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6.砂丘釣り
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ザナルメディ迷宮には砂丘エリアがある。
大陸の南にはサンド砂漠があり、砂漠は近年の温暖化で広がり続けている。その下にも迷宮は広がっていて、砂漠から迷宮に砂が入り込んでいるのだ。
ドワーフのバルボアは砂丘エリアにつくと、大きな岩の上に登る。
岩の上は平らになっており、そこに腰を落ち着けると釣りの準備を始めた。
釣り竿の糸には丈夫なアラーネアの蜘蛛糸を使い、鈴をつけると、砂丘にポンと投げ降ろす。竿を振りチリンチリン♪と音を立てると、砂中を何かが蠢いた。白く細長いそれは砂漠のモンスター、クワイエットワームである。
砂中を移動するクワイエットワームには目がなく。音に反応して獲物を襲ってくる習性がある。
鈴の音を聞いたワームは餌と勘違いし、食いついてくる。
砂丘釣りはその習性を利用した釣り方である。
鈴が砂中に埋まり、グンと竿が重くなる。
掛かった。獰猛なワームは鈴ごと体内に飲み込む。分厚い体内に飲み込まれた鈴の音は外までもれない。
バルボアは釣り竿を一気に引き上げるとワームを掴む。バタバタと暴れるワームの頭を掴むと、地面に押し当てその頭を切り落とした。ワームは生命力が強く、胴と頭を切り離してもしばらくその体は動いていた。バルボアはそれを保冷ボックスの中にしまう。その一連の動作を静かにした。
静かな釣りが始まりどのくらい経っただろうか。
パラパラと落ちていた砂の量が多くなっていく。それは予兆でもあった。突然天井が抜けた。
脆くなった天井が砕け、砂がザーと落ちてくる。中に人とラクダも混じっていた。ラクダは背に荷物を背負っている。砂漠の商人のようにみえた。
男は砂丘の上に落ちるとそのまま下に転がり続けた。
砂に半身まで埋まり起き上がろうとする商人に、バルボアは叫ぶ。
「音を立てるな!!」
ここはクワイエットワームの巣である。
音を立てれば命はない。
バルボアは砂漠に物を投げ入れる。すでに商人に向かっていたワームは落ちたものの方に向きをかえる。
自分の鞄に食いついてるクワイエットワームをみて、冒険者も直ぐにその意味を理解したのだろう、動かなくなった。
勿論、危険なのは商人だけではない。
叫び声を聞いた無数のワームが岩山を登ってくる。
岩山まできたワームは周辺を探り、ウロウロする。
バルボアの体にまとわりつく。ヌルヌルしたワームは上体を登ってくる。バルボアは呼吸を止める。細かい歯を剥き出しにしたワームが目の前まできていた。
「ブモォォォォォ!!」ラクダの叫び声が聞こえた。
無数のワームが襲いかかり、肉を食い破り、体内に潜り込もうとしている。堪らずラクダは走りだす。
ワームは音の方に向きを変える。シュルシュルと体から離れると、ラクダを追いかけて何処かへ行った。
バルモアは安全を確かめたあと大きく息を吸いこんだ。
蒲焼。
音を立てないよう、ゆっくり時間をかけ動き砂丘エリアを抜け出した。安全な場所までいくと2人は野営を始める。
褐色肌の青年の名前はグラスと言った。大陸を渡る行商人だ。ラクダを連れ、サンド砂漠を横断したところ、この迷宮に落下してしまったのだ。
「荷物の大半を失ってしまいました」グラスは落胆した。
「これから、どうしたらいいのか…」グラスは頭を抱える。
「フムフム…」
バルボアは話を聞きながら、ワームの体を裂き、串をさす。タレを塗り、炭火でジックリ肉を焼く。肉の焼けるいい香りが漂ってくる。
バルボアはご飯も用意していた。飯盒を火から下ろすと蒸らす。
クワイエットワームの蒲焼き丼だ。
ご飯が余分なタレを吸い込み、美味しくしていた。
クワイエットワームの肉質は蛇に似ていた。
「美味しい!これ何の肉ですか?」
グラスは腹も減っていたのだろう。美味しそうにバクバク飯を食べる。美味しく食べてくれてバルボアは嬉しくなる。
「それは企業秘密だ」と笑った。
ラクダを襲った凄惨なシーンを思い出すと、クワイエットワームだとは言えなかった。知らない方がいいこともある。
今日はもう遅い。一晩寝たら街まで案内しよう。
大陸の南にはサンド砂漠があり、砂漠は近年の温暖化で広がり続けている。その下にも迷宮は広がっていて、砂漠から迷宮に砂が入り込んでいるのだ。
ドワーフのバルボアは砂丘エリアにつくと、大きな岩の上に登る。
岩の上は平らになっており、そこに腰を落ち着けると釣りの準備を始めた。
釣り竿の糸には丈夫なアラーネアの蜘蛛糸を使い、鈴をつけると、砂丘にポンと投げ降ろす。竿を振りチリンチリン♪と音を立てると、砂中を何かが蠢いた。白く細長いそれは砂漠のモンスター、クワイエットワームである。
砂中を移動するクワイエットワームには目がなく。音に反応して獲物を襲ってくる習性がある。
鈴の音を聞いたワームは餌と勘違いし、食いついてくる。
砂丘釣りはその習性を利用した釣り方である。
鈴が砂中に埋まり、グンと竿が重くなる。
掛かった。獰猛なワームは鈴ごと体内に飲み込む。分厚い体内に飲み込まれた鈴の音は外までもれない。
バルボアは釣り竿を一気に引き上げるとワームを掴む。バタバタと暴れるワームの頭を掴むと、地面に押し当てその頭を切り落とした。ワームは生命力が強く、胴と頭を切り離してもしばらくその体は動いていた。バルボアはそれを保冷ボックスの中にしまう。その一連の動作を静かにした。
静かな釣りが始まりどのくらい経っただろうか。
パラパラと落ちていた砂の量が多くなっていく。それは予兆でもあった。突然天井が抜けた。
脆くなった天井が砕け、砂がザーと落ちてくる。中に人とラクダも混じっていた。ラクダは背に荷物を背負っている。砂漠の商人のようにみえた。
男は砂丘の上に落ちるとそのまま下に転がり続けた。
砂に半身まで埋まり起き上がろうとする商人に、バルボアは叫ぶ。
「音を立てるな!!」
ここはクワイエットワームの巣である。
音を立てれば命はない。
バルボアは砂漠に物を投げ入れる。すでに商人に向かっていたワームは落ちたものの方に向きをかえる。
自分の鞄に食いついてるクワイエットワームをみて、冒険者も直ぐにその意味を理解したのだろう、動かなくなった。
勿論、危険なのは商人だけではない。
叫び声を聞いた無数のワームが岩山を登ってくる。
岩山まできたワームは周辺を探り、ウロウロする。
バルボアの体にまとわりつく。ヌルヌルしたワームは上体を登ってくる。バルボアは呼吸を止める。細かい歯を剥き出しにしたワームが目の前まできていた。
「ブモォォォォォ!!」ラクダの叫び声が聞こえた。
無数のワームが襲いかかり、肉を食い破り、体内に潜り込もうとしている。堪らずラクダは走りだす。
ワームは音の方に向きを変える。シュルシュルと体から離れると、ラクダを追いかけて何処かへ行った。
バルモアは安全を確かめたあと大きく息を吸いこんだ。
蒲焼。
音を立てないよう、ゆっくり時間をかけ動き砂丘エリアを抜け出した。安全な場所までいくと2人は野営を始める。
褐色肌の青年の名前はグラスと言った。大陸を渡る行商人だ。ラクダを連れ、サンド砂漠を横断したところ、この迷宮に落下してしまったのだ。
「荷物の大半を失ってしまいました」グラスは落胆した。
「これから、どうしたらいいのか…」グラスは頭を抱える。
「フムフム…」
バルボアは話を聞きながら、ワームの体を裂き、串をさす。タレを塗り、炭火でジックリ肉を焼く。肉の焼けるいい香りが漂ってくる。
バルボアはご飯も用意していた。飯盒を火から下ろすと蒸らす。
クワイエットワームの蒲焼き丼だ。
ご飯が余分なタレを吸い込み、美味しくしていた。
クワイエットワームの肉質は蛇に似ていた。
「美味しい!これ何の肉ですか?」
グラスは腹も減っていたのだろう。美味しそうにバクバク飯を食べる。美味しく食べてくれてバルボアは嬉しくなる。
「それは企業秘密だ」と笑った。
ラクダを襲った凄惨なシーンを思い出すと、クワイエットワームだとは言えなかった。知らない方がいいこともある。
今日はもう遅い。一晩寝たら街まで案内しよう。
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