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第六章 タカの正体
第七話 捜査会議
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翌日の捜査会議は、管轄地域の垣根を越えて、合同捜査にかかわるメンバー全員が顔を揃えて行なわれた。
埼玉県警の高見沢警部や隅田署の滝沢警部も参加した。
会議の指揮を執るのは、警視庁の斎藤哲哉管理官である。
「まずは鎧塚君のほうから、事件の全体像について説明してもらいたい」
斎藤の指名で、鎧塚が立ち上がった。
事件の一大相関図が書かれたホワイトボードの前に進み出ると、おもむろに語り始める。
「今回の一連の殺人事件――すなわち友部雪乃、薬師丸豪志、七尾康之の三名の殺害に関する案件ですが――これらはすべて、二十二年前に起きた磯部裕也邸強盗殺人事件に端を発した連続殺人とみています。磯部の娘である友部雪乃は、昨年の十月、かつて磯部邸から盗まれた金城泰治の『放課後の孤愁』という絵が展覧会に出品されていることを知り、その来歴を追い始めました。
絵の所有者である中溝孝明八王子市長にコンタクトをとり、『放課後の孤愁』が市長の弟・中溝潤の形見分けであることを知った彼女は、潤の妻である田中幸代のもとを訪ねて話を聞き、さらに潤の同級生である海宝氏を訪問しています。そこで潤の顔写真を見た彼女は、彼こそがかつて自分が目撃した強殺犯のひとりだと確信しました。その際、潤の同級生である七尾康之が、強殺事件の共犯者ではないかと疑いを抱きます。彼女はあるパーティーの席で、薬師丸豪志に七尾の首実検をさせています。七尾がかつて磯部不動産と接点がなかったか確認しようとしたのでしょう」
鎧塚はそこでいったん言葉を区切ると、捜査員たちを見渡した。
「ここまではほぼ確定事項といってよいと思います。この先は少し私の憶測が入ります」
と前置きして、再び口を開く。
「おそらく薬師丸は七尾について、『見たことのない顔です』と答えたものと思われます。なぜなら七尾はあくまで主犯格の男に雇われた従犯と考えられるからです。磯部不動産との接点はないはずです。我々の捜査でも、両者の結びつきは確認できておりません。
友部雪乃はその後、七尾について独自に調査を進めたのでしょう。その過程で二十二年前の真相に辿り着いた。あるいは辿り着きそうになった。そのため七尾、あるいは主犯格であるタカによって殺害され、八王子の山中に埋められた――。これが、現時点での我々捜査本部のスジ読みです」
捜査員たちは、鎧塚の説明に納得したようにうなずいた。
「つづいて薬師丸豪志の殺害について説明します。彼は、今年に入って友部雪乃の遺体が八王子山中から発見されたことで、昨年のパーティーの際のことを思い出したはずです。あの時は、七尾について『見たことがない』と答えたものの、雪乃が殺された以上、犯人は七尾、あるいは七尾に繋がる人物である可能性が高いと考えたに違いありません。
そこで彼は七尾に接触をはかり、脅迫したのだと思います。七尾が強殺犯一味であることや、雪乃を殺した疑惑を突きつけ、あるいはカマをかけ、黙っていてほしければ金を寄こせと要求した。その脅しに屈し、七尾は会社の金を三千万円流用して、薬師丸に手渡したのです」
捜査員たちは黙って耳をかたむけている。
「その様子を、主犯であるタカは苦々しく見ていたに違いありません。このままでは、自分の身にまで危険が及ぶ恐れがある。そこで薬師丸を銀座の路上で殺害し、七尾の口も封じることにしたのです。
これによって、二十二年前の強盗殺人事件の真相を知る者はこの世に一人もいなくなった。タカは完全に安全圏に逃れたわけです」
鎧塚は自説を話し終えると、斎藤管理官のほうを振り返った。
「私からは以上です」
「ご苦労。もどってくれ」
鎧塚は一礼し、自分の席にかえる。
「今、聞いてもらったように、仲間内からタカと呼ばれていた人物が、二十二年前の強盗殺人事件の主犯であり、今回の連続殺人事件の犯人であることは疑いがないと思う。問題はタカが誰かという点だ。これに関しては、埼玉県警の高見沢警部から説明してもらいたいと思う。……高見沢警部、よろしくお願いします」
「はい」
高見沢が立ち上がった。
「私からご説明させていただきます。タカの正体については、現在、我が埼玉県警が徹底マークしております片山貴俊で間違いないものと考えます。
我々は二十二年前、磯部の三人の側近を容疑者とみておりました。彼らは磯部邸に金の延べ棒があることや、それが翌日には移送されることを知っていたのです。具体的には経理の正岡茂雄、個人秘書の田中健、そして専務取締役・片山貴俊の三名です。このうち、正岡茂雄に関しては周辺捜査の結果、犯人ではないことがほぼ確定しております。その生活ぶりから億単位の金を手に入れた形跡が皆無だからです。
田中健については、これまで行方不明でありましたが、このたび石川県珠洲市の山奥で妻子とともに自給自足の農家暮らしを送っていることが判明しました。薬師丸豪志が殺された日と、友部海斗が車ではねられた日の両方にアリバイがあり、そのつましい暮らしぶりから考えても彼が犯人とは到底思われません。
残るは片山貴俊、ただひとりです。彼はかつて磯部裕也の右腕と謳われ、磯部邸の防犯設備にも精通していました。元ヤクザで殺人にも躊躇がありません。現在、不動産業で財を成しておりますが、その原資に磯部邸から奪った金品が使われたのは明らかです。片山貴俊こそがタカであると、確信をもって申し上げます」
この説明には、多くの捜査員が納得した顔でうなずいた。
「私からは以上です」
高見沢が一礼して着席するのを見て、鎧塚が丸亀刑事に目配せした。丸亀が挙手をして、管理官に発言を求める。指名を受けて立ち上がった。
「高見沢警部のおっしゃることは至極ごもっともだと思います。論理的に考えて、片山がタカの第一候補であることに疑いはありません。……ただ、我々の捜査では、片山貴俊と、共犯者である中溝潤および七尾康之の間に接点が見い出せないのです。彼らはどこで知り合い、仲間になったのか。この点は県警さんのほうでもウラがとれていないと伺っています」
「その点は認めます。しかし、我々が現在、把握できていないだけで、必ず彼らの間には接点があると考えます」
「私も片山貴俊がもっとも怪しいという点に関しては賛同いたします。……しかし、警視庁としましては、中溝孝明と奥平龍平という二人の人物についても、タカの可能性が少なからずあると考えております。彼らは八王子市内に生活基盤があり、中溝潤と七尾康之の二人とは明確な接点があることが分かっています」
丸亀の発言に、高見沢が不服を表明するように異を唱える。
「その二人がタカかもしれないという根拠は、どこにあるのですか? 中溝と七尾との接点だけでは、あまりに弱いと思いますが」
「それについては鎧塚警部のほうが詳しいので、警部に譲ります」
丸亀は、鎧塚に話を振った。
最初から二人の間では打ち合わせが済んでいた。高見沢警部のメンツをつぶさない形で、自分たちの主張を捜査会議の場で展開しようと話し合っていた。
鎧塚は管理官の許可を得て、立ち上がった。
「私の方から、高見沢警部の疑問にお答えさせていただきます。まず、ふたりをタカと疑う根拠ですが、両名とも名前にタカの字が入っています。中溝タカアキはもちろん、奥平龍平の旧姓はタカムラでした」
「根拠は名前だけですか?」
高見沢が冷笑するようにいった。
「いいえ、そうではありません。まず中溝孝明に関してですが、彼は中溝潤の兄であり、七尾康之とも高校時代から親交がありました。彼は当時市長選への立候補を模索しており、選挙資金が必要でした。二十二年前に三人で強盗を実行し、盗んだ金品を選挙につぎこんで市長選に勝利したと考えれば筋は通ります。現在居住している数億円規模の大豪邸も、その時盗んだ金が原資になっていると考えれば腑に落ちるものがあります。
奥平龍平の場合は、七尾康之の上司にあたります。四十代後半で無職だった七尾を役員待遇で会社に迎え入れ、数々の特典を与えています。市長の紹介だったからと言い訳していますが、強殺犯の仲間だったという見立ても成り立つわけです」
「どちらも、いちおう理屈は通っていますね」
隅田署の滝沢警部がいった。
「そうですか? 私にはこじつけにしか思えませんが」
高見沢は苦虫を噛み潰したような顔で発言した。埼玉県警としては、三人目の強殺犯まで警視庁に特定されてはたまらないという気持ちがあるのだろう。片山貴俊が主犯であってくれなくては困る、と顔に書いてある。
「つまり、三人それぞれにタカである可能性があるわけだな」
斎藤管理官が議論をまとめるように発言した。
「いずれの意見にも一長一短あるように思える。現時点でひとりに絞るのは得策ではないだろう」
結局、タカが誰であるかについてはあえて絞り込みはせず、埼玉県警と警視庁がそれぞれマークしている対象者を引きつづき捜査することで意見の一致をみた。
合同捜査会議終了後、斎藤管理官は警視庁所属の刑事だけを集め、号令を発する。
「何としてもタカの正体を突き止めるのだ。奥平龍平と中溝孝明を徹底的に調べあげろ。すべての捜査資源をふたりに集中する」
この日を境に、現場の空気は一気に熱を帯びた。捜査が最終段階に入ったことを、誰もが自覚していた。
そんなある日、信じられないような報告が捜査本部にもたらされた。
第一報を聞いた瞬間、捜査員の誰もが顔を蒼ざめさせ、何かの間違いではないかと耳をうたがった。
その報せをもたらしたのは、若手の榊原刑事である。
彼は鎧塚に命じられ、雪乃の叔母の行方を追っていた。友部雪乃の遺体が本人であることを科学的に立証するための調査だった。
北海道への出張から戻った彼は、捜査本部を訪れ、ひとつのDNAサンプルを提示した。雪乃の叔母との接触に成功し、検体採取に応じてもらえたのだという。
さっそく科捜研にもちこみ、科学鑑定がおこなわれた。
その結果、今年の三月二十五日、八王子市内の山中で発見された黄色くチーズ状に屍蝋化した若い女性の遺体は……友部雪乃ではなかったのである。
埼玉県警の高見沢警部や隅田署の滝沢警部も参加した。
会議の指揮を執るのは、警視庁の斎藤哲哉管理官である。
「まずは鎧塚君のほうから、事件の全体像について説明してもらいたい」
斎藤の指名で、鎧塚が立ち上がった。
事件の一大相関図が書かれたホワイトボードの前に進み出ると、おもむろに語り始める。
「今回の一連の殺人事件――すなわち友部雪乃、薬師丸豪志、七尾康之の三名の殺害に関する案件ですが――これらはすべて、二十二年前に起きた磯部裕也邸強盗殺人事件に端を発した連続殺人とみています。磯部の娘である友部雪乃は、昨年の十月、かつて磯部邸から盗まれた金城泰治の『放課後の孤愁』という絵が展覧会に出品されていることを知り、その来歴を追い始めました。
絵の所有者である中溝孝明八王子市長にコンタクトをとり、『放課後の孤愁』が市長の弟・中溝潤の形見分けであることを知った彼女は、潤の妻である田中幸代のもとを訪ねて話を聞き、さらに潤の同級生である海宝氏を訪問しています。そこで潤の顔写真を見た彼女は、彼こそがかつて自分が目撃した強殺犯のひとりだと確信しました。その際、潤の同級生である七尾康之が、強殺事件の共犯者ではないかと疑いを抱きます。彼女はあるパーティーの席で、薬師丸豪志に七尾の首実検をさせています。七尾がかつて磯部不動産と接点がなかったか確認しようとしたのでしょう」
鎧塚はそこでいったん言葉を区切ると、捜査員たちを見渡した。
「ここまではほぼ確定事項といってよいと思います。この先は少し私の憶測が入ります」
と前置きして、再び口を開く。
「おそらく薬師丸は七尾について、『見たことのない顔です』と答えたものと思われます。なぜなら七尾はあくまで主犯格の男に雇われた従犯と考えられるからです。磯部不動産との接点はないはずです。我々の捜査でも、両者の結びつきは確認できておりません。
友部雪乃はその後、七尾について独自に調査を進めたのでしょう。その過程で二十二年前の真相に辿り着いた。あるいは辿り着きそうになった。そのため七尾、あるいは主犯格であるタカによって殺害され、八王子の山中に埋められた――。これが、現時点での我々捜査本部のスジ読みです」
捜査員たちは、鎧塚の説明に納得したようにうなずいた。
「つづいて薬師丸豪志の殺害について説明します。彼は、今年に入って友部雪乃の遺体が八王子山中から発見されたことで、昨年のパーティーの際のことを思い出したはずです。あの時は、七尾について『見たことがない』と答えたものの、雪乃が殺された以上、犯人は七尾、あるいは七尾に繋がる人物である可能性が高いと考えたに違いありません。
そこで彼は七尾に接触をはかり、脅迫したのだと思います。七尾が強殺犯一味であることや、雪乃を殺した疑惑を突きつけ、あるいはカマをかけ、黙っていてほしければ金を寄こせと要求した。その脅しに屈し、七尾は会社の金を三千万円流用して、薬師丸に手渡したのです」
捜査員たちは黙って耳をかたむけている。
「その様子を、主犯であるタカは苦々しく見ていたに違いありません。このままでは、自分の身にまで危険が及ぶ恐れがある。そこで薬師丸を銀座の路上で殺害し、七尾の口も封じることにしたのです。
これによって、二十二年前の強盗殺人事件の真相を知る者はこの世に一人もいなくなった。タカは完全に安全圏に逃れたわけです」
鎧塚は自説を話し終えると、斎藤管理官のほうを振り返った。
「私からは以上です」
「ご苦労。もどってくれ」
鎧塚は一礼し、自分の席にかえる。
「今、聞いてもらったように、仲間内からタカと呼ばれていた人物が、二十二年前の強盗殺人事件の主犯であり、今回の連続殺人事件の犯人であることは疑いがないと思う。問題はタカが誰かという点だ。これに関しては、埼玉県警の高見沢警部から説明してもらいたいと思う。……高見沢警部、よろしくお願いします」
「はい」
高見沢が立ち上がった。
「私からご説明させていただきます。タカの正体については、現在、我が埼玉県警が徹底マークしております片山貴俊で間違いないものと考えます。
我々は二十二年前、磯部の三人の側近を容疑者とみておりました。彼らは磯部邸に金の延べ棒があることや、それが翌日には移送されることを知っていたのです。具体的には経理の正岡茂雄、個人秘書の田中健、そして専務取締役・片山貴俊の三名です。このうち、正岡茂雄に関しては周辺捜査の結果、犯人ではないことがほぼ確定しております。その生活ぶりから億単位の金を手に入れた形跡が皆無だからです。
田中健については、これまで行方不明でありましたが、このたび石川県珠洲市の山奥で妻子とともに自給自足の農家暮らしを送っていることが判明しました。薬師丸豪志が殺された日と、友部海斗が車ではねられた日の両方にアリバイがあり、そのつましい暮らしぶりから考えても彼が犯人とは到底思われません。
残るは片山貴俊、ただひとりです。彼はかつて磯部裕也の右腕と謳われ、磯部邸の防犯設備にも精通していました。元ヤクザで殺人にも躊躇がありません。現在、不動産業で財を成しておりますが、その原資に磯部邸から奪った金品が使われたのは明らかです。片山貴俊こそがタカであると、確信をもって申し上げます」
この説明には、多くの捜査員が納得した顔でうなずいた。
「私からは以上です」
高見沢が一礼して着席するのを見て、鎧塚が丸亀刑事に目配せした。丸亀が挙手をして、管理官に発言を求める。指名を受けて立ち上がった。
「高見沢警部のおっしゃることは至極ごもっともだと思います。論理的に考えて、片山がタカの第一候補であることに疑いはありません。……ただ、我々の捜査では、片山貴俊と、共犯者である中溝潤および七尾康之の間に接点が見い出せないのです。彼らはどこで知り合い、仲間になったのか。この点は県警さんのほうでもウラがとれていないと伺っています」
「その点は認めます。しかし、我々が現在、把握できていないだけで、必ず彼らの間には接点があると考えます」
「私も片山貴俊がもっとも怪しいという点に関しては賛同いたします。……しかし、警視庁としましては、中溝孝明と奥平龍平という二人の人物についても、タカの可能性が少なからずあると考えております。彼らは八王子市内に生活基盤があり、中溝潤と七尾康之の二人とは明確な接点があることが分かっています」
丸亀の発言に、高見沢が不服を表明するように異を唱える。
「その二人がタカかもしれないという根拠は、どこにあるのですか? 中溝と七尾との接点だけでは、あまりに弱いと思いますが」
「それについては鎧塚警部のほうが詳しいので、警部に譲ります」
丸亀は、鎧塚に話を振った。
最初から二人の間では打ち合わせが済んでいた。高見沢警部のメンツをつぶさない形で、自分たちの主張を捜査会議の場で展開しようと話し合っていた。
鎧塚は管理官の許可を得て、立ち上がった。
「私の方から、高見沢警部の疑問にお答えさせていただきます。まず、ふたりをタカと疑う根拠ですが、両名とも名前にタカの字が入っています。中溝タカアキはもちろん、奥平龍平の旧姓はタカムラでした」
「根拠は名前だけですか?」
高見沢が冷笑するようにいった。
「いいえ、そうではありません。まず中溝孝明に関してですが、彼は中溝潤の兄であり、七尾康之とも高校時代から親交がありました。彼は当時市長選への立候補を模索しており、選挙資金が必要でした。二十二年前に三人で強盗を実行し、盗んだ金品を選挙につぎこんで市長選に勝利したと考えれば筋は通ります。現在居住している数億円規模の大豪邸も、その時盗んだ金が原資になっていると考えれば腑に落ちるものがあります。
奥平龍平の場合は、七尾康之の上司にあたります。四十代後半で無職だった七尾を役員待遇で会社に迎え入れ、数々の特典を与えています。市長の紹介だったからと言い訳していますが、強殺犯の仲間だったという見立ても成り立つわけです」
「どちらも、いちおう理屈は通っていますね」
隅田署の滝沢警部がいった。
「そうですか? 私にはこじつけにしか思えませんが」
高見沢は苦虫を噛み潰したような顔で発言した。埼玉県警としては、三人目の強殺犯まで警視庁に特定されてはたまらないという気持ちがあるのだろう。片山貴俊が主犯であってくれなくては困る、と顔に書いてある。
「つまり、三人それぞれにタカである可能性があるわけだな」
斎藤管理官が議論をまとめるように発言した。
「いずれの意見にも一長一短あるように思える。現時点でひとりに絞るのは得策ではないだろう」
結局、タカが誰であるかについてはあえて絞り込みはせず、埼玉県警と警視庁がそれぞれマークしている対象者を引きつづき捜査することで意見の一致をみた。
合同捜査会議終了後、斎藤管理官は警視庁所属の刑事だけを集め、号令を発する。
「何としてもタカの正体を突き止めるのだ。奥平龍平と中溝孝明を徹底的に調べあげろ。すべての捜査資源をふたりに集中する」
この日を境に、現場の空気は一気に熱を帯びた。捜査が最終段階に入ったことを、誰もが自覚していた。
そんなある日、信じられないような報告が捜査本部にもたらされた。
第一報を聞いた瞬間、捜査員の誰もが顔を蒼ざめさせ、何かの間違いではないかと耳をうたがった。
その報せをもたらしたのは、若手の榊原刑事である。
彼は鎧塚に命じられ、雪乃の叔母の行方を追っていた。友部雪乃の遺体が本人であることを科学的に立証するための調査だった。
北海道への出張から戻った彼は、捜査本部を訪れ、ひとつのDNAサンプルを提示した。雪乃の叔母との接触に成功し、検体採取に応じてもらえたのだという。
さっそく科捜研にもちこみ、科学鑑定がおこなわれた。
その結果、今年の三月二十五日、八王子市内の山中で発見された黄色くチーズ状に屍蝋化した若い女性の遺体は……友部雪乃ではなかったのである。
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