1 / 134
第一章
シン・デルフィニウム
しおりを挟む
「貴様、私が誰か分かっているのか」
太陽を反射し光り輝く銀色の髪。
対象を刺すように見据える深く暗い緑の瞳。
そして空気を震わせる低く威圧的な声に、周囲が息を呑むのが分かる。
目の前に居るのはこの国の誰もが知っている青年だ。
「はい、皇太子、アレハンドロ・キナロイデス殿下。僭越ながら申し上げます」
しかし、恐怖は感じない。
最高の身分の人間とはいえ、たかだか15年と少し生きただけの男の子なのだから。
正しいと思うことは正しい、間違っていると思うことは間違っていると言わせてもらう。
「この程度のことで、これから学友となる彼女を処断するのは器が小さすぎる、と。」
ただ我ながら言い方は悪かったか。
凛とした声が校舎前の広場に想定よりも大きく響き渡り、完全に空気が凍りつく気配を感じて内心では頭を抱えた。
思わず言った言葉には本音が出過ぎている。
皇太子殿下の眉が寄せられ、不快感と敵意が露わになった。
――ああ――
――平穏無事に学園生活を終えなければならないというのに――
◇
私の名前はシン・デルフィニウム。
アーノルド帝国の商業の要、サルイア領を任される、デルフィニウム公爵家の長男としてこの世に生まれた。
父親譲りの柔らかく波打つ金髪に碧い瞳、母親譲りの白い肌。
どちらにも似ている美しく整った小さな顔。
程よく付いた筋肉にすらりとした手足、優美な物腰。
圧迫感を与えない程度の高身長。
耳に心地よいバリトンボイス。
体術剣術馬術などの運動能力に優れ、一度見聞きしたものは忘れない頭脳を持つ。
中でも特筆すべきは魔術の才能。
3歳という幼さで、簡易詠唱にて高度な術式を操った。
端的に言うと、身分が高く金も有り顔良しスタイルよしでめちゃくちゃ強い。
チートである。
そう、何度もいうが私は身分が高く金も有る家に産まれる幸運を持つ上、なんか知らんが体はよく動き魔法だか魔術だかもめちゃくちゃ上手にできる。
だからめちゃくちゃ強い。
しかも美男美女の両親の下に生まれたので、鏡を見るだけで美少年と美青年の間の貴重な時期を過ごしている美形を見ることが出来る。
幸せ真っ只中だ。
ナルシスト?事実なのだから仕方がない。
しかし、私は私であって私ではないのだ。
いや、産まれてから15年、ずっと私であったのだから私ではあるのだが。
実は中身は現代日本に生きる30代腐女子。
既婚、世界一可愛い子ども1人、職業は専業主婦。専業主婦が職業なのか否かは議論する気はない。
日々の癒しは我が子と二次元、日々のストレスは子育ての面倒で難しい部分と家事と時々、そう、時々ね、夫。
そんな平凡を絵に描いたような私が何故、チートな美形貴族になって皇太子殿下に物申しているのか。
正直意味不明な状況だ。
どんなシチュエーションだ皇太子に物申すって。
太陽を反射し光り輝く銀色の髪。
対象を刺すように見据える深く暗い緑の瞳。
そして空気を震わせる低く威圧的な声に、周囲が息を呑むのが分かる。
目の前に居るのはこの国の誰もが知っている青年だ。
「はい、皇太子、アレハンドロ・キナロイデス殿下。僭越ながら申し上げます」
しかし、恐怖は感じない。
最高の身分の人間とはいえ、たかだか15年と少し生きただけの男の子なのだから。
正しいと思うことは正しい、間違っていると思うことは間違っていると言わせてもらう。
「この程度のことで、これから学友となる彼女を処断するのは器が小さすぎる、と。」
ただ我ながら言い方は悪かったか。
凛とした声が校舎前の広場に想定よりも大きく響き渡り、完全に空気が凍りつく気配を感じて内心では頭を抱えた。
思わず言った言葉には本音が出過ぎている。
皇太子殿下の眉が寄せられ、不快感と敵意が露わになった。
――ああ――
――平穏無事に学園生活を終えなければならないというのに――
◇
私の名前はシン・デルフィニウム。
アーノルド帝国の商業の要、サルイア領を任される、デルフィニウム公爵家の長男としてこの世に生まれた。
父親譲りの柔らかく波打つ金髪に碧い瞳、母親譲りの白い肌。
どちらにも似ている美しく整った小さな顔。
程よく付いた筋肉にすらりとした手足、優美な物腰。
圧迫感を与えない程度の高身長。
耳に心地よいバリトンボイス。
体術剣術馬術などの運動能力に優れ、一度見聞きしたものは忘れない頭脳を持つ。
中でも特筆すべきは魔術の才能。
3歳という幼さで、簡易詠唱にて高度な術式を操った。
端的に言うと、身分が高く金も有り顔良しスタイルよしでめちゃくちゃ強い。
チートである。
そう、何度もいうが私は身分が高く金も有る家に産まれる幸運を持つ上、なんか知らんが体はよく動き魔法だか魔術だかもめちゃくちゃ上手にできる。
だからめちゃくちゃ強い。
しかも美男美女の両親の下に生まれたので、鏡を見るだけで美少年と美青年の間の貴重な時期を過ごしている美形を見ることが出来る。
幸せ真っ只中だ。
ナルシスト?事実なのだから仕方がない。
しかし、私は私であって私ではないのだ。
いや、産まれてから15年、ずっと私であったのだから私ではあるのだが。
実は中身は現代日本に生きる30代腐女子。
既婚、世界一可愛い子ども1人、職業は専業主婦。専業主婦が職業なのか否かは議論する気はない。
日々の癒しは我が子と二次元、日々のストレスは子育ての面倒で難しい部分と家事と時々、そう、時々ね、夫。
そんな平凡を絵に描いたような私が何故、チートな美形貴族になって皇太子殿下に物申しているのか。
正直意味不明な状況だ。
どんなシチュエーションだ皇太子に物申すって。
14
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる