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3.魔女エルビダとレインボーマッシュルーム
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バルボアいつもの席につくといつも通り注文する。
「しばらく帰ってこなかったけど、何処にいってたんだい?」ビールをテーブルに運ぶと、ウエイターのモルダーがきく。
「キノコ狩りだよ。このキノコで何か料理を作ってくれないか?」バルボアはテーブルの上に収穫したキノコを並べる。
「こんなに沢山、何処で手に入れたんだい?」
モルダーは興味津々にきく。バルボアは道中の話を始めた。
ザナルメディ迷宮の奥深くに進むと菌類エリアがある。
そこは大小様々な光キノコがはえている場所だ。洞窟の床、天井、岩壁、木々、いたる所にカラフルなキノコが光ながら生えている。
その光は衰えることなく常に夜の繁華街並の明るさを保つていた。
前方から白い肌で褐色の平たい笠をした子供くらいの背丈のキノコが、テクテクと歩いてくる。見た目はエリンギ、中身はキノコ。
元々は何処かの魔法使いがゴーレムとして、使役しようとキノコに魔法をかけたことにより、生まれた生物だけあって、人に従順で悪意を持ち合わせていない。
「ん?」
側にくるとキノコは袖を引っ張る。どうやらついてきて欲しいようだ。
バルボアは前を歩くキノコの後についていく、ふと横を見るといつの間にか別のキノコまでも、横を歩いてついてきていた。その同行者はどんどん増えていき、目的地につくまでにはキノコのいち団になっていた。
前方に大きなマッシュルーム型のキノコハウスがある。
中に入ると六畳程の広さがあり、真ん中にエルフが寝ていた。彼女の体はうっすらと白く光っていた。毒でも食べたのか苦しそうに唸っている。キノコ達は患者の周りを取り囲み、心配そうに見ている。
「なるほど、こいつを見てほしいのか」
キノコ達は頷く。
「これは、」バルボアは容体をみる。
心配することはない。ただの食べ過ぎであった。
「いやー参った、参った、美味しすぎて食べ過ぎてしまったよ」エルフは陽気に話す。胃腸薬を飲んで、スッカリ元気になったらしい。
彼女はエルフの魔法使いエルビダ。彼女とはダンジョンで何度か遭遇したことがある魔女である。
トレードマークの黄色のトンガリ帽子を被ると、お礼を言った。少し大きめの帽子はなんでも、彼女の師匠の形見だそうだ。
魔女エルビダは親しげに話しかけてくる。
「この森にあるレインボーマッシュルームを取りんきたんじゃろ?」レインボーマッシュルームとはこの菌類エリアでしか珍しい取れないキノコだ。バルボアは名前だけは聞いたことがある。
「まあ、ここにはきのこ狩りにきた」
味覚の秋。この時期になるときのこは美味しく育つ。レインボーマッシュルームもきっと美味しいきのこに違いない。
「私もキノコ達に頼んで探してもらっているが、奴ら一向に帰ってこないんだ。それで、様子を見に行きたいのだが、少しばかり手伝ってくれないか?」魔女は素直に言った。
バルボアはまだこの土地についたばかりである。
きのこについての情報がまだなく、何処になんのきのこがはえているか知りたいところである。1人で探すより人数が多いほうが効率は格段にあがる。それにレインボーマッシュルームに興味が湧いた。バルボアはこの提案を受け入れることにした。
「ではまだ探索していないエリアを教えてくれ」バルボアはエリンギに聞いた。茸のことは茸に聞いた方が早い。レインボーマッシュルームはまだ見つかっていない。ではまだ探していない場所にある可能性が高い。
茸は身振り手振りで教えてくれる。
地図を広げ、茸達の探索エリアを調べると一箇所だけ、調べていない、探索しにいった茸が帰ってこないエリアがある。
準備を整えるとキノコ達もついてきた。エリンギ、マッシュルーム、テングダケの3菌だ。
エルビダはついてきた茸達に荷物を持たせ、手ぶらで進む。
何でも高貴なエルフは荷物を持たないそうだ。聞いたことないが、そもそも高貴なエルフなどにはあったこともなかった。
道中歩きながら、バルボアはきのこを集める。
きのこはいたるところにはえている。
松茸、ぶなしめじ、エリンギ、しいたけ、など様々な食材を採取できた。それに間違えて毒きのこを取ろうとすると、きのこ達がとめて教えてくれる。
旅は順調で何事もなく目的のエリアについた。
バルボアは地図を広げる。
「ここがそうだな」
目の前には見上げるほどの高さのタマゴタケの森が広がっている。赤い傘と橙色の柄のきのこがうっそうと生えている。このエリアにきたきのこ達は消息をたっている。ここからは用心が必要だ。
「休憩~」
菌類エリアは意外と広い、体力のないエルビダはすぐに根をあげた。まだ歩き始めてそれほどたっていない。
エルビダはエリンギの頭に腰を落とす。座ったエリンギの高さは座るには丁度いい高さであった。なんの迷いもないところをみると、普段から椅子として使っているらしい。
「まだ歩き始めたばかりだぞ」呆れてバルボアは言った。
「いやじゃ、足が疲れた、それにワシはこーみえてか弱い。腹も減ったしな」
見た目は20歳そこそこにみえるエルビダは、とうに100歳を越えている。それを知っているバルボアは年寄りは大事にしないとなと、思い直し、一時休憩することにした。
休んでいると食材と薪木をきのこ達が集めてくれた。残りもののご飯もあるし、胃に優しい雑炊が作れそうだ。
焚き木に火をつける。薪は湿っていて火付が悪い。濡れた皮を剥いで細かくして火に焚べる。
パチパチと音をたてて燃える始める。
太い薪で土台を作り、水の入った鍋をのせる。
バルボアは沸騰した鍋にしめじ、エリンギ、しいたけ、光きのこをいれ、弱火で煮込んだ。薪を足し、火力をあげると、ご飯を入れ、卵をいれる。
バルボアは調味料をいれて、鍋をかき混ぜると鍋を火からおろした。
光きのこを入れたきのこ雑炊は、美味しそうに湯気をたて光っている。
熱々のきのこの雑炊を茶碗によそうと、エルビダに手渡す。
「フーッ!フーッ!」と猫舌のエルビダは一生懸命に冷ます。ひと口食べてその美味さに、笑顔になる。
「美味い!」
きのこの旨味が出汁にしっかりでて、その旨味をご飯が吸っている。そのご飯を飲み込むたびに、赤い光が喉を通りぬけ落ちていく。
食べるたびに光が強くなり、うっすらと体全体が光だした。
きのこ達は食事はいらないようだ。肩に下げた水筒の水を飲んで水分補給している。
待ち構えていたように赤い目が光る。それはひとつではなく。
小さい動物達の大群だ。
小動物が一斉に飛びかかってきた。バルボアとエルビダは身構える、その横をすり抜けていく。後ろのきのこ達に小動物達は噛みつく。その正体はリスだ。頭、手、足などに食いつき、きのこの身をボロボロにしていく。
ベニテングタケの顔面に食いついたリスは、そのまま中に入り込んでいく。ベニテングタケは食べると三十分ほどで幻覚、下痢、嘔吐の症状がで死に至るほどの猛毒を持っている。だが、そんなことお構いなしにリスはきのこの肉を食い破る。倒れたベニテングタケは動かなくなった。次に転んで逃げ遅れたエリンギも餌食になった。
しいたけは恐怖に慄き逃げていく。
それをリスの群れが追いかけていく。
あっという間の出来事に二人は驚いて顔を見合わせた。
これできのこ達が帰ってこない理由がわかった。
ここはリス達の縄張りで、捜索の為に足を踏み入れたきのこは食されてしまったのだ。
エルビダは残ったリスを追い払うとベニテングタケとしいたけの一部を、切り取り瓶の中にいれる。
「それは?」
「まー培養すれば、ワンチャン復活出来るかもしれないしね」エルビダはポケットに小瓶をしまった。
「どうする?引き返すか?」バルボアは今後の方針を聞いた。
「いや、先に進もう。あいつらの死を無駄にはしたくない」
まだ、死んだと決まったわけではない。
きのこを襲っていたのが、リス達だとするとこの森はそれほど危険ではないのかもしれない。
きのこ達はいなくなってしまったが、探索の続きを始めることにした。
さらに森の奥に進むと滝の音が聞こえてくる。
音に導かれるように進むと、飛沫が霧のように飛んできた。
地下水はダンジョンの岩壁を突き破り滝のように流れていた。その周りは一面綺麗なお花畑で不自然にこんもりしていたが、色とりどりの花が咲いていた。
「まるで楽園のようじゃ」光キノコでライトアップされた花畑は幻想的であった。
「あれだ!」魔女エルビダは指を指す。
滝の側の岩壁にキノコが生えている。
レインボーマッシュルームだ。
断崖絶壁。上を見上げると目的のキノコは10メートル上に群生している。
エルビダは取りに行くのを嫌がり、バルボアがいくことになった。
バルボアは登りやすそうな箇所を確認すると、岩壁を登り始める。
岩登りにはコツがある。両手、両足のうち壁から離すのは、必ず一箇所だけ。三点支持で登ることだ。それだけで安定する。
まずは片足を乗せたらしっかりと体重を乗せ、登ると同時に手を出し、下半身の”タメ”で上への推進力がつけて登る。
問題なのは掴んでいる岩が、苔と水で滑りやすいことだ。
バルボアはゆっくりと岩壁を登っていった。
やっとレインボーマッシュルームに手が届く。
あと少し、のところで足が滑る。
バルボアはドボンと滝壺に落ちると、軽くなった体はすぐに浮上した。手にはレインボーマッシュルームが握られていた。
「これがそのレインボーマッシュルームだよ」
バルボアは酒場のテーブルの上に虹色のキノコをおいた。
それはカラフルで毒々しい色合いをしている。
「これって食べれるものなのかい?」モルダーが聞いた。
「いや、食べ物ではない。なにせ覚醒剤だったのだから」
レインボーマッシュルームはバルボアが想像していたものと違っていた。少なくとも食べ物ではない。人間の体には毒であった。
リスは毒茸を食べても死ぬことはなかった。食べる動物によっては毒性がなくなる。では菌類ではどうだろう。
魔女エルビダはそれを茸達に与えた。そしてその効果は絶大だった。それは茸達にとって禁断の果実、知恵の茸だったんだ。
レインボーマッシュルームを摂取したキノコは知識を獲得した。グングン背が伸び、言葉まで話すようになっていった。
繁殖をし、自分達で農作業を始められるぐらいの知恵がついた。
魔女エルビダはその効果を喜び。ダンジョン内にキノコ王国を作ろうとした。税制をしき、茸や作物を納めさせ、それを訪れた商人や冒険者に売り、私服を肥やした。それだけじゃなく、そのお金を元手に、きのこ兵の培養、武器の製造を始めようとした。
「それでどうなったんですか?」
「知恵をつけたキノコ達は、自分達のせいでご主人様が駄目になっていくのに気づいてしまったんだ」
「最後に布団で簀巻きにされ、どこかに運ばれておったよ…」
酔がまわってきて、バルボアの目はトロンとしてきた。
そろそろお開きの時間だ。バルボアは頬をテーブルに押し付けると、酔いつぶれて寝てしまった。
「しばらく帰ってこなかったけど、何処にいってたんだい?」ビールをテーブルに運ぶと、ウエイターのモルダーがきく。
「キノコ狩りだよ。このキノコで何か料理を作ってくれないか?」バルボアはテーブルの上に収穫したキノコを並べる。
「こんなに沢山、何処で手に入れたんだい?」
モルダーは興味津々にきく。バルボアは道中の話を始めた。
ザナルメディ迷宮の奥深くに進むと菌類エリアがある。
そこは大小様々な光キノコがはえている場所だ。洞窟の床、天井、岩壁、木々、いたる所にカラフルなキノコが光ながら生えている。
その光は衰えることなく常に夜の繁華街並の明るさを保つていた。
前方から白い肌で褐色の平たい笠をした子供くらいの背丈のキノコが、テクテクと歩いてくる。見た目はエリンギ、中身はキノコ。
元々は何処かの魔法使いがゴーレムとして、使役しようとキノコに魔法をかけたことにより、生まれた生物だけあって、人に従順で悪意を持ち合わせていない。
「ん?」
側にくるとキノコは袖を引っ張る。どうやらついてきて欲しいようだ。
バルボアは前を歩くキノコの後についていく、ふと横を見るといつの間にか別のキノコまでも、横を歩いてついてきていた。その同行者はどんどん増えていき、目的地につくまでにはキノコのいち団になっていた。
前方に大きなマッシュルーム型のキノコハウスがある。
中に入ると六畳程の広さがあり、真ん中にエルフが寝ていた。彼女の体はうっすらと白く光っていた。毒でも食べたのか苦しそうに唸っている。キノコ達は患者の周りを取り囲み、心配そうに見ている。
「なるほど、こいつを見てほしいのか」
キノコ達は頷く。
「これは、」バルボアは容体をみる。
心配することはない。ただの食べ過ぎであった。
「いやー参った、参った、美味しすぎて食べ過ぎてしまったよ」エルフは陽気に話す。胃腸薬を飲んで、スッカリ元気になったらしい。
彼女はエルフの魔法使いエルビダ。彼女とはダンジョンで何度か遭遇したことがある魔女である。
トレードマークの黄色のトンガリ帽子を被ると、お礼を言った。少し大きめの帽子はなんでも、彼女の師匠の形見だそうだ。
魔女エルビダは親しげに話しかけてくる。
「この森にあるレインボーマッシュルームを取りんきたんじゃろ?」レインボーマッシュルームとはこの菌類エリアでしか珍しい取れないキノコだ。バルボアは名前だけは聞いたことがある。
「まあ、ここにはきのこ狩りにきた」
味覚の秋。この時期になるときのこは美味しく育つ。レインボーマッシュルームもきっと美味しいきのこに違いない。
「私もキノコ達に頼んで探してもらっているが、奴ら一向に帰ってこないんだ。それで、様子を見に行きたいのだが、少しばかり手伝ってくれないか?」魔女は素直に言った。
バルボアはまだこの土地についたばかりである。
きのこについての情報がまだなく、何処になんのきのこがはえているか知りたいところである。1人で探すより人数が多いほうが効率は格段にあがる。それにレインボーマッシュルームに興味が湧いた。バルボアはこの提案を受け入れることにした。
「ではまだ探索していないエリアを教えてくれ」バルボアはエリンギに聞いた。茸のことは茸に聞いた方が早い。レインボーマッシュルームはまだ見つかっていない。ではまだ探していない場所にある可能性が高い。
茸は身振り手振りで教えてくれる。
地図を広げ、茸達の探索エリアを調べると一箇所だけ、調べていない、探索しにいった茸が帰ってこないエリアがある。
準備を整えるとキノコ達もついてきた。エリンギ、マッシュルーム、テングダケの3菌だ。
エルビダはついてきた茸達に荷物を持たせ、手ぶらで進む。
何でも高貴なエルフは荷物を持たないそうだ。聞いたことないが、そもそも高貴なエルフなどにはあったこともなかった。
道中歩きながら、バルボアはきのこを集める。
きのこはいたるところにはえている。
松茸、ぶなしめじ、エリンギ、しいたけ、など様々な食材を採取できた。それに間違えて毒きのこを取ろうとすると、きのこ達がとめて教えてくれる。
旅は順調で何事もなく目的のエリアについた。
バルボアは地図を広げる。
「ここがそうだな」
目の前には見上げるほどの高さのタマゴタケの森が広がっている。赤い傘と橙色の柄のきのこがうっそうと生えている。このエリアにきたきのこ達は消息をたっている。ここからは用心が必要だ。
「休憩~」
菌類エリアは意外と広い、体力のないエルビダはすぐに根をあげた。まだ歩き始めてそれほどたっていない。
エルビダはエリンギの頭に腰を落とす。座ったエリンギの高さは座るには丁度いい高さであった。なんの迷いもないところをみると、普段から椅子として使っているらしい。
「まだ歩き始めたばかりだぞ」呆れてバルボアは言った。
「いやじゃ、足が疲れた、それにワシはこーみえてか弱い。腹も減ったしな」
見た目は20歳そこそこにみえるエルビダは、とうに100歳を越えている。それを知っているバルボアは年寄りは大事にしないとなと、思い直し、一時休憩することにした。
休んでいると食材と薪木をきのこ達が集めてくれた。残りもののご飯もあるし、胃に優しい雑炊が作れそうだ。
焚き木に火をつける。薪は湿っていて火付が悪い。濡れた皮を剥いで細かくして火に焚べる。
パチパチと音をたてて燃える始める。
太い薪で土台を作り、水の入った鍋をのせる。
バルボアは沸騰した鍋にしめじ、エリンギ、しいたけ、光きのこをいれ、弱火で煮込んだ。薪を足し、火力をあげると、ご飯を入れ、卵をいれる。
バルボアは調味料をいれて、鍋をかき混ぜると鍋を火からおろした。
光きのこを入れたきのこ雑炊は、美味しそうに湯気をたて光っている。
熱々のきのこの雑炊を茶碗によそうと、エルビダに手渡す。
「フーッ!フーッ!」と猫舌のエルビダは一生懸命に冷ます。ひと口食べてその美味さに、笑顔になる。
「美味い!」
きのこの旨味が出汁にしっかりでて、その旨味をご飯が吸っている。そのご飯を飲み込むたびに、赤い光が喉を通りぬけ落ちていく。
食べるたびに光が強くなり、うっすらと体全体が光だした。
きのこ達は食事はいらないようだ。肩に下げた水筒の水を飲んで水分補給している。
待ち構えていたように赤い目が光る。それはひとつではなく。
小さい動物達の大群だ。
小動物が一斉に飛びかかってきた。バルボアとエルビダは身構える、その横をすり抜けていく。後ろのきのこ達に小動物達は噛みつく。その正体はリスだ。頭、手、足などに食いつき、きのこの身をボロボロにしていく。
ベニテングタケの顔面に食いついたリスは、そのまま中に入り込んでいく。ベニテングタケは食べると三十分ほどで幻覚、下痢、嘔吐の症状がで死に至るほどの猛毒を持っている。だが、そんなことお構いなしにリスはきのこの肉を食い破る。倒れたベニテングタケは動かなくなった。次に転んで逃げ遅れたエリンギも餌食になった。
しいたけは恐怖に慄き逃げていく。
それをリスの群れが追いかけていく。
あっという間の出来事に二人は驚いて顔を見合わせた。
これできのこ達が帰ってこない理由がわかった。
ここはリス達の縄張りで、捜索の為に足を踏み入れたきのこは食されてしまったのだ。
エルビダは残ったリスを追い払うとベニテングタケとしいたけの一部を、切り取り瓶の中にいれる。
「それは?」
「まー培養すれば、ワンチャン復活出来るかもしれないしね」エルビダはポケットに小瓶をしまった。
「どうする?引き返すか?」バルボアは今後の方針を聞いた。
「いや、先に進もう。あいつらの死を無駄にはしたくない」
まだ、死んだと決まったわけではない。
きのこを襲っていたのが、リス達だとするとこの森はそれほど危険ではないのかもしれない。
きのこ達はいなくなってしまったが、探索の続きを始めることにした。
さらに森の奥に進むと滝の音が聞こえてくる。
音に導かれるように進むと、飛沫が霧のように飛んできた。
地下水はダンジョンの岩壁を突き破り滝のように流れていた。その周りは一面綺麗なお花畑で不自然にこんもりしていたが、色とりどりの花が咲いていた。
「まるで楽園のようじゃ」光キノコでライトアップされた花畑は幻想的であった。
「あれだ!」魔女エルビダは指を指す。
滝の側の岩壁にキノコが生えている。
レインボーマッシュルームだ。
断崖絶壁。上を見上げると目的のキノコは10メートル上に群生している。
エルビダは取りに行くのを嫌がり、バルボアがいくことになった。
バルボアは登りやすそうな箇所を確認すると、岩壁を登り始める。
岩登りにはコツがある。両手、両足のうち壁から離すのは、必ず一箇所だけ。三点支持で登ることだ。それだけで安定する。
まずは片足を乗せたらしっかりと体重を乗せ、登ると同時に手を出し、下半身の”タメ”で上への推進力がつけて登る。
問題なのは掴んでいる岩が、苔と水で滑りやすいことだ。
バルボアはゆっくりと岩壁を登っていった。
やっとレインボーマッシュルームに手が届く。
あと少し、のところで足が滑る。
バルボアはドボンと滝壺に落ちると、軽くなった体はすぐに浮上した。手にはレインボーマッシュルームが握られていた。
「これがそのレインボーマッシュルームだよ」
バルボアは酒場のテーブルの上に虹色のキノコをおいた。
それはカラフルで毒々しい色合いをしている。
「これって食べれるものなのかい?」モルダーが聞いた。
「いや、食べ物ではない。なにせ覚醒剤だったのだから」
レインボーマッシュルームはバルボアが想像していたものと違っていた。少なくとも食べ物ではない。人間の体には毒であった。
リスは毒茸を食べても死ぬことはなかった。食べる動物によっては毒性がなくなる。では菌類ではどうだろう。
魔女エルビダはそれを茸達に与えた。そしてその効果は絶大だった。それは茸達にとって禁断の果実、知恵の茸だったんだ。
レインボーマッシュルームを摂取したキノコは知識を獲得した。グングン背が伸び、言葉まで話すようになっていった。
繁殖をし、自分達で農作業を始められるぐらいの知恵がついた。
魔女エルビダはその効果を喜び。ダンジョン内にキノコ王国を作ろうとした。税制をしき、茸や作物を納めさせ、それを訪れた商人や冒険者に売り、私服を肥やした。それだけじゃなく、そのお金を元手に、きのこ兵の培養、武器の製造を始めようとした。
「それでどうなったんですか?」
「知恵をつけたキノコ達は、自分達のせいでご主人様が駄目になっていくのに気づいてしまったんだ」
「最後に布団で簀巻きにされ、どこかに運ばれておったよ…」
酔がまわってきて、バルボアの目はトロンとしてきた。
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