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後
しおりを挟むアルターの魔術で体の隅々まで浄化されたふたりは、フリシェスが魔術で整えたベッドに並んで座る。
体は綺麗になっても気怠さは抜けない。動く気にはなれず、服は放り投げられたままだった。
フリシェスは膝を抱えて頭を埋め、沈んだ声を出した。
「抱いたのに抱かれた気持ち……」
「抱かれる側は久々だったけど、案外いけるな。後ろだけでイッちまった」
満足げな声を出したアルターは、おどけてフリシェスの白い肩を抱く。
「しかも、こんな若いのを勃たせるなんてさすが俺。どうだった? 男は初めてだろ」
耳元での問い掛けに、フリシェスは肩を震わせた。そして、目線をふらふらと泳がせる。
「どうもこうも……女性も経験ないので……」
「まさかの童貞……だと? 男の経験がないから辿々しいんだと思ってたわ! お前そのかわいい顔は何のためについてんだよ」
絶対に周囲の女性が放ってはおかないと考えていたアルターは、金の目を丸くして心の底から驚く。
その声を聞いて、フリシェスは艶のある銀の髪を掻きむしった。
「死にたい……! ちょっとイタズラしてやろうってだけのつもりだったのに! なんで初体験がこんなおっさんん……!」
先に手を出したのはフリシェスであるため、完全なる自業自得である。
マッサージで腑抜けていたアルターの下衣を剥いだ後。
アルターが状況把握する前に魔術で素早く入口を浄化し、魔術の水を纏わせた指をゆっくりと突き入れたところまでは良かった。
そこから興が乗ってしまったアルターに逆に押し倒され、衣服に手を掛けられてからは記憶にない。
ただひたすら、快感に身を委ねてしまっていた。
涙目になっているフリシェスの肩を叩きながら、アルターは悪びれる様子なく顔を覗き込む。
「はは、悪ぃ悪ぃ。でも良かっただろ」
「凄く気持ちよかったです……」
「かぁわいいなお前ー」
「ううー」
首まで朱に染まった状態で素直に頷くフリシェスの乱れた銀髪を、更にぐしゃぐしゃと撫でてくる。
そして、駄々を捏ねる愛しい我が子にするように額に口付けを落とされた。
「ま、責任持って坊やが一人前になるまで守ってやっから」
「なんですかそれ。要らないです」
体の関係を持ったにも関わらず、まだ子ども扱いする部隊長に反発して唇を曲げるフリシェスだった。
翌日、アルターは仕事を休んだ。
「珍しいな、体調不良か?」
「なんか別で用事でもあるんじゃないか?」
フリシェスやその他の隊員が首を傾げる。
同刻、腰への負担で動けなくなったアルターが自室のベッドでうつ伏せになっていた。
「あんたも流石に年か?」
「ははー久々なのにどーも可愛くてカッコつけちまった」
医療部隊の友人に呆れ声を出されながら苦笑いする無精髭の男は、昨日の情事を思い出して口元を緩ませる。
(今日もマッサージには来てもらおう)
おしまい
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金浦桃多さん、お読みいただきありがとうございます!
雄っぱいに正装!どっちも楽しそうなシチュエーションです_φ(・_・
こちらこそ美味しい妄想をありがとうございました🤤