ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火

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その他

運命の赤い糸

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子供の頃から左足に赤い糸が巻き付いていた。
それは蜘蛛の糸のように細く、他の人には見えないみたいだった。触れることが出来ず、弛むこともなかった。
それは北に向かって伸びている。
運命の赤い糸。私の運命の人がその先にいた。

クラスメートに告白された。
「ごめんなさい。私好きな人がいるんです」
その人は子供の時から幼馴染で、昔から仲が良かった。
それが原因で疎遠になってしまったけど、大丈夫。
私には運命の人がいる。赤い糸のその先にその人はいるんだから。

運命の人に会いに行くため私は歩く。
糸はナビのように建物を避けて最短距離で伸びている。
別のルートを選ぶと、赤い糸は障害物をすり抜け次の最短をつくる。糸を辿るだけでよかった。
歩いて歩いて歩いて歩いて、歩いた。
海がみえた。
糸は本州に向かって伸びていた。

高校に入るとバイトを始める。
お金を貯めて旅行をするためだ。
赤い糸の先にいる人に会いに行く為の。
運命の人に会うために働いた。

定期船にのって本州にきた。
電車にのって東京へ。
運命の人との距離が確実に近づいているのを感じた。
糸はとあるマンションにまで続いていた。
オートロックで入れない。
学校帰りの小学生の後に続いて、中にはいる。
エレベーターにのる。赤い糸301号室のドアの中に続いていた。この中に運命の人がいる。
玄関の前まできた。緊張する。なんて話しかけたらいいんだろ?
私は貴方の運命の人ですって言って信じて貰えるのだろうか。
私のことを受け入れてくれるだろうか?
勇気を出して呼び鈴を鳴らす。
ドアがひらいた、暗い玄関にたつのは50過ぎの禿げたおじさんだった。部屋を間違えた!?そう思ったが、私の足から伸びた糸はおじさんの足に繋がり巻き付けられている。
おじさんは無言で私の腕を掴むと無理やり部屋に連れ込んだ。
バタンと扉は閉じられ鍵がかけられる。
このあと自分がどうなったのかは語りたくない。
私は自分の運命を呪った…。

あれから、どれほどの月日がたっただろう。
一時は運命を受け入れようとした、が駄目だった。
私は血だらけの包丁を何度も振り下ろしている。
何度も何度も振り下ろす。そのたびに私の体は赤くなる。
気がつくと赤い糸はぷっつり切れていた。


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