社畜兎は優しいお猫様に甘やかされる

きよひ

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嬉しい

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「ったく……。で、さ……俺、久々に明日丸一日休みなんだよ。そのために今日、仕事全部終わらせてきたんだ」
「ソーマ、それって」

 セイの瞳が期待と喜びできらめいた。長くしなやかな尾がピンと立つ。
 ソーマと比べて常に涼やかで余裕のある様子であるセイには珍しい。なかなか見ることのできない表情だ。

 休みを渋る上司と交渉した甲斐があったと、ソーマは内心ガッツポーズをとった。

「プレゼントは俺の時間! ……なんて」
「時間、じゃなくて、『俺』っていうものだろ」

 耳をピコピコさせながら得意気に歯を見せるソーマの額に、セイは自分の額を軽く合わせた。

「お、俺はもうお前のだろ? 明日はセイが喜びそうなデートコース考えるからさ! 一日中デートしよう!」
「……一日デートなんて、久しぶりだな。なぁ、俺が行きたいところ決めてもいいか?」
「おお、もちろん! その方が嬉しい!」
「ありがとう」

 セイはソーマの鼻の頭に軽く唇を触れさせた。
 そこから、頬、瞼、額と点々と顔中にキスの雨を降らせる。
 こそばゆく、かつ幸福を感じながらそれをソーマは受け入れていた。

「ん、んぅ……」

 唇同士が重なると、セイの舌が性急に口内を犯す。
 ソーマが応えようと舌を動かすと、セイのざらりとした舌が絡んでくる。

 互いの唾液を混ぜ合う水音が玄関に響く。

「は、ぁ……っやっ……」

 セイの手がソーマの丸い尾を撫でる。
 尻尾でされるよりも直接的な刺激に甘い声が零れた。
 唇が離れた拍子に溢れた唾液が顎へと伝っていく。

 その唾液を舌で舐めとりながらも、セイは尾の付け根を弄る手を止めない。
 刺激のせいで潤むソーマの黒い瞳を、欲の孕んだ緑の瞳で見つめていた。

「ソーマ……可愛い顔……」
「……ぁッ……セイ、そんな触られたら、俺……っ」

 熱い吐息を吐きながら、ついにソーマの膝は崩れ落ちていく。
 体が床につく前にセイに抱き留められたかと思うと、そのまま横抱きにされた。
 予想しない浮遊感に身を硬くする。

「せ、セイ……?」
「悪い。ソーマは疲れてるのに、あまりにも嬉しすぎてこんなところで」
「そ、そんなの気にするなよ……。それより重いだろ? 歩くから肩だけ貸してくれ」
「風呂までくらい、運べるさ」

 細身に見えて筋力のあるセイの足取りはぶれることなく危なげなく、ソーマを脱衣所まで連れて行った。

 セイは背中を流すと言ったが、ソーマは申し訳なさから一人で出来ると言い切ってしまった。

(うう……しまった遠慮せずに一緒に入ってもらえば……今頃セイと……)

 熱の孕んだ体を洗いながらうなだれる。
 申し出を受け入れていれば、主張を始めていた中心をセイが可愛がってくれただろうと想像してしまう。
 一人になった途端に怠さが勝って、自分で昂りを処理しようという気にもならなかった。

 だが風呂に促されたということは、出てから先ほどの続きが出来るかもしれない。
 ソーマは普段よりも丁寧に体を洗う。特に下半身は念入りに。

 しかしその思いもむなしく。

 身体を拭いてセイにドライヤーを当ててもらっているところで、ソーマの意識は途切れてしまった。

 セイは膝にもたれ掛かっているソーマの無防備な寝顔を愛おしげに眺める。
 そして学生時代より随分と痩せた頬を撫でたとき、整った形の眉を悲し気に寄せた。 
 
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