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影踏み
影踏み
しおりを挟むやってはいけないおまじないがある。
「影踏みさま、影踏みさま、どうぞおいでください」
放課後の校庭で影踏みを始める時に、友達が教えてくれた。
おばあちゃんに教わったおまじない。だそうだ。
呪文を三回唱えて、影踏みをする。
日が落ちるまで影踏みをし、寝る前に三回願い事をすると願いが叶うらしい。
「やってみようよ!」
みんなで盛り上がり影踏みが始まる。
私達は広い校庭を駆け回る。
鬼が私達の影を追いかけまわす。
私達は笑いながら鬼から逃げまわった。
「痛」
背中をドンと押されて転ぶ。
でも、押せる距離に人はいなかった。
鬼は私の影の背中を踏んでいる。突き飛ばすことないのに…。
「つぎの鬼はお前な!」と友達は逃げていく。
気のせいだろうか?鬼に踏まれた箇所に痛みを感じた。
日が暮れてきた。影が伸び、もうすぐ暗くなる。
「なんか、鬼に踏まれたとこ痛くないか?」
「うん、影が踏まれたとこ痛い」
痛みを感じているのは、私だけじゃなかった。
動揺が広まり、不安になる。
なんだか、きみが悪くなってきた。
「ねえ、もうやめよう…」
「うん、私も塾の時間だから帰らないと…」
「そうだね。お腹空いたし…」
「帰ろ、帰ろ!」
影踏み鬼をやめて、みんなで下校する。
「バイバイ!」塾に行く友達とバス停で別れ帰路につく。
家に帰りお風呂に入ろうと、服を脱ぐと身体中痣だらけである。足で踏まれた箇所に色濃く痣が出来ていた。
直感的に理解した。おまじないのせいだ。
急に怖くなってきた。
私は急いで二階の自室にいくと、布団に包まりながら三回唱える。
「影踏みさま、おかえり下さい」
「影踏みさま、おかえり下さい」
「影踏みさま、おかえり下さい!!」
願うようにお願いする。
気がつくと朝だった。
願い事は叶ったのだろうか?
次の日、体の痣は消えていた。
学校に登校すると、教室が騒がしかった。
何かあったんだ…。
昨日影踏みに参加したメンバーは学校に来ていなかった。
先生が教室に現れる。
「皆さんに残念なお知らせがあります」
「亜希子ちゃんが事故で亡くなりました」
私の頭は真っ白になった。
亜希子ちゃんが亡くなったのは、バス停で別れたすぐあとだった。
事故で頭が潰れて死んだらしい。
私は想像した。
影は道路まで伸びていた。頭の影が道路に飛び出している。
そこに待っていたバスが現れ、…頭の影を轢く。
グチャッ、亜希子ちゃんの頭が…。
そこまで想像し、動悸が激しくなり、吐き気がしてきた。
他のメンバーも無事だったとは思えない…。
どうして、私だけが無事なのだろう?
影を踏まれても平気なのは…。はっとする。
そう、私が鬼だからだ…。
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