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二章
どういう関係?
しおりを挟む「その後どうなったか知ってるかなって思ったんだけど……知らなさそうだな」
「ごめん、何も聞いてない」
優一朗が申し訳なさそうに眉を下げる。
メッセージアプリに送られてきたテンションの高い文面から、皆に言いふらしているものだと思っていた。
仲が良さそうな優一朗ならなおさらだ。
まだ直接会ったのは2回だったが、それでも皐からの優一朗への好意は目に見えるようだった。
優一朗にしても、明らかに皐に心を許しているように見える。
部署は違うと聞いていたし同期でもないので謎の多い関係性に味が沸いてきた藤ヶ谷は、出来るだけ当たり障りのない言葉を探す。
「優一朗さんと皐さんって、どういう繋がりなんだ?」
なぜ藤ヶ谷が疑問に思っているのかを正確に理解したらしい優一朗は、なんでもないことだと肩を竦めた。
「いつだったかな。性別関係のことで低レベルな冷やかしを言う奴に、あいつが猛反発してた時があって」
詳しい内容は暈した言い方をしているが、「低レベルな冷やかし」というのはおそらくオメガについてのことだろう。優一朗の気遣いを察して、藤ヶ谷は何も言わずに相槌だけ打つ。
「でもあいつは舐められやすいから。相手には何も響いてなくて。だから助け舟をだしたんだけど……妙に懐かれて」
「なる、ほど?」
迷惑そうに前髪を掻き上げている優一朗の目元は温かい。
皐の話題の時の優一朗は弟の杉野にひときわ似ていると感じつつ、藤ヶ谷は首を傾げた。
一方的に懐かれている、以上の何かがありそうに思うのだ。
(皐さんの対人距離が近いからそう思うだけかな)
曖昧な返事しかしない藤ヶ谷に対し、今度は優一朗が話題を変えようとするように脈絡なく壁を指差した。
自動ドアを出る直前の壁には、大きなクリスマスツリーのポスターがある。
「そういえばもうすぐクリスマスだな」
煌びやかに輝く写真を見て藤ヶ谷は呟く。
仕事でクリスマスをイメージした商品を扱う時期のためアンテナを伸ばしてはいるが、自分が楽しむというイメージは消え去っていた。
優一朗は隣でスマートフォンの電源を入れ、頷いた。
「年末年始の激務のイメージしかなかったけど、実はそうなんだよ」
「どこも一緒か」
明日もまた走り回ることを考えて笑うしかなかった。
イベントの開催日を確認すると、今年のクリスマスイブは日曜日。
「クリスマスイルミネーション……」
冬に入ってから、街中が人工の光で飾られている。大きな駅周辺の木はほとんどが色とりどりに輝いているのだ。
それが更に増えるとなると、華やかな夜になるに違いない。
恋人と観に行けたら、胸が躍る夜になるだろう。
チラッと優一朗を見ると、スケジュール管理のアプリを見ているようだ。内容までは分からないが、予定がぎっしり入力されている。
誘うのは難しそうだと藤ヶ谷はあきらめたのだが。
スマートフォンを閉じた優一朗が藤ヶ谷に向き直る。
「一緒に行ってくれないか?」
おそらく藤ヶ谷のために、たった今予定を調整してくれたのだろう。
そう思うと嬉しくて、頬を綻ばせ勢いよく頷く。
「喜んで!」
何時に待ち合わせようかなどと具体的な話を始めながら店を出る。
冷たい風が、店内の暖かい空気で熱った体に刺さって身を縮めた。
「……あ、雪」
それはチラチラと落ちてきて、手のひらで溶けていった。
藤ヶ谷は白い息を吐きながら、空を見上げる。
すると、パッと視界が黒色になった。
「ホワイトクリスマスになったら、楽しそうだな」
「じゃあクリスマスは雪降り坊主を飾らないとな」
「初めて聞く坊主だな」
おどけた藤ヶ谷に、折り畳み傘を持った優一朗は面白そうに笑った。
一つの傘の下、肩が触れ合う距離で歩く。
駅に着くと、別れ際に傘を渡された。
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