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二章
44話 森
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瑞々しく黄色い花弁を開いた可憐な姿を見て、ピングの口角が上がった。
「よし! これで最後だな!」
すでに泥まみれの靴やローブが更に汚れるのことなど気にすることなく、ピングは地面に膝をつく。本を広げ、花と写真を見比べた。
本を持つ手は擦り傷だらけ、顔もまるで子どもが地面で転げ回ったかのようになっている。
それでも表情は満足げだった。
「しかし」
ピングは花を見下ろして眉を下げる。
なんと花が咲いているのは薄暗い森を抜け、太陽の当たる崖の側面。地面に這いつくばって手を伸ばしても届かない場所にある。
崖の下にも森が広がっていて地面は見えない。
つまり、崖を降りて花を摘むしかない。
「……あそこにいく……のは……」
ピングの顔から血の気が引いていく。崖の底に落ちる未来しか見えない。
先に咲いてる場所を調べて、あの花を摘む方法を練ってから来れば良かった。
皆はそうやって課題を達成しているのだろう。自分の詰めの甘さが嫌になってピングは頭を抱える。
「無理せずティーグレかローボに来てもらうべきだったか……いやいや! ダメだそんなの! このくらい!」
降りてやるぞと見下ろす。そして天を仰いだ。
無理、怖い。
「……そうだ、私は魔術師の卵だぞ。魔術大国の皇帝になる男!」
ピングはポンっと手を打つ。日常的に自分で魔術を使うことが少なすぎて忘れていた。
危険な場所に咲いている花を摘むための方法なんて、魔術を使えばいくらでもあるのだ。
問題はピングがそれを成功させられるかということだが、このくらいは出来なくては進級が危うい。
ピングは呪文を唱えながら指で空中に魔法陣を描く。すると、光の中からコウテイペンギンが飛び出した。
「うんうん、スムーズになった。練習の成果だな」
得意気に頷くピングを、ペンギンも心なしか満足そうに見上げてくる。ピングはペンギンの頭を撫でてやり、崖に咲く花をとってくるように指示を出した。
光を纏ったペンギンは崖を滑らかに腹で滑り、花の前で止まると散らすことなく茎を咥えて摘み取った。
ピングは思わず拍手を送る。こんなにスムーズに指示が通ったのは初めてだ。
「偉いぞ。こっちに持ってこい……え?」
手を伸ばしてペンギンに伝えようとした時だった。
崖の下から毒々しい黒っぽいツルのようなものが伸びてきた。突然のことにピングもペンギンも反応できないうちに、ツルが丸い体に巻きつく。
「ペンギンー!?」
そのまま、ペンギンはツルに引き摺り下ろされていった。ピングは仰天して崖を覗き込むが、下の暗い森に隠れて本体は見えない。
更にそのツルは本数を増やして崖の上まで伸びてきた。
「ま、魔草か!?」
黒と紫色がマーブルになったようなツルは、触れるだけでも肌が爛れたりなどの支障をきたしそうだ。温度を察知する能力があるのか、ツルは真っ直ぐピングに向かってくる。ピングは短い呪文で放てる火の玉を繰り出した。
咄嗟の割には上手く直撃した火の玉にツルは一瞬怯むが、すぐにまたピングの方に伸びてくる。
「も、燃えてくれ!こいつ、なんなんだ!?」
手のひらから火の玉を連発するが、もう止まることもない。ピングは全身に鳥肌が立つ。
「炎! 炎以外に……剣!? いや私は剣術は……!」
近くの木の枝を剣に変形させる方法も思いついたが、「上手く剣に変化させる」「剣を使ってツタを撃退する」のどちらもピングには難易度が高すぎた。
もう逃げるしかない。
ピングはツタに背を向けて全力で地面を蹴る。
「わぁ……っ!」
走り出したものの、数歩で足をとられた。ピングは土の上にうつ伏せに倒れ込む。足首から太ももまでツタが巻き付いてくる。
嫌な汗が全身から吹き出した。
「よし! これで最後だな!」
すでに泥まみれの靴やローブが更に汚れるのことなど気にすることなく、ピングは地面に膝をつく。本を広げ、花と写真を見比べた。
本を持つ手は擦り傷だらけ、顔もまるで子どもが地面で転げ回ったかのようになっている。
それでも表情は満足げだった。
「しかし」
ピングは花を見下ろして眉を下げる。
なんと花が咲いているのは薄暗い森を抜け、太陽の当たる崖の側面。地面に這いつくばって手を伸ばしても届かない場所にある。
崖の下にも森が広がっていて地面は見えない。
つまり、崖を降りて花を摘むしかない。
「……あそこにいく……のは……」
ピングの顔から血の気が引いていく。崖の底に落ちる未来しか見えない。
先に咲いてる場所を調べて、あの花を摘む方法を練ってから来れば良かった。
皆はそうやって課題を達成しているのだろう。自分の詰めの甘さが嫌になってピングは頭を抱える。
「無理せずティーグレかローボに来てもらうべきだったか……いやいや! ダメだそんなの! このくらい!」
降りてやるぞと見下ろす。そして天を仰いだ。
無理、怖い。
「……そうだ、私は魔術師の卵だぞ。魔術大国の皇帝になる男!」
ピングはポンっと手を打つ。日常的に自分で魔術を使うことが少なすぎて忘れていた。
危険な場所に咲いている花を摘むための方法なんて、魔術を使えばいくらでもあるのだ。
問題はピングがそれを成功させられるかということだが、このくらいは出来なくては進級が危うい。
ピングは呪文を唱えながら指で空中に魔法陣を描く。すると、光の中からコウテイペンギンが飛び出した。
「うんうん、スムーズになった。練習の成果だな」
得意気に頷くピングを、ペンギンも心なしか満足そうに見上げてくる。ピングはペンギンの頭を撫でてやり、崖に咲く花をとってくるように指示を出した。
光を纏ったペンギンは崖を滑らかに腹で滑り、花の前で止まると散らすことなく茎を咥えて摘み取った。
ピングは思わず拍手を送る。こんなにスムーズに指示が通ったのは初めてだ。
「偉いぞ。こっちに持ってこい……え?」
手を伸ばしてペンギンに伝えようとした時だった。
崖の下から毒々しい黒っぽいツルのようなものが伸びてきた。突然のことにピングもペンギンも反応できないうちに、ツルが丸い体に巻きつく。
「ペンギンー!?」
そのまま、ペンギンはツルに引き摺り下ろされていった。ピングは仰天して崖を覗き込むが、下の暗い森に隠れて本体は見えない。
更にそのツルは本数を増やして崖の上まで伸びてきた。
「ま、魔草か!?」
黒と紫色がマーブルになったようなツルは、触れるだけでも肌が爛れたりなどの支障をきたしそうだ。温度を察知する能力があるのか、ツルは真っ直ぐピングに向かってくる。ピングは短い呪文で放てる火の玉を繰り出した。
咄嗟の割には上手く直撃した火の玉にツルは一瞬怯むが、すぐにまたピングの方に伸びてくる。
「も、燃えてくれ!こいつ、なんなんだ!?」
手のひらから火の玉を連発するが、もう止まることもない。ピングは全身に鳥肌が立つ。
「炎! 炎以外に……剣!? いや私は剣術は……!」
近くの木の枝を剣に変形させる方法も思いついたが、「上手く剣に変化させる」「剣を使ってツタを撃退する」のどちらもピングには難易度が高すぎた。
もう逃げるしかない。
ピングはツタに背を向けて全力で地面を蹴る。
「わぁ……っ!」
走り出したものの、数歩で足をとられた。ピングは土の上にうつ伏せに倒れ込む。足首から太ももまでツタが巻き付いてくる。
嫌な汗が全身から吹き出した。
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