちも完全に固まっている。
さすがにやりすぎかな。
アレハンドロの方を見ると腕を組み口を閉ざし、ただ成り行きを見守っていた。
エラルドやバレットも神妙な表情で静かに見ている。
3人に私を止めようとする気配は全くなくて驚きだ。
止めてくれないとやめられないじゃないか。
私は始終笑顔のまま、ただただガタガタ震えて跪いている生徒に指を向ける。
「やめろシン!」
「シンさまやめてください!!」
私にしがみついたままだったネルスが腕を掴み、いつのまにかこちらまで走って来ていたアンネが叫びながら生徒と私の間に腕を開いて立ちはだかった。
2人の引き攣った必死の表情を見て、お灸を据えるならこの子たちを寝かせるなりなんなりしてからやるべきだったなぁと後悔した。失敗した。
しかし勇気ある行動だ。私が本当にキレてたら一緒に焼かれていたかもしれないのに。
「そうか。じゃあもうやめよう。」
止めるタイミングを貰った私は指をパチンと鳴らす。
すると、炎が消えて無傷の生徒が唖然と立ち尽くしていた。
それを見てAくんが駆け寄っている。
ごめんAくん、今度名前教えてくれ。
周囲から明らかに安堵の音が聞こえた。
「罰はこのくらいでいいか?スッキリしたか?」
私はもう何もしないよ、と両手を上げてひらひらと動かしながら、一瞬驚いた顔をして以降は眉ひとつ動かさなかった友人3人に話しかけた。
エラルドが頭をかきながら、バレットは未だ羽交締めにされたまま口を開いた。
「……スッキリ……シンは許しちゃうんじゃないかと思ってたから本当に怒ったように見えて驚いたけど。このくらいで済ませていいのか?」
「スッキリはしないな。髪だけでも本当に全部燃やしてやれば良かった」
嘘でしょこの2人、やりすぎだって言わないわ。
むしろ足りないって言ってる。
私が行動したことに驚いてるだけなんだ。感覚が違いすぎる。
「びっくりしたっびっくりした……!」
「こ、怖かったですっ!」
緊張が解けたからか、大粒の涙を零してえんえん泣いているネルスとアンネの頭を撫でる。
この2人くらいの可愛げが欲しい。
この2人も、もし「魔族と言われた」と伝えたら、「それなら仕方ないもっとやれ」っていうんだろうか?
想像すると体が冷える思いだ。答えは知りたくない。
ネルスが泣いてるの久々に見たな。人前で泣くほどのショックを与えてしまったごめんよ。
「悪かった悪かった。やりすぎたと反省している。もうしないから安心しろ」
かわいいので2人まとめてここぞとばかりにギュウギュウ抱きしめていると、アレハンドロが近づいてきた。
「シン」
「アレハンドロ。お前はどう思った。私としてはやりすぎなんだが」
少なくとも怒りは鎮まっているようで、私の問いに憎らしい笑みを浮かべた。
「演技が下手すぎて本気じゃないのがバレバレだった」
「その感想、一番恥ずかしいな。」
他のみんなは騙せてたっぽいのになんだこいつ。
「今ので何が分かったんだ?」
こういう時でもすかさず返事をしてくれるネルス、愛してる。
不安そうな顔をしているアンネと目が合ったのでにっこり笑った。
「怒らないと言ったが私は怒ることにした!この場で火炙りにしてしまおう!」
我ながら棒読み。怒ることにしたって何。
しかし待合い室がドヨッとなったどよどよと。
あれだけ怒っていた3人ですら目を見開いて私を見ている。
「ひ、火炙り!?お前、いったいどうしたんだ!何を言われたんだ!」
大混乱のネルスが一番信じられないものを見る顔で私にしがみついて来た。
それと同時に、跪いていた内の1人が叫び声を上げて立ち上がり、逃げ出した。
「逃げられると思うのか?」
私が笑みを浮かべたまま指差して小さい声で詠唱すると、その生徒を赤い炎が包んだ。
もがいている人影が見えるが、声は何も聞こえない。
Aくんが悲鳴をあげるのが聞こえた。
私は表情はそのままで、出来る限り冷たく聞こえるような声を出す。
「エラルドから私に伝わったところで、どうせ笑って済まされると思ったんだろう。舐めすぎなんだ。そもそも、エラルドのことも怒らない男だと思ってたんじゃないか?計算が甘い」
「……!?」
もう1人の生徒は可哀想なくらい怯えて動けない。言葉も出てこないようだ。
見ている生徒たちも完全に固まっている。
さすがにやりすぎかな。
アレハンドロの方を見ると腕を組み口を閉ざし、ただ成り行きを見守っていた。
エラルドやバレットも神妙な表情で静かに見ている。
3人に私を止めようとする気配は全くなくて驚きだ。
止めてくれないとやめられないじゃないか。
私は始終笑顔のまま、ただただガタガタ震えて跪いている生徒に指を向ける。
「やめろシン!」
「シンさまやめてください!!」
私にしがみついたままだったネルスが腕を掴み、いつのまにかこちらまで走って来ていたアンネが叫びながら生徒と私の間に腕を開いて立ちはだかった。
2人の引き攣った必死の表情を見て、お灸を据えるならこの子たちを寝かせるなりなんなりしてからやるべきだったなぁと後悔した。失敗した。
しかし勇気ある行動だ。私が本当にキレてたら一緒に焼かれていたかもしれないのに。
「そうか。じゃあもうやめよう。」
止めるタイミングを貰った私は指をパチンと鳴らす。
すると、炎が消えて無傷の生徒が唖然と立ち尽くしていた。
それを見てAくんが駆け寄っている。
ごめんAくん、今度名前教えてくれ。
周囲から明らかに安堵の音が聞こえた。
「罰はこのくらいでいいか?スッキリしたか?」
私はもう何もしないよ、と両手を上げてひらひらと動かしながら、一瞬驚いた顔をして以降は眉ひとつ動かさなかった友人3人に話しかけた。
エラルドが頭をかきながら、バレットは未だ羽交締めにされたまま口を開いた。
「……スッキリ……シンは許しちゃうんじゃないかと思ってたから本当に怒ったように見えて驚いたけど。このくらいで済ませていいのか?」
「スッキリはしないな。髪だけでも本当に全部燃やしてやれば良かった」
嘘でしょこの2人、やりすぎだって言わないわ。
むしろ足りないって言ってる。
私が行動したことに驚いてるだけなんだ。感覚が違いすぎる。
「びっくりしたっびっくりした……!」
「こ、怖かったですっ!」
緊張が解けたからか、大粒の涙を零してえんえん泣いているネルスとアンネの頭を撫でる。
この2人くらいの可愛げが欲しい。
この2人も、もし「魔族と言われた」と伝えたら、「それなら仕方ないもっとやれ」っていうんだろうか?
想像すると体が冷える思いだ。答えは知りたくない。
ネルスが泣いてるの久々に見たな。人前で泣くほどのショックを与えてしまったごめんよ。
「悪かった悪かった。やりすぎたと反省している。もうしないから安心しろ」
かわいいので2人まとめてここぞとばかりにギュウギュウ抱きしめていると、アレハンドロが近づいてきた。
「シン」
「アレハンドロ。お前はどう思った。私としてはやりすぎなんだが」
少なくとも怒りは鎮まっているようで、私の問いに憎らしい笑みを浮かべた。
「演技が下手すぎて本気じゃないのがバレバレだった」
「その感想、一番恥ずかしいな。」
他のみんなは騙せてたっぽいのになんだこいつ。
11
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる