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もし戯曲の登場人物であるとすれば。
私は無様に散る悪役なのだろう。
このまま、相応しい散り方をさせてほしい。
「婚約解消?」
「は、はい。先ほどエマ殿下と勇者さまがお二人で宣言なさいました」
膝をついて項垂れる兵士は信じられないことだという風だが、立っている方の男は眉ひとつ動かさない。
ランプと月明かりのみが照らす石造りの回廊。
昼間は白く爽やかな雰囲気のそこも、今は薄暗くどこか重々しい空気になっていた。
「そうか」
後頭部で束ねた長い金糸が風で揺れる。
男はただ短く答え、濃紺のマントを翻して歩き出した。
兵士は他にも伝える相手がいるらしく、会釈して反対方向に走り出す。
足音が遠くなるのを感じながら、男は闇夜に浮かぶ月へと目をやった。
(私が魔王軍の残党を処理している間に、そんなことになっていようとは)
世界を救った英雄と、この帝国の皇位継承権第一位である姉の姿を頭に思い描く。
形のいい唇が緩やかな弧を描くのを、仄かな光がそっと浮かび上がらせた。
「あの二人なら、そうなるだろうな」
本人にしか聞こえない呟き。
それは再び吹いた風に乗って、何処か遠くへと消えていった。
私は無様に散る悪役なのだろう。
このまま、相応しい散り方をさせてほしい。
「婚約解消?」
「は、はい。先ほどエマ殿下と勇者さまがお二人で宣言なさいました」
膝をついて項垂れる兵士は信じられないことだという風だが、立っている方の男は眉ひとつ動かさない。
ランプと月明かりのみが照らす石造りの回廊。
昼間は白く爽やかな雰囲気のそこも、今は薄暗くどこか重々しい空気になっていた。
「そうか」
後頭部で束ねた長い金糸が風で揺れる。
男はただ短く答え、濃紺のマントを翻して歩き出した。
兵士は他にも伝える相手がいるらしく、会釈して反対方向に走り出す。
足音が遠くなるのを感じながら、男は闇夜に浮かぶ月へと目をやった。
(私が魔王軍の残党を処理している間に、そんなことになっていようとは)
世界を救った英雄と、この帝国の皇位継承権第一位である姉の姿を頭に思い描く。
形のいい唇が緩やかな弧を描くのを、仄かな光がそっと浮かび上がらせた。
「あの二人なら、そうなるだろうな」
本人にしか聞こえない呟き。
それは再び吹いた風に乗って、何処か遠くへと消えていった。
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