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コッチの番だ(終)※

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 お互いに、一糸纏わぬ姿で重なり合っている。

 秘部にはすでに指が三本突き入れられ、中を蹂躙していた。
 本来は受け入れる機能の無いはずのその場所は、洗面台から勝手に拝借した椿油によって淫らな音をたてながら柔らかくほぐされている。

 大上が着ていた制服のシャツで乱雑に、しかしキツく頭の上で纏め上げられた手首。そのシャツの端はベッドに括り付けられていて、自由が利かない。

 前立腺に受ける刺激で、何度も絶頂を迎えそうな快楽を与えられている。
 しかし初めてではそこだけでは達せない。
 その上、先走りの雫をとめどなく流す自身の根本は、髪を束ねる用のゴムで縛られていた。

(クッソ……! 女ども、なんつーもん、渡してんだよ……!)

 花の飾りのついたゴムは、眉を整える際に貰ったのだと言っていた。
 何の変哲もない物であるが、腰を動かすたびに飾りの金属部分が触れて、今の宍戸にとっては最悪の障害になっていた。

 涙を浮かべた顔を紅潮させ、息も絶え絶えに啼き声を上げる宍戸を、大上は興奮した顔で見下ろしてくる。
 指を引き抜くと、固く猛った大上自身の先端を柔らかくなった入り口に擦り付ける。

 ローションを纏ったコンドームの質感に引きそうになる宍戸の腰は、指の長い手にしっかりと捕まえられた。

「俺もそろそろ、イッてる顔見てぇし、入れてぇんだけど……?」
「ま、待て入るかそんな……ぁあっ!」

 ヒクつき期待している身体とは裏腹に首を振る。
 しかし胸の突起を強く吸われて大きく体が跳ね、嬌声が上がった。

「また、待て、か?」

 舌の上で突起を転がされると、その動きに合わせて腰が揺れる。ジン、と腹の奥が熱くなっていく。
 宍戸は強く目を瞑った。

「ひぅ……! …っきだ…!」
「ん?」
「すき、だ……! オラ! 言ったから早く…ぁ…っ」

 やっと絞り出した言葉だったが、あまりにも投げやりすぎた。もともと気が長い方ではない大上は我慢の限界を迎える。

「んな言い方で許すか…!」

 宍戸の膝を折り曲げ大きく開かせると、入り口で遊ばせるだけだった先端を押し進めた。

「ア……! くるし、…っいてぇ…って、んン…!」

 感じたことのない質量の侵入に、口をぱくぱくと開閉させる。ナカはとても狭く、大上の方も息を詰めてゆっくりと割り進めてくる。
 全てが収まると、体の奥を擦るように突いた。
 そうすると、先程まで苦痛に歪んでいた宍戸が再び甘く喘ぎ始める。

「は、ん……! あっ……そこ、ア……」

 その声や呼吸に合わせて、少しずつ突き上げる動きが大きくなっていく。
 逃げられない強い刺激に呼吸がままならなくなる。
 頭が真っ白になっていく。
 中心の熱が限界を迎えようとしていた。

「ムリ、むりだむり……! イク、出せないのにイ……! やだ、やだ、おおがみ、ヤダぁ……!」

 理性など、恥など、捨てるしかなかった。
 宍戸は大粒の涙を零しながら大上を見上げ、懇願する。

「……っ、別人かよ……!」

 想像を超える痴態を見せる宍戸に、大上は生唾を飲む。
 険しい表情をしながら欲望のままに、奥を突き上げる出し入れを繰り返される。
 それに合わせて高い声が上がるのを止められない。

「はずして、イカせ……! たのむ、おねがいっおおがみぃ……!」
「……くそ……っ!」
「……ぁ……」

 吐き捨てながら動きが止まる。
 大上の理性を壊す、甘く切ない声を聞きながら頭の上で結んでいた腕を解放した。
 自由になった手は、すぐに大上の肩を掴んで爪を食い込ませる。

「バカ、こっちじゃな、……!」
「わぁってる……!」

 大上の熱い手が根本を握り込む。
 堰き止めていたゴムを外しながら先端まで一気に撫で上げられた。

 ようやく、快楽に身を任せることができる。
 首に抱きつき、足を腰に強く絡みつけた。最奥に大上のものが当たる。

「あぁあア……っ!」

 一際、大きな声が上がった。
 双方の腹部が白く濡れる。
 それと同時に内壁が吸い付き、ナカの大上も絶頂を促された。

「……っ!」

 宍戸のナカでそのまま欲望を吐き出した。
 大上が達したのを感じて宍戸はビクビクと体を痙攣させる。

「ぁ……」

 焦点の合わない目をしている宍戸の頬を大上がそっと撫でる。柔らかく滑らかな肌は、快楽の涙で濡れていた。
 浅く上下する胸も息遣いも愛おしく、達したばかりでまだ敏感な体を労わるように撫でる。

「はは……っ、チョロいな童貞野郎が……!」
「……! ああ?」

 慈しむように動かしていた大上の手を、宍戸が笑い声を出すと共に突然掴んだ。
 そして、つい先ほどまで力の抜けきっていた上体を起こす。

 完全に無防備になっていた大上が状況把握する前に、肩を掴んで強く押した。

「好き勝手しやがって……!」

 大上の背を乱暴にベッドに押しつけ、宍戸はそこに馬乗りになった。
 体勢がひっくり返る。
 綺麗な顔が何も言えないまま、目を見開いて見上げてくるのは気分が良い。
 宍戸は挑発的な表情をしながら、舌で自分の唇を舐める。

「スッキリしたから今度はコッチの番だ」
「イキってるとこ悪ぃけど、これはこれで最高の眺めだぞ」

 まだ朱に染まったままの頬に濡れた目元と唇。
 汗ばんだ体、大上に可愛がられツンと立った胸の飾り。宍戸の快楽の証である腹部の白い液体の汚れ。
 全てが大上の目線から見上げることができる。
 宍戸は、口の片端を上げて大上の顎に手を添えた。

「んじゃ、その眺め堪能してろよ」
「……っん、」

 唇を重ねると、早急に舌を差し入れる。何の抵抗もなく受け入れる大上の熱い口内を探って舌を絡め合った。
 くちゅ、と唾液が混ざり合う音が鳴る。
 呼吸を忘れるほどに、貪り合う。
 徐々に体が密着していき、体温を分け合う。
 互いの達したばかりのモノが、再び形を持って触れ合った。

「ぁ、ふ……」
「……は、っ」

 息継ぎのために唇が離れると、互いの温度を感じる息を吸い合うような形になる。
 宍戸は両手で大上の頬を掴み、細い眉を寄せて睨むように、真剣に瞳を見つめた。

「何回も言わねぇから耳かっぽじってよく聞きやがれ」

 大上は黙って、期待を込めた瞳で見つめ返す。

「お前が好きだ、大上」

 唇が綻ぶと共に、大上の眉が泣きそうに歪んだ。

「……どんだけ引っ張ってんだよ……」

 長くしなやかな腕が宍戸の頭を抱きしめ、そこに頬を寄せる。
 甘えているような、甘やかすような柔らかい声に、少し拗ねた色を含む宍戸の声が答える。

「言わされんのは、癪なんだよ」
「……は、もう……なんでもいい……」

 脱力した、しかし幸せそうな大上が宍戸の銀髪に口づける。
 それに応えるように顔を上げると、宍戸は大上の頬に唇を触れさせた。
 
 そして、どちらともなくキスをした。
 
 
                    完
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