子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第一章

よし、分かった

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「よし、分かった」
「今ので何が分かったんだ?」

 こういう時でもすかさず返事をしてくれるネルス、愛してる。
 不安そうな顔をしているアンネと目が合ったのでにっこり笑った。

「怒らないと言ったが私は怒ることにした!この場で火炙りにしてしまおう!」

 我ながら棒読み。怒ることにしたって何。

 しかし待合い室がドヨッとなったどよどよと。

 あれだけ怒っていた3人ですら目を見開いて私を見ている。

「ひ、火炙り!?お前、いったいどうしたんだ!何を言われたんだ!」

 大混乱のネルスが一番信じられないものを見る顔で私にしがみついて来た。
 それと同時に、跪いていた内の1人が叫び声を上げて立ち上がり、逃げ出した。

「逃げられると思うのか?」

 私が笑みを浮かべたまま指差して小さい声で詠唱すると、その生徒を赤い炎が包んだ。
 もがいている人影が見えるが、声は何も聞こえない。
 Aくんが悲鳴をあげるのが聞こえた。

 私は表情はそのままで、出来る限り冷たく聞こえるような声を出す。

「エラルドから私に伝わったところで、どうせ笑って済まされると思ったんだろう。舐めすぎなんだ。そもそも、エラルドのことも怒らない男だと思ってたんじゃないか?計算が甘い」
「……!?」

 もう1人の生徒は可哀想なくらい怯えて動けない。言葉も出てこないようだ。
 見ている生徒たちも完全に固まっている。

 さすがにやりすぎかな。

 アレハンドロの方を見ると腕を組み口を閉ざし、ただ成り行きを見守っていた。
 エラルドやバレットも神妙な表情で静かに見ている。
 3人に私を止めようとする気配は全くなくて驚きだ。

 止めてくれないとやめられないじゃないか。

 私は始終笑顔のまま、ただただガタガタ震えて跪いている生徒に指を向ける。

「やめろシン!」
「シンさまやめてください!!」

 私にしがみついたままだったネルスが腕を掴み、いつのまにかこちらまで走って来ていたアンネが叫びながら生徒と私の間に腕を開いて立ちはだかった。

 2人の引き攣った必死の表情を見て、お灸を据えるならこの子たちを寝かせるなりなんなりしてからやるべきだったなぁと後悔した。失敗した。

 しかし勇気ある行動だ。私が本当にキレてたら一緒に焼かれていたかもしれないのに。

「そうか。じゃあもうやめよう。」

 止めるタイミングを貰った私は指をパチンと鳴らす。
 すると、炎が消えて無傷の生徒が唖然と立ち尽くしていた。
 それを見てAくんが駆け寄っている。
 ごめんAくん、今度名前教えてくれ。
 
 周囲から明らかに安堵の音が聞こえた。

「罰はこのくらいでいいか?スッキリしたか?」

 私はもう何もしないよ、と両手を上げてひらひらと動かしながら、一瞬驚いた顔をして以降は眉ひとつ動かさなかった友人3人に話しかけた。

 エラルドが頭をかきながら、バレットは未だ羽交締めにされたまま口を開いた。

「……スッキリ……シンは許しちゃうんじゃないかと思ってたから本当に怒ったように見えて驚いたけど。このくらいで済ませていいのか?」
「スッキリはしないな。髪だけでも本当に全部燃やしてやれば良かった」

 嘘でしょこの2人、やりすぎだって言わないわ。
 むしろ足りないって言ってる。
 私が行動したことに驚いてるだけなんだ。感覚が違いすぎる。

「びっくりしたっびっくりした……!」
「こ、怖かったですっ!」

 緊張が解けたからか、大粒の涙を零してえんえん泣いているネルスとアンネの頭を撫でる。
 この2人くらいの可愛げが欲しい。

 この2人も、もし「魔族と言われた」と伝えたら、「それなら仕方ないもっとやれ」っていうんだろうか?
 想像すると体が冷える思いだ。答えは知りたくない。

 ネルスが泣いてるの久々に見たな。人前で泣くほどのショックを与えてしまったごめんよ。

「悪かった悪かった。やりすぎたと反省している。もうしないから安心しろ」
 かわいいので2人まとめてここぞとばかりにギュウギュウ抱きしめていると、アレハンドロが近づいてきた。

「シン」
「アレハンドロ。お前はどう思った。私としてはやりすぎなんだが」

 少なくとも怒りは鎮まっているようで、私の問いに憎らしい笑みを浮かべた。

「演技が下手すぎて本気じゃないのがバレバレだった」
「その感想、一番恥ずかしいな。」

 他のみんなは騙せてたっぽいのになんだこいつ。
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