花嫁はお前だろ?〜揉めた末、虎王子に食われるライオン皇子の物語〜

きよひ

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雄の抱き方※

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「んっ……んぅ……!」

 黒いベッドの上にダークブロンドの艶やかな髪が散る。
 膝を立て大きく開いたディランの足の間に、影千代が挟まり覆いかぶさっている。
 ディランの太ももには、無数の紅い痕が散っていた。
 誰にも触れさせたことがなく、見せたこともないディランの秘所には、影千代の二本の指が埋まっている。
 重なり合う二人の汗ばんだ体は下着すら纏っておらず、衣服はベッドの傍の白いカーペットに乱雑に脱ぎ捨てられていた。

 ディランの部屋に着いた時、どちらが抱くか抱かれるかを話し合った。
 酒に酔って影千代を誘った時に「気持ち良くしてやる」と言っておいて寝てしまったディランはそのことをずっと気にしていたのだ。
 今度こそ、と思って主導権を握りたいと申し出たのだが。

「雄の抱き方は知っているのか?」

 と、笑顔で痛いところを突かれてしまった。
 更に、

「抱かれる側は、違う気持ち良さがあるぞ」

 という影千代の口車に乗って、今回は任せることにしたのだ。

 そして今。
 影千代の指が内壁を押し開くように動くのを、ディランは両手の甲を口に当てて耐えた。
 不思議なことに不快感は全くない。
 ただでさえ触れられるのが久々の体は、初めて思いの通じ合った相手との行為にすぐにとろけていった。

 今まで知らなかった敏感な部分を発掘され、快楽に浮いた声が漏れそうになるのを必死に抑え込むことになっている。

 本来は何かを受け入れるための場所ではないソコは、影千代が用意していた潤滑油のおかげですんなりと指を受け入れた。
 浄化作用のある植物からとれるというその油はぐちゅりと後孔から濡れた音を発し、ディランの羞恥心を煽る。
 影千代はディランの体や表情を見下ろし堪能しながら熱い息を吐く。

「気持ちよさそうだな」

 影千代を見上げるディランの目には快楽の涙が浮かんでいる。
 その瞳に映るのは、影千代の欲を孕んだ端正な顔。
 そしてディランよりも筋肉がついて一回りは大きく見える引き締まった肉体。

 常に衣服を崩さなかった影千代の裸を直視するのは初めてであった。
 川で脱いだ時はは見ている余裕は一切なかったし、酒の勢いでベッドに上がった時も浴衣は着たままだったからだ。

(やべぇ……興奮する……)

 鍛え上げられた雄の体など見慣れているにも関わらず、行為の最中ずっと目が離せない。
 羞恥で顔を隠したり目を閉じたりしたい気持ちに駆られても、影千代が見えなくなるのは嫌だった。
 その結果、感じ入って恍惚とした顔を影千代に晒すことになったとしても。

 影千代は顔を胸に埋め、突起に舌を這わせる。もう片方の飾りも指先で摘まんだ。

「ひぅんっ……そこ、もっと……!」

 体を跳ねさせたディランは甘い声を出した。
 ずいぶんと可愛がられたそこは、常よりも赤くぷっくりと色付き、食われるのを待っているかのようだ。
 慣れない刺激に最初は抵抗していたディランも、次第に素直によがるようになっていた。
 影千代は満足げに口元を緩めて、軽く牙を立てた。

「んんぅ!!」
「前も思ったが、胸が弱いな」
「……ぁっ、やっぱり覚えてたの、かよ!」

 呟かれた言葉に、ディランは思わず口から手を離した。
 無かったことにしているだけなのだと思ってはいたが、改めて覚えていると認められると居た堪れなかった。

「ああ。人を煽るだけ煽って寝てしまったお前の寝顔を見ながら処理したのは良い思い出だな」
「そ、それは心から謝る……ん? てことは……ゃぁっ」

 胸に意識を奪われていると、突如後孔を拓く指も主張を再開して腰が浮く。
 快感の小波に襲われながらも、以前の醜態を覚えられていたディランは血の気が引く思いだった。

 しかも「寝顔を見ながら処理」と影千代は言った。
 ベッドや衣服を整えてくれていたことだろうか。
 だが、そんなことを恩着せがましくするような人柄ではない。

 顔を上げた影千代の目は笑っておらず、しっかりと根に持っていることが伺える。
 おそらくディランの隣で、自身を慰めていたのだ。

 自分から仕掛けておいて寝てしまった思い人の隣で、と想像すると可哀想な光景だ。

「悪かっ、たぁあんっ」
「ごめんなさいは?」

 ディランは鎖骨を甘噛みされながら中の敏感な箇所も擦られてしまい、上手く舌が回らなくなる。

「ごめ……ぁっぁっ……! もう、いたい、いきたいぃ」

 信じられないことに、部屋に来てからまだ一度も直接触れられていない中心が完全に勃ち上がっている。
 影千代の尾がディランの足の付け根を這う。そして、雫を垂らしている熱に、触れるか触れないかのところで引いていった。

 焦れて腰を揺らし懇願するディランに、影千代は意地悪く笑いかける。

「私がどれほど我慢したと思ってる?」
「あぅっ」

 口を動かしながら、ナカで蠢く指が二本から三本に増える。

「結婚式で一目惚れした相手に『愛人は好きにしよう』と言われ。だが雄同士、仕方なしと了承した。それでも初夜に呼ばれたから少しは希望があるかと思ったら他の雌と共にいた」

 当時のディランはそもそも好意を持たれていることを知らなかった。
 驚かせたいという悪戯心があったのは事実だが、本気で影千代も楽しいのではないかと考えた上での初夜ではあったのだ。
 しかし、改めて言われると、とんでもない雄だなと我がことながら呆れる。

 そしてそうしている間にも、もう後ろだけで達してしまえるのではないかと思うほどに、熱が昇り詰めていた。
 耳がぴくぴくとヒクつく。

「ふ、ゃああ」
「目の前にある艶やかな身体を怒りに任せて犯したりせず、部屋に戻ったことを褒めて貰いたいくらいだ」
「っだからあやまっ……、恨み節がしつけぇ……っぁあ!」

 爪の先で内壁のしこりを引っ掻かれたかと思うと、指が引き抜かれてしまった。
 すぐそこまでキていた絶頂が遠のき、腹の奥が切ない。
 ディランは涙を溢れさせながら影千代の髪を恨みがましく掴んだ。
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