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番外編 ティーグレ目線
一番のハッピーエンドとは 3
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必ずやピングも一緒にハッピーエンドを迎えようと決めたティーグレだったが、彼はまだ子ども。
前世での記憶はあるものの一般常識やゲーム関連のこと以外はあやふやで、精神年齢は外見通りだった。
攻略本をポンっと渡された子供にすぎない。
ピングを守るためにまずしたことは、とにかくそばにいることだった。
一緒に勉強したり剣術の稽古をしたり、休憩中には子供らしく走り回ったりと友人として過ごす。
皇后もピングの乳母をしていたティーグレの母も、これには大喜びだった。
必然的にティーグレは母親といる時間も増えて良いこと尽くし。
2人とも、何のトラブルにも見舞われずに育っていくことになる。
「ティーグレ、今日はお前が好きなトロトロチョコの入ったケーキを用意するように頼んでおいたんだ!」
「俺のためみたいに言ってるけど、ピング殿下が食べたかったんでしょ?」
「そんなこと言うなら私だけで食べる!」
「嘘です嘘です! ありがとうございますいただきます!」
素直に泣いて怒って笑って、表情がクルクル変わるピングを見ているのが楽しかった。
ピングが一生懸命に努力するのを一番近くで感じ、実を結ばず落ち込むときには寄り添った。
こんなに頑張っている人が、何も報われないまま死んで良いはずがない。
共に過ごす時間が重なれば重なるほど、必ず守ると言う気持ちが心に積もって固められていく。
だんだん記憶に体と精神が追い付くにつれて、ゲームの内容も詳しく思い出していった。
その中で、ティーグレは光を見出す。
パーフェクトハッピーエンド、とファンの中で呼ばれているストーリーがあるのだ。
全ての攻略対象をクリアした場合にのみ出てくるおまけルートで、リョウイチとピングが恋人になるルート。
通常のストーリーでのリョウイチは、一番初めにアトヴァルと出会う。誰のルートに分岐するにしても、そのオープニングは変わらない。
だがピングルートでは、ピングと一番最初に出会うのだ。
天使のように可愛いピングにリョウイチが一目惚れし、ピングは気さくに話しかけてくれるリョウイチに恋をする。
その後はリョウイチがピングと居残りして、他のキャラクターのやり取りを覗き見して、二人で他のキャラクターたちの問題を解決して。
自己肯定感が底辺に落ちているピングの心の棘が少しずつ抜けていく。
ストーリーを通して順調に仲を深めて、最後はリョウイチがピングに告白して終わる純情ストーリー。
基本的に体を合体させることで仲が深まっていく、18禁ゲームらしい他のルートとは一線を画す内容だった。
ストーリー分岐もなく、何を選んでも良い感じに進んでいく。おまけ、というのが相応しいルート。
アトヴァル推しだったティーグレの前世は、
「へー」
と思いながら軽く流しプレイして終わってしまっていたようだ。
だが今のティーグレにとっては、目指すべきはそこだった。
アトヴァルとの和解ルートでもピングは生存できるけれど、条件が厳しい。
それに比べてリョウイチとピングが恋に落ちる条件は「リョウイチが学園で最初に出会う相手をピングにする」だけなのだから。
後は流れに任せれば、大した問題も起こらずピングとリョウイチは両思いになる。
ピングは命の危険に晒されることもない。
アトヴァルとのイベントを発生させるためにリョウイチを誘導したり、他のキャラクターたちをリョウイチから遠ざけるために走り回ったりする必要もなかった。
(絶対、ピングとリョウイチを恋人同士にする)
ティーグレは本気でそう思っていたのだ。
リョウイチが転入してくるその日までは。
「今日は転入生が来るらしいですよ。この学園の代表として、一番に顔を見せてあげたらどうですか?」
「そうだな! きっと緊張してるだろうし、そうしよう!」
適当な理由でリョウイチに出会うようにティーグレが誘導したところ、ピングは快諾した。
(かわいい)
鼻歌を奏でながらスキップで校門へと向かう後ろ姿を眺め、ティーグレは目を細める。
リョウイチと恋に落ちれば、ピングの幸せは約束される。
アトヴァルとも上手く行く上、ローボ、オルソ、担任のシュエットも幸せな2人の味方になる。
何よりもティーグレが、ピングの幸せを阻む者を許さない。
やっとここまできたのだ。必ずパーフェクトハッピーエンドにしなければ。
ストーリーの最後に出てくる2人の仲睦まじいイラストを思い出し、ティーグレは口元を緩めようとした。
(…………ハッピーエンド…………)
脳裏に描かれたのはこの世の幸福を一身に集めるような笑顔を浮かべたピングの顔。
細い腰には逞しい腕が回っていて、リョウイチが金色の髪に頬を寄せて微笑んでいる。
2人でリョウイチの使い魔のドラゴンに乗って、大空を飛ぶイラストだ。
不意に、ティーグレの中で黒い何かが渦巻き始める。
腹なのか胸なのか頭なのか。
どこからかは分からないが、得体の知れないその感情は急激にティーグレを侵食した。
(その、場所は)
「わぁああ!」
突然ピングの悲鳴が鼓膜を揺らし、ティーグレは我に帰った。
顔を上げれば、ホワイトタイガーがピングのローブを咥えて、自分の背中へと放り投げているところだった。
目を白黒させているピングが、なんとかホワイトタイガーにしがみついて振り返ってくる。
「な、なんだティーグレ!?」
「え、え!? 俺、何もしてない……! おい待て言うことを……っ」
大慌てで駆け寄ったティーグレが戻るように指示を出しても全く言うことを聞かない。
それどころか、ティーグレも同じように背中に乗せられた。
浮遊感の後、ふわふわの毛皮の上に尻で着地したかと思うと、ホワイトタイガーは空高く駆け上がる。
前世での記憶はあるものの一般常識やゲーム関連のこと以外はあやふやで、精神年齢は外見通りだった。
攻略本をポンっと渡された子供にすぎない。
ピングを守るためにまずしたことは、とにかくそばにいることだった。
一緒に勉強したり剣術の稽古をしたり、休憩中には子供らしく走り回ったりと友人として過ごす。
皇后もピングの乳母をしていたティーグレの母も、これには大喜びだった。
必然的にティーグレは母親といる時間も増えて良いこと尽くし。
2人とも、何のトラブルにも見舞われずに育っていくことになる。
「ティーグレ、今日はお前が好きなトロトロチョコの入ったケーキを用意するように頼んでおいたんだ!」
「俺のためみたいに言ってるけど、ピング殿下が食べたかったんでしょ?」
「そんなこと言うなら私だけで食べる!」
「嘘です嘘です! ありがとうございますいただきます!」
素直に泣いて怒って笑って、表情がクルクル変わるピングを見ているのが楽しかった。
ピングが一生懸命に努力するのを一番近くで感じ、実を結ばず落ち込むときには寄り添った。
こんなに頑張っている人が、何も報われないまま死んで良いはずがない。
共に過ごす時間が重なれば重なるほど、必ず守ると言う気持ちが心に積もって固められていく。
だんだん記憶に体と精神が追い付くにつれて、ゲームの内容も詳しく思い出していった。
その中で、ティーグレは光を見出す。
パーフェクトハッピーエンド、とファンの中で呼ばれているストーリーがあるのだ。
全ての攻略対象をクリアした場合にのみ出てくるおまけルートで、リョウイチとピングが恋人になるルート。
通常のストーリーでのリョウイチは、一番初めにアトヴァルと出会う。誰のルートに分岐するにしても、そのオープニングは変わらない。
だがピングルートでは、ピングと一番最初に出会うのだ。
天使のように可愛いピングにリョウイチが一目惚れし、ピングは気さくに話しかけてくれるリョウイチに恋をする。
その後はリョウイチがピングと居残りして、他のキャラクターのやり取りを覗き見して、二人で他のキャラクターたちの問題を解決して。
自己肯定感が底辺に落ちているピングの心の棘が少しずつ抜けていく。
ストーリーを通して順調に仲を深めて、最後はリョウイチがピングに告白して終わる純情ストーリー。
基本的に体を合体させることで仲が深まっていく、18禁ゲームらしい他のルートとは一線を画す内容だった。
ストーリー分岐もなく、何を選んでも良い感じに進んでいく。おまけ、というのが相応しいルート。
アトヴァル推しだったティーグレの前世は、
「へー」
と思いながら軽く流しプレイして終わってしまっていたようだ。
だが今のティーグレにとっては、目指すべきはそこだった。
アトヴァルとの和解ルートでもピングは生存できるけれど、条件が厳しい。
それに比べてリョウイチとピングが恋に落ちる条件は「リョウイチが学園で最初に出会う相手をピングにする」だけなのだから。
後は流れに任せれば、大した問題も起こらずピングとリョウイチは両思いになる。
ピングは命の危険に晒されることもない。
アトヴァルとのイベントを発生させるためにリョウイチを誘導したり、他のキャラクターたちをリョウイチから遠ざけるために走り回ったりする必要もなかった。
(絶対、ピングとリョウイチを恋人同士にする)
ティーグレは本気でそう思っていたのだ。
リョウイチが転入してくるその日までは。
「今日は転入生が来るらしいですよ。この学園の代表として、一番に顔を見せてあげたらどうですか?」
「そうだな! きっと緊張してるだろうし、そうしよう!」
適当な理由でリョウイチに出会うようにティーグレが誘導したところ、ピングは快諾した。
(かわいい)
鼻歌を奏でながらスキップで校門へと向かう後ろ姿を眺め、ティーグレは目を細める。
リョウイチと恋に落ちれば、ピングの幸せは約束される。
アトヴァルとも上手く行く上、ローボ、オルソ、担任のシュエットも幸せな2人の味方になる。
何よりもティーグレが、ピングの幸せを阻む者を許さない。
やっとここまできたのだ。必ずパーフェクトハッピーエンドにしなければ。
ストーリーの最後に出てくる2人の仲睦まじいイラストを思い出し、ティーグレは口元を緩めようとした。
(…………ハッピーエンド…………)
脳裏に描かれたのはこの世の幸福を一身に集めるような笑顔を浮かべたピングの顔。
細い腰には逞しい腕が回っていて、リョウイチが金色の髪に頬を寄せて微笑んでいる。
2人でリョウイチの使い魔のドラゴンに乗って、大空を飛ぶイラストだ。
不意に、ティーグレの中で黒い何かが渦巻き始める。
腹なのか胸なのか頭なのか。
どこからかは分からないが、得体の知れないその感情は急激にティーグレを侵食した。
(その、場所は)
「わぁああ!」
突然ピングの悲鳴が鼓膜を揺らし、ティーグレは我に帰った。
顔を上げれば、ホワイトタイガーがピングのローブを咥えて、自分の背中へと放り投げているところだった。
目を白黒させているピングが、なんとかホワイトタイガーにしがみついて振り返ってくる。
「な、なんだティーグレ!?」
「え、え!? 俺、何もしてない……! おい待て言うことを……っ」
大慌てで駆け寄ったティーグレが戻るように指示を出しても全く言うことを聞かない。
それどころか、ティーグレも同じように背中に乗せられた。
浮遊感の後、ふわふわの毛皮の上に尻で着地したかと思うと、ホワイトタイガーは空高く駆け上がる。
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