ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火

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その他

心霊スポット巡り2 廃病院

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先輩は小心者だった。
小心者のくせに怖いものが好きで、怖い話しをするのも好きだった。
先輩は今向かっている廃病院の怖い話をする。
「電話にでると、見知らぬ女性の声がするんだ…。A病院の看護婦です…持ち帰ったカルテをご返却ください…」
先輩の話によると廃病院のカルテを持ち出すと、夜中に幽霊から電話がかかってくるらしい。
先輩と話してる間に心霊スポットの病院についた。
1970年に開業したが経営不振で、わずか20年で閉鎖された廃病院だ。今では、立ち入り禁止になっている。
子供達が入り込んだら危険だと、地元住民から解体の声も出ている。
スズムシやカンタンがオーケストラの様に鳴いている。
深夜の病院は不気味でB級ホラー映画の雰囲気があった。
正面入口の硝子は割られ、地面に散乱していた。
パキパキと硝子を踏みしめながら、エントランスを抜ける。
懐中電灯の明かりを頼りに、病室をみてまわる。前回懐中電灯を持っていた先輩が、先に逃げてしまった経験を踏まえ、今回は自前の懐中電灯を用意した。

ライトに照らされた地面には、カップラーメンの容器や空き缶などのゴミが散乱している。
「先輩、不良や浮浪者の溜まり場になっていた形跡があります…」
え、ちょっと目を離したら先輩がもういない。
「うわああああああ!でたああ!!」
叫び声を聞いて急いで向かうと、先輩は倒れながら指をさしている。その先には鏡がある。
「何してるんですか…」
先輩は鏡に写る自分の姿をみて腰を抜かしていた。
「何で1人で行くんですか?」と聞くと。
「俺だって気を使ってるんだ」と返答があった。

外科、耳鼻科、内科、皮膚科と診察室を見て回り、ライトで荒れ果てた部屋を照らす。
医者のデスクの上には一枚の紙があった。患者のカルテだ。まさか本当にあるとは…。
「先輩ありました。カルテです」
振り向くと先輩は目を瞑っている。
「個人情報なのでみません」即答だった。
こんな時だけまともなことを言う。
「絶対にみません」恐れをなした先輩は頑固だった。
仕方ないので記念写真を何枚かとると、家路についた。

次の日の夜先輩の家に遊びにいった。
「どうやら、呪われたらしい…。あの病院に行ってから、ブツブツが出来て異常な痒みがあるんだ…」
そう言うと先輩は腕をまくった。
腕には虫に刺されたような赤い跡が沢山出ている。
痒そうだ。
「虫除けスプレーしないからですよ。写真はどうでした?何か写ってました?」
「何もなかった…」
ガッカリしている先輩に写真を見せて貰う。
まずはカルテを撮った写真をみる。
よく見るとカルテには名前と症状が書かれている。
虫刺され。診断書にはそう書かれている。
先輩の症状と一緒だ。
名前についてはかすれていて、よくみえなかった。

次の写真をみる。
寒気がした。
写真には見知らぬ女性が写っていた。その女性は後ろから抱きつく様に、私にしがみついている。まるで恋人のように。なんだこれ?病院にこんな女性いなかった。
「先輩これ…」
「どうした?」
「いや、写ってますよ。幽霊…」
「はっはっは、そんなわけないだろ」
先輩は笑ってはいるが、顔が引きつっている。
「ほら、ここに!」私は写真の幽霊を指差す。
「え…」先輩は私の横の空間を見ている。
「え…」それをみて私も驚く。
もしかして、ここに…いる?
私はゆっくりと首を横に向ける。
何もいない。
もちろん何もない。
いるはずがない…

突然先輩の携帯がなる。
ビックリして心臓がとまるとこだった。
携帯の液晶パネルをみると非通知設定だ。
「先輩。電話が鳴ってますね…」
「ああ、」
先輩は電話にでる。
電話は病院からだった。
「A病院の受付のものです。当病院は今月で取り壊されることになりました。つきまして最寄りのC病院の方をご利用頂きたく…」
「はい、はい…」先輩は電話口に返事をする。
「先輩どうでした?」
「病院の受付から電話があって、最寄りの病院を紹介されたよ、はは…」
先輩は痒みに耐えきれず、腕をかきむしる。

その1ヶ月後、
建物の劣化による倒壊の危険。
および地元住民の要望で、廃病院は取り壊された。


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