大きな栗の木の下で

ユミ

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どうして…

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大きな栗の木の下に通っている内に、彼について色々わかる様になってきた。

まず一つ目、曜日問わず毎日決まった時間にいつもいる。
学校が休みの日に朝から行ってみたらいなくて、そのまま待っていたら13時頃やってきたのだ。
それとなく聞いてみたら、毎日お昼ご飯を食べてからすぐにここに来て暗くなるまでいるとのこと。

二つ目、物凄く頭が良い。
たまたま宿題の話になってわからないと喚いていたら、「見せて」とか言って見せたら見せたで先生よりわかりやすく教えてくれた。
暇な時は勉強してるか本を読んでるか…らしい。

三つ目、自身についてははぐらかされる。
今までにも何でパジャマなのかとか、何でいつもここにいるのかとか、疑問に思った事は聞いてみたが、別の話にすり替えられたりはぐらかされたりした。
まぁ、話したくないこともあると思うのでしつこく聞いたりはしないようにした。
私も小学三年生の頃に外でお漏らししたことは誰にも聞かれたくないもん。

とまあこんな感じだけど、それなりに仲良く出来ているとは思ってる。
でも彼と話せば話すほど知りたいという欲が膨らんできてしまう。
もう少し仲良くなれたら、いつか教えてくれるかな。

そんな事を考えながら、下校中いつもの場所に向かっていた。
今日は宿題でわからないところがあるから教えてもらおっと。

そう思っていたんだけど、
「あれ、いない?」
彼はいつもいる場所にいなかった。

咄嗟にスマホで時間を確認する。
本来ならまだいるはずの時刻をさしている。
なら何でいない?まさか私に愛想を尽かしたとか?
いやいや、そんなはずはない。
昨日だって楽しくお喋りしたし、彼が嫌がりそうな話題もしなかった。

幹の周りを無駄にグルグル周回する。
こんな事をしてもいないのはわかっているけどいてもたってもいられない。

そうして何周もし、ふと何かが見えた様な気がした。
よくよく確認してみると、幹の隙間に紙が挟まっている。
破れない様にそーっと幹から引っこ抜き、若干シワのよった紙をジッと見た。

それは彼からの手紙だった。

【今日は早めに帰っちゃってごめんね。ちょっと急用が出来たんだ。しばらく来られないかもしれない。】

それだけが書いてあった。
名前も記載されてないけど多分彼が私に宛てたものだと思った。

次の日、また次の日と私は日課の場所に向かったが彼は現れなかった。


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