6 / 110
一章
運命の番とは
しおりを挟む
藤ヶ谷は浮かれていた。
今夜、蓮池とデートの約束があるからだ。
(早く仕事終われ!)
日にちが決まってから、いつも以上に金曜日の夜が待ち遠しかった。
バーで出会った日から、蓮池と毎日のように連絡を取り合っている。
蓮池は輸入品を扱う会社の取締役をしており、忙しく全国を飛び回っているらしくなかなか予定合わない。
さすがはアルファ、と言ったところだろう。
早くもう一度会いたいと気が逸る中、藤ヶ谷は大人しく機械を通しての交流を続けていた。
そして、3週間ほどしてようやく夕食の約束に漕ぎ着けたのだ。
藤ヶ谷はこの日のためにクリーニングに出したグレーのスーツに身を包み、大事な商談の時につけるお気に入りの深緑のネクタイをして朝から気合を入れた。
そして後一息頑張れば、定時になるおやつ時。休憩室にコーヒーを買いに行った藤ヶ谷は、自動販売機の前で2人のベータ女性の同僚と鉢合わせた。
そこで、
「藤ヶ谷さんって本当におじさま好きですよねー!」
「でも分かる。かっこいいよね! 部長もフェロモン出てるって感じするもん」
「本当に出てんだよ。すっごい良い匂いなんだよ部長は」
などと、恋愛話に花が咲く。
藤ヶ谷がオメガだからだろう。
彼女たちはまるで同性にするように、気軽に夕食に誘ってくれた。
そのため藤ヶ谷は今日の予定をウキウキと話したのだ。
立ち話から始まったはずが、他に人がいないのをいいことにテーブル席に移動する。どんどん話が膨らんでしまい今に至る。
八重樫の香りを思い出して蕩けた表情を見せる藤ヶ谷の言葉を聞いた2人は、楽しげに声を弾ませた。
「いいなー! 私もフェロモン感じてみたいー!」
「それで、そのおじさまアルファとはいい感じなんですよね! もしかして運命の番だったりして!」
興奮気味に言われたものの、藤ヶ谷は首を捻りながら缶コーヒーに口をつける。
「んー、運命の番ではないかなー」
世界にたったひとりしかいない、運命の番。
通常の番よりも強い絆で結ばれており、運命の番と出会ってしまえば、決して抗えない衝動にかられると言われている。
しかし、一生涯掛けても出会える可能性は限りなく低いため、都市伝説のような扱いになっているものである。
藤ヶ谷は蓮池の香りが好きだし、また包まれたいと思うくらい忘れられない。
だが、例えば同じく好ましい八重樫の香りと感じ方に大きな差があるかと言われれば、否定せざるを得ない。
「運命の番なら、出会った瞬間に感じるものがあるからさ」
「まるで会ったことがあるみたいに言うじゃん」
正面に座る同僚は、茶色いロングヘアを指に巻き付けて目を丸くした。
グッと握り拳を作って、藤ヶ谷は力強い声を出す。
「会ったことないけどそうに決まってる! ほら、ドラマみたいに出会った瞬間にヒートがきたりとか!」
「なるほどー」
「確かに今流行ってるドラマの1話もそんな感じでした!」
通常の番の絆というものの感覚もベータには分からない。そのため、迷いなく言い切った藤ヶ谷に2人は納得したのだが。
「そんなことあってたまるかですよ」
水を差す冷静な声が、盛り上がる3人の頭上に降り掛かる。
今夜、蓮池とデートの約束があるからだ。
(早く仕事終われ!)
日にちが決まってから、いつも以上に金曜日の夜が待ち遠しかった。
バーで出会った日から、蓮池と毎日のように連絡を取り合っている。
蓮池は輸入品を扱う会社の取締役をしており、忙しく全国を飛び回っているらしくなかなか予定合わない。
さすがはアルファ、と言ったところだろう。
早くもう一度会いたいと気が逸る中、藤ヶ谷は大人しく機械を通しての交流を続けていた。
そして、3週間ほどしてようやく夕食の約束に漕ぎ着けたのだ。
藤ヶ谷はこの日のためにクリーニングに出したグレーのスーツに身を包み、大事な商談の時につけるお気に入りの深緑のネクタイをして朝から気合を入れた。
そして後一息頑張れば、定時になるおやつ時。休憩室にコーヒーを買いに行った藤ヶ谷は、自動販売機の前で2人のベータ女性の同僚と鉢合わせた。
そこで、
「藤ヶ谷さんって本当におじさま好きですよねー!」
「でも分かる。かっこいいよね! 部長もフェロモン出てるって感じするもん」
「本当に出てんだよ。すっごい良い匂いなんだよ部長は」
などと、恋愛話に花が咲く。
藤ヶ谷がオメガだからだろう。
彼女たちはまるで同性にするように、気軽に夕食に誘ってくれた。
そのため藤ヶ谷は今日の予定をウキウキと話したのだ。
立ち話から始まったはずが、他に人がいないのをいいことにテーブル席に移動する。どんどん話が膨らんでしまい今に至る。
八重樫の香りを思い出して蕩けた表情を見せる藤ヶ谷の言葉を聞いた2人は、楽しげに声を弾ませた。
「いいなー! 私もフェロモン感じてみたいー!」
「それで、そのおじさまアルファとはいい感じなんですよね! もしかして運命の番だったりして!」
興奮気味に言われたものの、藤ヶ谷は首を捻りながら缶コーヒーに口をつける。
「んー、運命の番ではないかなー」
世界にたったひとりしかいない、運命の番。
通常の番よりも強い絆で結ばれており、運命の番と出会ってしまえば、決して抗えない衝動にかられると言われている。
しかし、一生涯掛けても出会える可能性は限りなく低いため、都市伝説のような扱いになっているものである。
藤ヶ谷は蓮池の香りが好きだし、また包まれたいと思うくらい忘れられない。
だが、例えば同じく好ましい八重樫の香りと感じ方に大きな差があるかと言われれば、否定せざるを得ない。
「運命の番なら、出会った瞬間に感じるものがあるからさ」
「まるで会ったことがあるみたいに言うじゃん」
正面に座る同僚は、茶色いロングヘアを指に巻き付けて目を丸くした。
グッと握り拳を作って、藤ヶ谷は力強い声を出す。
「会ったことないけどそうに決まってる! ほら、ドラマみたいに出会った瞬間にヒートがきたりとか!」
「なるほどー」
「確かに今流行ってるドラマの1話もそんな感じでした!」
通常の番の絆というものの感覚もベータには分からない。そのため、迷いなく言い切った藤ヶ谷に2人は納得したのだが。
「そんなことあってたまるかですよ」
水を差す冷静な声が、盛り上がる3人の頭上に降り掛かる。
49
あなたにおすすめの小説
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
【創作BLオメガバース】優しくしないで
万里
BL
壮士(そうし)は男のΩ。幼馴染の雅人(まさと)にずっと恋をしていた。雅人は太陽のように眩しくて、壮士の世界を変えてくれた存在。彼の影を追うように、同じスポーツを始め、同じ高校に進学し、ずっと傍にいた。
しかし、壮士のヒートのせいで、雅人も充てられて発情してしまう。壮士は必死に項を守り、番になることを拒む。好きだからこそ、こんな形では結ばれたくなかった。壮士は彼の幸せを願って別の大学へ進学する。
新しい環境で出会ったのは、α・晴臣(はるおみ)。彼もまた、忘れられない人がいるという。
互いに“好きな人”を抱えたまま始まる関係。心の隙間を埋め合うふたり。けれど、偽りのはずだったその関係に、いつしか本物の感情が芽生えていく?
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる